2019年03月29日

『本好きの下剋上〜司書になるためには手段を選んでいられません〜第四部「貴族院の自称図書委員6」』

満を持してのTVアニメ化が決定した、香月美夜 先生が贈る大人気ビブリア・ファンタジー。
第四部・6巻は図書委員としての活動を本格化すべく“ローゼマイン”が忙しく動きます。
(イラスト:椎名優 先生)

https://tobooks.shop-pro.jp/?pid=138372497


“ローゼマイン”と彼女以外の関係者に向けて「平穏」という言葉の意味を問いかける回
と言ってもよいことはエピローグのあのやり取りを見ても納得せざるを得ず思わず苦笑い。
そんな中でも“フェルディナンド”が強かに布石を打っていくところがまた面白いもので。

中でも“シュバルツ”と“ヴァイス”に興味を持った“ヒルデブラント”王子を図書委員
として抱え込みながら、言うべきところはしっかりと言及する“ローゼマイン”の毅然と
した対応は、本好きとしての真価を発揮するエピソードとして印象深いものがありました。

また、突如現れた特殊な魔獣への対応では、今巻のやらかし具合が詰まっていて興味深い
展開を魅せてくれました。“ローデリヒ”の決意の表れが彼女にとって吉兆となることを
願いたくなる挿話も要注目。今後“ローゼマイン”が貴族院どう揺れ動かすか楽しみです。

posted by 秋野ソラ at 00:20 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2019年03月28日

『ちょっぴり年上でも彼女にしてくれますか?3 〜時を超える愛〜』

望公太 先生が贈る純愛・甘々ラブコメディ。第3巻は“姫”が“薫”の級友と交流する中
で感じる彼らなりの距離感に想いを巡らせつつ、恋人としてのイベントを進めていきます。
(イラスト:ななせめるち 先生)

http://www.sbcr.jp/products/4815600174.html


さりげなく爆弾発言を投下していく“唄”の思考に追いつけず、戸惑いながらも今に至る
までの人間関係の変遷に驚かされる導入部分。印象深かったのは“泉”の言動が彼らしい
距離感の取り方だと気付かされてからの、好意的に移り変わっていく印象の変化でした。

年が離れているからこそ言えることがある。同世代だからこそ向き合える気持ちがある。
“姫”と“薫”の年の差恋愛が思いがけず周囲に作用していく顛末を温かく見守りつつ
しっかりイチャイチャしていく2人が「いざ!」という局面で迎えるまさかの家族会議。

母親に対する感情の欠如、姉が抱く認識との差異、姉弟の間にできた決定的な溝の深さ。
思いがけず目の当たりにする桃田家の問題に実は“姫”が介入していたことが判明する
今巻の副題である「時を超える愛」へと繋がる話の運び方が見事。感動すら覚えました。

posted by 秋野ソラ at 01:32 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2019年03月27日

『新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙IV』

日鳥 先生によるコミック連載を決めた、支倉凍砂 先生が贈る賢狼の娘と聖職者の2人旅。
第4巻は“ロレンス”らも手を焼いた女商人“エーブ”を前に、“コル”たちが挑みます。
(イラスト:文倉十 先生)

https://dengekibunko.jp/product/spice-and-wolf/321808000005.html


とある人物に会うべくラウズボーンを訪れた“コル”が徴税人組合の関係者に否応なしに
連行され、王国・教会・商人それぞれの思惑が錯綜する緊張状態にあることを告げられる。
その事態を引き起こしたのが、薄明の枢機卿として活躍した彼自身だと言うからさあ大変。

そこに“エーブ”が介入してきてこれまた大それた計画を打ち明けてくるから“コル”も
かつてないほどに頭を悩ませます。彼が一手打てば彼女はそれを上回る妙手で応えてくる。
活躍を続けてきた“コル”に頭打ちな局面を迎えさせる彼女の凄さが浮き彫りになります。

口車に乗せられそうになる“コル”を叱咤激励する“ミューリ”の献身ぶりがいじらしく
2人が“エーブ”に対して起死回生の見出せるか、という不安な気持ちを昇華する終盤の
掛け合いはまさに圧巻。へこたれない“ミューリ”の想いは届くのか、次巻も楽しみです。

posted by 秋野ソラ at 01:22 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2019年03月26日

『ひきこもりな余をどうやって魔王にするというのじゃ?』

柊遊馬 先生が贈る新作は、次期魔王を担う幼き皇女殿下のあがり症を克服させるために
召喚された少年がWeb小説を書いて小説家になる夢を追う経験を活かして試行錯誤します。
(イラスト:茨乃 先生)

https://dengekibunko.jp/product/2019/03/


人間側と結んだ不可侵条約が切れるまでの一か月、皇女“ヴィレ”が魔王として就任式を
行わないと再び両者戦乱の世に陥る状況下で召喚されたのが“守”。彼が書いたある小説
に目を付けたからだと側近の“ドメスティカ”は理由を告げるが克服の望みは薄くて──。

対人恐怖症のそぶりを見せる“ヴィレ”の頑なさを前に、素人でもできることをしていく
“樋置”の一手一手が少しずつ彼女の心を動かして、徐々に気持ちが変わっていく様子は
見ていて癒されるというか、心温まるものがあります。それこそ“ドメスティカ”の如く。

やがて迎える就任式。人がいない場での演説練習ができるまでには成長した“ヴィレ”は
無事大役を果たせるのか。“守”が放つ最後の秘策がガッツリと嵌まる顛末は小気味良く
清々しい気持ちにさせてくれる読了感が味わえました。紙幅としても読み易くお薦めです。

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2019年03月25日

『あの日、神様に願ったことは I kiss of the orange prince』

『Hello,Hello and Hello』の 葉月文 先生が贈る新作は、四季折々で色を変える奇跡の花
にまつわる言い伝えを巡って試練を与えられた少女と、それに関わる少年の青春を描きます。
(イラスト:フライ 先生)

https://dengekibunko.jp/product/kamisama/321808000003.html


上代神社に咲くミラクーティアは一年に一度、対価を払った者の願いを叶える逸話がある。
諦めたある願いを胸に抱える“叶羽”はその花を苦々しい思いで見つめる。その先に涙を
流す高校の先輩“燈華”を見咎めて、声をかける所から甘くほろ苦い物語が動き出す──。

姉のために写真を撮り続けた“叶羽”。彼の写真に願いを叶える鍵を見い出した“燈華”。
彼女の思惑を知ってもなお、むしろ知ったからこそ離れていた写真と再び向き合っていく
彼の心境の変化は驚くと共に称賛に値するものがあります。離れた経緯を知ったからこそ。

その想い届かず、試練を乗り越えられない“燈華”を襲う最悪の結末。その兆しに対して
抗う“叶羽”が掴んだ起死回生の一手が2人で見たあの風景に繋がっていく話運びは圧巻。
対価と試練の違い、タイトルに繋がる「彼女」の願いに巻き込まれる彼の健闘を祈ります。

posted by 秋野ソラ at 00:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル