2019年01月17日

『1/2―デュアル― 死にすら値しない紅』

森バジル 先生の「第23回 スニーカー大賞[秋]・優秀賞」受賞作。死んだ人間が一部機能を
失った代わりに特殊能力を得て蘇る近未来の世界で彼らを殺し直す者たちの活躍を描きます。
(イラスト:カスカベアキラ 先生)

https://sneakerbunko.jp/product/dual/321808000422.html


偽生者、即ち生き返った人々を殺し直すための組織で職務を忠実に遂行していく“限夏”。
なのに、組織から紹介された新しい相棒“伴”は偽生者で「死」を失った不老不死の少女。
同僚が偽生者に殺された事件を追うべく組んだ相容れない2人は真相に辿り着けるか──。

“紗束”を殺した“琴崎”の存在と設定が物語を何度か動かしていく話運びがまず面白い。
彼女らを導く“友景”の常軌を逸した思想が見えるにつれて“伴”の不憫さが際立ちます。
「嫌いなものは月とセックス」、“伴”がそう断言するのも納得せざるを得ない状況です。

“伴”の気持ちを知らずに最初は突っかかる“限夏”が次第に彼女のことを思いやるよう
機微が変化していく様子を微笑ましく感じつつ、職務に忠実な理由が作品最大のギミック
となっている点も見どころで、ギリギリまで緊迫感を持たせた展開が印象に残る作品です。

posted by 秋野ソラ at 00:32 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル