2017年12月18日

『本好きの下剋上〜司書になるためには手段を選んでいられません〜第四部「貴族院の自称図書委員1」』

香月美夜 先生が贈る大人気ビブリア・ファンタジー。「ふぁんぶっく2」と同時刊行となる
第四部・1巻は空白の2年間に困惑する“ローゼマイン”が血気盛んに図書館を目指します。
(イラスト:椎名優 先生)

http://www.tobooks.jp/booklove/
http://ncode.syosetu.com/n4830bu/
http://seiga.nicovideo.jp/comic/booklove


貴族院を卒業して貴族になる。空白期間を盾にその気がない“ローゼマイン”をその気に
させる“フェルディナンド”の手腕は流石。その真意を彼女に同行する人々は掴みきれず
次々と聖女伝説を生み出すことに。これが面白く、特に“ハルトムート”の熱意に苦笑い。

蔵書豊かな貴族院の図書館利用のためエーレンフェスト全体の成績底上げを図る委員会を
立ち上げたり、貴族の意識改革を図る目的と自身の野望を同時に果たす秘策を展開したり
大忙しな“ローゼマイン”。早々に目をつける“ヒルシュール”の言動がまた興味深い。

“アナスタージウス”王子の思惑が見えないのも気になる所ですが、専らの懸念点はあの
“ヴィルフリート”が“ディートリンデ”に対して余計なことをやらかすのではという点。
“ローゼマイン”の本気が導いた結果を台無しにすることがないよう祈るしかありません。

posted by 秋野ソラ at 00:20 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2017年12月15日

『先生とそのお布団』

石川博品 先生の「カクヨム」投稿作にして同人誌に収録された短編を加筆修正した執筆譚。
“石川布団”なる作家と言葉を喋る“先生”と呼ばれる猫が織り成す、心温まる物語です。
(イラスト:エナミカツミ 先生)

http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784094517101


デビューしてこの方、売れたことのないラノベ作家“布団”に15歳年下だが1年先輩である
“美良”から成猫“ロック”が譲り受けられる。後に“先生”と称されるこの猫は彼女同様
大物ラノベ作家“尾崎”に師事した経験を活かし、“布団”を叱咤激励する日々を送る──。

過去に 石川 先生の作品を読んできた方々であれば色々と透けて見えるものがある気がする
“布団”の半生が生々しく、赤裸々に描かれています。いつか大成するかもしれないけれど
鳴かず飛ばずが続く作家人生に不安と嫌気が拭えない機微の描写は心を抉るものがあります。

そんな“布団”を厳しくも支えた“先生”の言葉に、その存在にどれだけ救われたかという
心境が伝わる2016年、そして2017年のエピソードがじんわりと心に響きます。“美良”との
対比も現実味が溢れていて、これまた切ない。ラノベ作家ものとしても異彩を放つ秀作です。

posted by 秋野ソラ at 01:45 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2017年12月14日

『ニートの少女(17)に時給650円でレベル上げさせているオンライン』

瀬尾つかさ 先生が贈る新作は、同居する金髪美少女でひきこもりな女子高生にレベル上げ
のバイトをさせるほどMMORPG大好きな社畜ゲーマーの、一風変わった同棲生活を描きます。
(イラスト:kakao 先生)

http://sneakerbunko.jp/bookdetails/?pcd=321708000279


“石破真一”27歳。設計仕事に携わり4年半。最近「帰りたい家族でもできた?」と上司に
からかわれる彼が早々に帰宅する理由はMMORPGに十分な時間を費やすこと。ニートな同居人
“水那”にバイトとして手伝わせているが、違法行為に手を出したりと困ったヤツで──。

“真一”を男とも思わぬ“水那”の開けっ広げな様子から思慕の念を窺うのは難しいですが
大家の娘“まつり”、ゲームを通じて知り合う“絵里子”から知らずのうちに好意を集める
彼の振舞いが 瀬尾 先生の作品らしくて安心します。相変わらず、うらやまけしからんです。

めんどくさがりでグータラぶりな生活を徹底する“水那”が、作中で時折見せるスペックの
高さと共に気になるプロローグとエピローグ、そして本編の間にあったはずの8年の空白。
これはぜひ見せてほしい。“まつり”との「今」の関係も意味深長ですし。お願いします。

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2017年12月13日

『いつかのクリスマスの日、きみは時の果てに消えて』

瀬尾つかさ 先生が贈る新作は、謎の猛火に襲われた街で死にかけた少年が不思議な生物に
助けられ、過去を改変する機会を得たことで究極の選択を迫られる顛末と結果を描きます。
(イラスト:椎名優 先生)

http://ebten.jp/eb-store/p/9784047348899/


ホーキンス大災厄で不思議生物ニムエと共生する日々を過ごす“悠太”。同じ境遇にいる
“恵”と出会い、彼女の亡き親友が「ニムエが2体いれば何かが起こる」と言及していた
ことを知る。その力で過去に飛んだ彼が出会った少女こそ件の親友“玖瑠美”だった──。

何か悟っていた“玖瑠美”。次第に心惹かれていく“恵”。過去に飛ぶための条件も掴み
大災厄と呼ばれる過去の猛火を無かったことにすべく、僅かに会える“玖瑠美”に全てを
託した“悠太”が過去改変に成功したかと思えば、今度は“恵”が死んだ世界線が訪れる。

好き同士となった“悠太”と“恵”が居る世界は“玖瑠美”の犠牲がなければ得られない
のだろうか。選ばなければならない道に葛藤し、最終的に彼がどんな結末を迎えるのかを
見届けてほしい物語。ちょっと不思議で、切なくて、心温まるステキな単巻作品でした。

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2017年12月12日

『死を見る僕と、明日死ぬ君の事件録』

古宮九時 先生が贈る新作は、これから死ぬ人間の亡霊が見えるのに救えなかったことへ
虚無感を抱く大学生の青年がある女性と出会い、共に運命に抗う生き方を描く物語です。
(イラスト/浅見なつ 先生)

http://mwbunko.com/978-4-04-893525-8/


ある事件に巻き込まれたことを境に大学には一か月で行かなくなった18歳の“神長智樹”。
場所に残る人の記憶を「彼ら」と称し何度も死を見届けた彼の心の拠り所は“鈴”という
いつか死ぬ女性の亡霊。ある日、同じ姿をした人とすれ違い思わず手を取ってしまい──。

あ〜、これは読み返し必須ですね。とんでもない切り返しにまず「やられた」感がすごい。
“鈴”というか“鈴子”ですが、彼女と“智樹”のやり取りが漫才のようで面白いことと
二人の活動が軌道に乗り始める高揚感に油断していると「彼女の知見」を見逃すというね。

事件によって記憶が抜け落ちている“智樹”がおぼろげに覚えている「ある人物」とその
「助言」が少しずつ形となり、“鈴子”の運命が迫ってきてからの緊迫感と物語の真実は
ぜひ読んで確かめていただきたいところ。読了後の余韻も心地よい一冊でございました。

posted by 秋野ソラ at 01:57 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル