岬鷺宮 先生が贈る新作は、「ひとりのわたし」でありたいと願っている二重人格の少女と
人前でキャラを作ってしまう少年の出会いが織り成す、少々変わった三角関係を描きます。
(イラスト/Hiten 先生)
【 http://dengekibunko.jp/newreleases/978-4-04-893829-7/ 】
お気に入りの文学小説を読んでいる所を見られ、気恥ずかしさを覚える“四季”。それが
“秋玻”との、そして彼女のもう一つの人格“春珂”との出会いのきっかけ。入れ替わる
人格の違いに驚きつつも、彼は彼女らの学校生活をサポートしようと決意するのだが──。
しっかり者の“秋玻”に一目惚れした“四季”を、うっかり者の“春珂”が後押ししよう
とする構図に周囲から「付き合っているのか」と揶揄される様子は微笑ましさを覚えます。
けれど、冒頭で手紙を書く場面が暗喩する不穏な状況が彼女らに降りかかる時を迎えます。
人は誰しも矛盾を抱えて生きている。それをどう折り合いをつけるか。彼と彼女らの立場
それぞれに機微を描く先生の手腕には相変わらず心揺さぶられるほどに惚れ惚れします。
ラストのあの場面は中々に卑怯で良いですね。口絵は最後に見ることを推奨しておきます。