2020年01月17日

『零れた灰を嘆くとも』『死骸の森』

古宮九時 さんのサークル「memoriae」が贈る、愛と呪いの一大叙事詩『Unnamed Memory』。
「灰の見る夢」の続編ともう1つ、誰の記憶にも残らないかもしれない逸話を描きます。

http://unnamed.main.jp/words/


“オスカー”との幸せな生活がついに始まる、という“ティナーシャ”に襲いかかる悲劇。
彼からの愛を噛みしめていた彼女が自責の念に駆られる中、ふと思い出した言葉と魔法具。
やり直せるかもしれない、と迷う彼女の想いを汲む“ラザル”が手を伸ばしてしまいます。

再びその時に巡り合った“ラザル”が目にする、“オスカー”と“ティナーシャ”の関係。
望まぬ展開、掛けられる嫌疑、見抜かれる違和感、嫌な予感に反応する己の体。流れる涙
と救われない想いは切なく、けれどまたこれも『Unnamed Memory』だと納得できるワケで。

そんな物悲しさを補うかの如く綴られた『死骸の森』では、突然失踪した魔法士の変死体
が海に打ち上げられた謎を探る“ティナーシャ”が、一冊の本に隠された秘密を露にする
ことで、ある人物の理解されない想いに触れる。これまた深く重く余韻を残す一冊でした。

posted by 秋野ソラ at 00:04 | Comment(0) | TrackBack(0) | 同人誌

2020年01月16日

『女同士とかありえないでしょと言い張る女の子を、百日間で徹底的に落とす百合のお話4』

みかみてれん さんのサークル「てれたにあ」が贈る百合小説「百日百合」シリーズ第4巻。
恋人である“絢”との関係をより深めたいと懊悩する“鞠佳”の猪突猛進ぶりを描きます。
(イラスト:雪子 さん)

http://unnamed.main.jp/teretania/


ゴムにも色々あるけれど、と思いがけず新たな知識を身につけた“鞠佳”。そんな彼女を
頼りに“夏海”から持ち掛けられたお悩み相談は、突然のカミングアウト。相手は後輩の
“晴”で、聞くと“鞠佳”のファンだと言うから“絢”の警戒レベルも上がるというもの。

“鞠佳”一筋だからこそ思っている以上に隙のある彼女を独占しようと時も場所も構わず
行為に及ぼうとする“絢”。いま思えば“絢”が抱える不安というか闇の表れとも取れる
エピローグが気になる所。3年生の終わりに迎えるのは永遠の繋がりか、それとも別離か。

“鞠佳”に逆転されるつもりはないと息巻く“絢”、2人の関係もさることながら周囲の
百合百合しいやりとりも楽しくなってきた本作。今巻は“知沙希”の意外な気遣いがもう
ツボでした。“悠愛”がボロ泣きしたのも分かるというもの。そんな場面もお見逃しなく。

posted by 秋野ソラ at 00:22 | Comment(0) | TrackBack(0) | 同人誌

2020年01月15日

『1LDK、そして2JK。 〜26歳サラリーマン、女子高生二人と同居始めました〜』

福山陽士 先生の「カクヨム」掲載作が書籍化。イマドキな女子高生の従妹を預かることに
なった会社員が家出少女まで抱え込むことになる顛末を描くアットホームなラブコメです。
(イラスト:シソ 先生)

https://fantasiabunko.jp/product/2019121ldk2jk/321908000684.html
https://kakuyomu.jp/works/1177354054889696577


自由奔放な叔母が突然蒸発したので従妹の“奏音”を預かってほしい。父からのお願いを
受け入れた“和輝”は彼女との距離感を探りつつ共同生活を始める。その折、痴漢に遭う
少女“ひまり”を助けると「家出をしたので今晩だけでも泊めてほしい」と言われて──。

三者三様の価値観が向き合えば不協和音も生まれようもので。特に色々な場面で忌避感を
見せていた“奏音”が、自分の弱い面を見られることで徐々に心を開いていく過程は実に
可愛らしい。それを見た“ひまり”が思う所を示すあたり“和輝”は爆発しろ案件ですね。

社畜な社員に女子高生2人だけかと思いきや、“和輝”の幼なじみである“友梨”が現れ
同僚にも「彼女ができた?」と揶揄されるほど生活がガラリと変わっていくワケで。彼が
彼女らが、この共同生活を通じてどんな未来を掴むことになるのか興味が沸く作品です。

posted by 秋野ソラ at 00:03 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2020年01月14日

『自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ?8』

三河ごーすと 先生が贈る学園ゲーム系頭脳バトル。第8巻は「獣王遊戯祭」で最弱クラス
所属の“ユーリエル”と組んだ“紅蓮”が逆境をどう引っくり返すかに焦点が集まります。
(イラスト:ねこめたる 先生)

https://mfbunkoj.jp/product/f-rank/321908000670.html
https://comic-walker.com/contents/detail/KDCW_MF02200276010000_68/


他を圧倒するAクラスに泥を塗るべく、“ミラ”に土下座をしてでもこなしてもらいたい
“紅蓮”の依頼。更に彼女にとって蠱惑的な提案も飲むという彼の真意は測りきれぬまま
彼の思惑通りに話が進んでいく。彼女にとって予断を許さない状況が続く緊迫感が見もの。

“紅蓮”に想いを託された“ユーリエル”が“カールス”に挑むゲーム「皇帝の末路」で
彼女が時間稼ぎをすればいい、と類推した彼女の覚悟。それがとんでもない形で覆される
ゲームの行方も実に熱いものがあって、まさに手に汗握るとはこのことかと言わんばかり。

今回“可憐”の出番ないかな、と思えばしっかりと灸を据える立場でイキイキとした顔を
見せてくれます。他にも“紅蓮”を支える女性陣に今後を左右しそうな局面を迎えており
興味深いところ。何より彼の二面性が意味深長すぎて気になるので続きが楽しみなばかり。

posted by 秋野ソラ at 00:09 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2020年01月13日

『魔王学園の反逆者2 〜人類初の魔王候補、眷属少女と王座を目指して成り上がる〜』

溝口ぜらちん 先生による漫画連載が始まった 久慈マサムネ 先生の学園魔術ファンタジー。
第2巻は他人の心を惑わす力を持つ魔王候補に“雄斗”たちが思わぬ苦戦を強いられます。
(イラスト:kakao 先生)

https://sneakerbunko.jp/product/maogaku/321906000148.html


“雅”の配下である“マキ”がなぜか「悪魔」の魔王候補“イビザ”に尽くすと豹変して、
連れ戻そうとした“レベッカ”もミイラ取りがミイラになるという異常事態。それにより
財産を失い、家も追われた“雅”。お調子者にしか見えない彼にどんな力があるのか──。

現魔王“岩洞”校長すら忌避する、暴力的な力押しではない“イビザ”の戦略に戸惑いを
隠せない中で魔力供給の方法や強力魔法の試行錯誤に勤しむ“雄斗”。その成果は体育祭
での一幕、“イビザ”との決戦でも見ることができて熱い。成果が報われるのは良いもの。

搦め手とはいえ敵無しに見える“イビザ”が“雅”を引き入れようとこだわるのはなぜか。
彼女の血族魔法に秘められた謎とは。それはさておき、毎度羨ましいシチュエーションに
直面する彼には極刑も辞さない今日この頃。エピローグも気になる引きで目が離せません。

posted by 秋野ソラ at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル