「百合姫ノベル」から発売された 森田季節 先生の青春百合SF。短歌で環境を操る異能を
駆使するスポーツで全国大会に臨む少女の想いを描く本作が特別篇を収録して文庫化です。
(イラスト/えいひ 先生)
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ウタカイの全国大会で初めて対決した“鏡霞”先輩に辛勝したことを契機に交際を始めた
“伊勢”はその勢いで彼女が在籍する強豪校へ飛び級で入学。今またセンバツへの出場権
を賭け彼女の歌垣、炎を纏う龍の異能と周囲を霞で惑乱させる先輩の異能が対峙する──。
2013年の発売当時はまだ百合の素養が乏しく、今こうして文庫化された本作を読むことは
むしろ幸甚だったのではないかと思える読了感。三十一文字にのせた想い、時に文字数に
収まらないその感情がもたらす強さ、葛藤は微笑ましく、そして眩しく映るものばかりで。
トーナメントを勝ち上がっていく“伊勢”を見て信念を揺らがせる“鏡霞”の機微が実に
いじらしい。そんな2人も「後日談」では平常運転に戻って安心させられますし、巻末の
「幻と憎しみのマリネ」も思わぬ年の差百合が味わえて何粒もおいしい作品と感じました。