2020年04月28日

『オーバーライト ――ブリストルのゴースト』

池田明季哉 先生の「第26回電撃小説大賞・選考委員奨励賞」受賞作。英国、ブリストルを
舞台に描かれる「落書き」、グラフィティと呼ばれるストリートアートに纏わる物語です。
(イラスト:みれあ 先生)

https://dengekibunko.jp/product/overwrite/321910000148.html


日本を離れたくてブリストル大学へと留学した“ヨシ”。実入りがほしい彼がバイト先に
選んだゲームショップのガラスである日、落書きされているのを見つける。モデルばりの
美人ながら口の悪いバイト仲間の“ブーディシア”は何かに気付いていそうなのだが──。

図像を通じて表現するにも関わらず「ライター」と呼び、その行為を「書く」と表現する
こだわり。海を越えた「ご当地ラノベ」とも言える話の進め方に思わず新鮮さを覚えます。
グラフィティを警戒する市議会との対立、その思いがけない黒幕との顛末も見どころ満載。

「上書きする際はより優れた図案でなくてはならない」というグラフィティの不文律を、
そのまま“ヨシ”や“ブーディシア”が抱える過去の問題にもなぞらえる描写もお見事。
エピローグでのメール返信が一波乱ありそうな予感もあり、続きが見てみたい物語です。

posted by 秋野ソラ at 00:54 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル