2020年01月24日

『Unnamed Memory IV 白紙よりもう一度』

古宮九時 先生が贈る、愛と呪いの一大叙事詩。第4巻は魔法大国トゥルダールの次期女王
“ティナーシャ”が“オスカー”の呪いを解くことを申し出る所から記憶を紡ぎ直します。
(イラスト:chibi 先生)

https://dengekibunko.jp/product/unnamed/321906000049.html


“オスカー”に助られ、魔女ではなくなった“ティナーシャ”が時を超えて「彼」に再会。
彼女のことなど知らない彼。彼を見ながら別の「彼」を見つめている彼女。持て余す想い。
募る懐疑心。違いを知る“ナーク”は語る言葉もなく彼に懐くだけ。実にもどかしい2人。

“オスカー”の呪いを“ティナーシャ”が解こうとする。この軸は変わらないがボタンを
掛け違えたかのように異なる歴史が見え隠れするのが「Act.2」であることを実感させます。
とは言え、彼女の一味違ったポンコツぶりを目の当たりにするのはまた微笑ましいもので。

“オスカー”を見ていないことを正された“ティナーシャ”の機微が変遷するのに気付き
彼女に抱く感情がどう変わっていくか。2人が知らない陰謀は今の世界をどう揺るがすか。
「このラノ2020」単行本部門&同新作でW1位の勢いに乗って魅せてくれると期待します。

posted by 秋野ソラ at 00:33 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2020年01月23日

『ワトソン・ザ・リッパー 〜さる名探偵助手の誰にも話せない過去〜』

SOW 先生が「LINE文庫エッジ」から贈る新作は、ロンドンを舞台に人々を騒がせる殺人鬼
「切り裂きジャック」に狙われる少女と彼女を護衛する神父の不可思議な逸話を綴ります。
(イラスト:りーん 先生)

http://novel-blog.line.me/archives/20447590.html


ロンドンの貧民窟にあるオンボロ教会。そこで神父を務める“オーランド”は貧困に喘ぐ
人々を前に神の愛を説きつつ、一人の少女“マーガレット”を殺人鬼から守るよう密命を
こなす。殺人鬼がどんな人物なのか、なぜ命を狙われているか、何もわからないまま──。

“オーランド”自身が只者ではなく、殺人鬼が誰なのか探りを入れたり、護衛対象に何か
背後関係がないか調べたり、と裏稼業をこなす彼の目的はいつしか犯人を捕まえる方向へ。
そして彼が辿り着いた一人の美女。彼女もまた只者ではなく、いつしか始まる異能バトル。

護衛任務があれよあれよと転じていく話運びに驚かされ、そして惹き込まれていく。更に
「切り裂きジャック」が興味深いギミックとして使われているのも面白く。読了後に冒頭
「まえがたり」から「序章」の場面が想起される演出にも大いに楽しませてもらいました。

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2020年01月22日

『ウィッチクラフトアカデミア2 この世の果てを目指す魔女』

逢空万太 先生が贈るウィッチレースバトル。第2巻はレースに勝つことよりただ早く飛ぶ
ことにこだわる“レッタ”の真意を探るべく“ティノ”が彼女との真っ向勝負に臨みます。
(イラスト:bun150 先生)

https://amzn.to/2QNPfmh


“グリゼルダ”と飛んだあの瞬間が再現できず、再びもどかしい日々を過ごす“ティノ”。
そんな彼を意識せざるを得ない彼女の振る舞いが一つ一ついじらしくて何とも微笑ましい。
けれど変わらず、良くも悪くも真っ直ぐに飛び続ける“レッタ”は確かに謎多き存在です。

どこか能天気、というか自由奔放な“レッタ”が見せる意外な顔。“ティノ”を突き放す
彼女が速さにこだわる意味、担う背景。強い意志に触れていくうちに彼が魔女として成長
していく鍵を掴む瞬間が今巻も熱い。心と心のぶつかり合いを目の当たりにするかの様で。

“ティノ”の成長を見守る姿勢を貫く“ウルスラ”。彼女が彼と触れ合う様子はこれまた
羨ましく見えるやりとりですが、“グリゼルダ”が訝しむのも分かるとおり醸し出される
怪しさを残しているのが意味深で。彼女の最終的な立ち位置に注目しつつ次巻を待ちます。

posted by 秋野ソラ at 00:20 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2020年01月21日

『西野 〜学内カースト最下位にして異能世界最強の少年〜 7』

ぶんころり 先生が贈る学園異能青春ラブコメ。第7巻はシェアハウス暮らしをすることに
なった“西野”が、迫る中間試験を前に様々なトラブルへと顔を突っ込むことになります。
(イラスト:またのんき▼ 先生)

https://mfbunkoj.jp/product/nishino/321908000671.html


“ローズ”をお姉様と慕う“ガブリエラ”が想い人を前に静かに対抗意識を露呈する展開。
恋の勝負にはだいぶ後れを取る“ローズ”には何度もご愁傷様、と思わずにはいられない。
その上、今巻ではやられっぱなしでは済まさない“志水”にも一本取られて可哀想なほど。

臨時収入を楯に“ローズ”との共同生活に終止符を打とうとする“西野”が彼女の謀略を
運良く躱してもぐりこんだシェアハウス。“柳田”と“山野辺”の関係は推して知るべし
ですが“山野辺”の想定外なフレンドリーさに内心で焦りを覚える“西野”に思わず安堵。

そんなルームメイトが巻き込まれた事件に“西野”が介入するのも彼らしい、という中で
“ローズ”と思いがけない行き違いを引き起こしたり、“竹内”がとんでもない貧乏くじ
を引くことになったり、とフツメンに青春が訪れる兆しもない次巻の展開が気を惹きます。

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2020年01月20日

『君死にたもう流星群5』

松山剛 先生が贈る、宇宙と夢をテーマにした感動巨編。第5巻は“星乃”が宇宙飛行士を
目指す姿を見守る“大地”の前に“ガニメデ”が現れ、思いも寄らぬ対決を強いられます。
(イラスト:珈琲貴族 先生)

https://mfbunkoj.jp/product/kimishinitamou/321907000791.html


“伊万里”留学の思い出として、クラスメイト全員の夢を書いた色紙を残すことが決まり、
様々な夢を語るみんなを前に“大地”が「宇宙飛行士になんて…」と悩むのは相変わらず。
対して“星乃”が微々たる歩みながら目指す未来に向けて努力する姿が何とも微笑ましく。

“大地”を要監視対象として興味を示した“ガニメデ”が彼に仕組む「オーディション」。
時折、彼に届く「かえせ」と書かれたメールがここで牙を剥くことになるとは驚きの展開。
その過程において夢や進路に迷える「幸せ」を認識した、彼の成長が見られたのが大きい。

“伊万里”や“宇野”など「夢」に対する考え方には考えさせられるものがありましたし、
冒頭での宇宙飛行士“弥彦流一”にまつわる逸話が鍵となる構成には目を見張りましたし、
一番印象に残る巻でした。一枚岩ではない相手と対峙し続ける“大地”たちに要注目です。

posted by 秋野ソラ at 00:08 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル