2018年05月16日

『常敗将軍、また敗れる』

北条新九郎 先生の「第11回HJ文庫大賞・大賞」受賞作。戦いに赴けば必ず負ける、そんな
異色の経歴を持つ傭兵が戦乱の最中、とある国の存亡に関わる陰謀に巻き込まれていきます。
(イラスト/伊藤宗一 先生)

http://hobbyjapan.co.jp/hjbunko/lineup/detail/784.html


隣国から大軍の侵攻を受けるヘイミナル王国。国王が病で余命幾ばくもなく風前の灯火と
いう状況の中で王弟“デイル”が提言したのが傭兵“ダーカス”を呼びよせること。彼は
「常敗将軍」と呼ばれ、敗北に繋がると周囲から猛反対を受けるが強引に話は進み──。

2万の軍勢に6千の兵と五百数名の傭兵で立ち向かうことになる王国。負け戦必至の中で
“ダーカス”がこれまで負け続け、それでも生き残ってきた、その矜持を見せつけてくる
話運びが面白い。彼を見極めようとする“ティナ”たちが及ばないのも納得の人物像です。

事の発端となった今回の戦に、当初の動きからは想像もつかない因縁や妄執が絡み合って
王国の負け戦が演出される結末も見所と言えます。話の鍵を握らされる“マルハルド”に
思わず同情の念を禁じ得ません。乱世の時代が生み出した傑物の生き様、とくとご覧あれ。

posted by 秋野ソラ at 00:02 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル