2018年05月10日

『察知されない最強職(ルール・ブレイカー)1』

三上康明 先生の「小説家になろう」投稿作が書籍化。交通事故死した少年が死後の世界で
人助けしたことを契機にある頼み事を果たすため異世界に転生する、その命運を描きます。
(イラスト:八城惺架 先生)

https://herobunko.com/books/hero59/8069/
https://ncode.syosetu.com/n5475dz/


腐敗した貴族政治に巻き込まれ、両親を冤罪で殺された“ローランド”。彼は復讐のため
「世界を渡る術」の研究を成し遂げるが、襲撃されてしまう。命を失う僅かな時間、術を
行使し、死後の世界で己の体を転生先とする代わりに復讐を果たしてくれる人を探す──。

ステータスが見えるもののスキルツリーの全容は見えない中で、“ローランド”の体に転生
した“ヒカル”が1時間の中でどう復讐を遂げるのか。その緊張感で話に惹き込まれます。
選んだ選択肢が後に冒険者として生きていく上でもプラスに働いていくのがまた興味深い。

冒険者として急速に経験を積んでいく“ヒカル”が、復讐の場での窮地を救ってくれた少女
“ラヴィア”にその罪を被せられようとしたとき、立ちはだかる強敵にどう立ち向かうか。
熱い戦いの果てに迎える結末、そして“葉月”先輩の思わせぶりな言葉にも注目の一作です。

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2018年05月09日

『大須裏路地おかまい帖 あやかし長屋は食べざかり』

Swind 先生が「神凪唐州」名義で贈る新作は、小神社の神主と居酒屋の雇われ店長を兼ねる
青年があやかしたちと様々な騒動の解決に勤しむ物語。なごやめし普及促進協議会公認です。
(イラスト:平沢下戸 先生)

http://tkj.jp/book/?cd=72817601


人や動物に擬態する「あやかし」たちが暮らすあやかし長屋の一角にある居酒屋「なご屋」。
“諒”はあやかしを視る能力を活かし、そこで店長を務める。神主で賄えない日銭のために。
ある日、弱った子猫を拾い食事を与えてみると少年の姿を取り戻すも記憶がないと言い──。

“諒”が養うことになる記憶喪失の少年“トータ”が長屋の人々から助けられたり、思わぬ
友達を得ることで成長していく様子が微笑ましい。もちろん「協議会公認」の名に恥じない
名古屋ならではの食べ物をおいしく口にする描写の絶妙さは、読了後に思わず食が進むほど。

大須の地を舞台に起こる、あやかし由来の騒動を解決していく内に、“トータ”が鍵を握る
ようになっていく展開に注目。彼の成長と騒動の結末を見届ける面白さがあります。そして
長屋の大家“朱音”の立ち居振る舞いを推しておきたいところです。おススメしておきます。

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2018年05月08日

『ファイフステル・サーガ 再臨の魔王と聖女の傭兵団』

「火の国、風の国物語」シリーズの 師走トオル 先生が贈る新たな叙事詩。魔王再臨を前に
自分の死を夢に見る聖女と婚約することになる少年が共に死を回避する術を探し続けます。
(イラスト:有坂あこ 先生)

http://www.fujimishobo.co.jp/bk_detail.php?pcd=321712000906


魔王戦役から数百年経った今も魔物から国を守るため戦う《狂嗤の団》。その団長の息子
“カレル”は幼き頃に禁忌を恐れずエルフの教えを請い18になってからは国中を渡り歩く
日々を過ごしていた。そんな彼が英雄譚の中心に担がれていく、運命の瞬間が訪れる──。

聖女“セシリア”の秘密を共有する“カレル”が自分の能力や立ち位置を正確に分析して
最善の手を尽くそうとする、実直な姿勢に好感が持てます。死が予知できることを逆手に
取る仕掛けが絶妙です。“ミーリエル”がさばさばとしているのも実に良いと思います。

巻末に推薦文を寄せた 大森藤ノ 先生も言及されています通り暗愚王子“ヴェッセル”が
主人公を超えるくらい言動で魅せてくれるので目が離せません。“イエッタ”も同様に。
強国に攻められる窮地の救い方も見事なもので、胸が熱くなります。続きが楽しみです。

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2018年05月07日

『15歳でも俺の嫁! 交際0日結婚から始める書店戦争』

庵田定夏 先生が贈る新作は出版業界、中でも「取次」に焦点を当てた歳の差ラブコメディ。
初対面の女子中学生に求婚された大手出版販売会社に勤める会社員の激動の日々を描きます。
(イラスト:はまけん。先生)

https://mfbunkoj.jp/product/15yome/321712001032.html


出版社と書店の間を取り持つ出版販売会社に勤める27歳の会社員“賢一”。見ず知らずの
美少女中学生“アリサ”に求婚され、思わず受け入れた彼は有無を言わさず彼女の祖父に
「貴様はワシの孫を幸せにすると、誓うか?」と凄まれる。急転直下の展開に、彼は──。

日本の出版流通を語る上で外せない「取次」について解説しているのがまず注目すべき点。
それを踏まえて“賢一”と“アリサ”の結婚騒動と、通販大手の外圧に抗う大規模書店の
生き残りを賭けた企業戦争が織り交ざる展開にハラハラドキドキ、胸を熱くさせられます。

やがて数の暴力に晒される“アリサ”と“賢一”。心挫けそうになる彼女を、窮地の中に
あるはずの彼が屈せずにどう救うのか。彼女が彼に結婚を誘った裏付けもしっかりあって
ラブコメとしても十二分に楽しめる作品に仕上がっています。激しくお薦めしておきます。

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2018年05月04日

『信長とセーラー服 時をかける大和撫子』

井の中の井守 先生が贈る新作は、戦国時代を行き来して“織田信長”と出会うきっかけを
得た美少女が、挫折を引きずって内向的になっていた自分を変えようとする様を描きます。
(イラスト:ぼに〜 先生)

http://www.bishojobunko.jp/c/item/82960021064270000000.html


愛知の名門お嬢様学校に通う“静香”。校外学習で訪れた名古屋城で彼女にしか見えない
光る岩に触れた瞬間、眩しさの先に現れた見慣れぬ日本家屋に驚くほどの美少年。彼こそ
若かりし“信長”だが逢瀬の時は短く、現代に引き戻される。彼女は異変を調べるが──。

“信長”の足跡を追うことで時間逆行する機会を得る“静香”が彼の育ての親“政秀”を
失う場面に立ち会った時、自身と同じ境遇に身を重ね、生まれる母性のままに体で慰める
転機を迎えます。そこから彼の生き様に感化され、思慕の念を募らせる彼女がいじらしい。

時間逆行と共に歳を重ねる“信長”に対し美少女のままな“静香”。やがて迎える歴史的
瞬間、彼の死を前に二人はどんな決断を下すのか。二人の悲痛な想いを押し潰す炎の先に
彼女が流す涙の理由をぜひ見届けてほしい。冒頭を読み返すと、より納得感が増します。

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