十字静 先生の「第10回MF文庫Jライトノベル新人賞」3次選考通過作にして、500ページを
超える規格外な作品。記憶を失くした少年が人として生きるため足掻く生き様を描きます。
(イラスト:しらび 先生)
【 http://www.mediafactory.co.jp/bunkoj/book_detail/1584 】
無限図書の迷路「図書迷宮」。その奥底で吸血鬼の真祖“アルテリア”と共に殺人鬼から
追われる“綜嗣”。記憶と魔法を失った彼は「記憶を取り戻す本」を探すため彼の記憶を
綴る魔導書を手に再び迷宮へ挑む。1,000ページしかない記憶残量に焦りを覚えながら──。
世にも珍しい二人称小説ということで拝読。TRPGリプレイでGMからNPCの語りを入れられる
感覚に似ている印象をまず受けました。「記憶」という要素が時に“綜嗣”の進む道を遮り、
あるいは切り開き、やがて話の謎を明らかにする鍵となっていく構成の妙で魅せてくれます。
設定も興味深い吸血鬼“アルテリア”がそもそも“綜嗣”に好意を寄せる理由。彼が祈った
「誰かを救いたい」という想いに繋がるその真相をぜひ見届けてほしいボーイミーツガール
な作品です。しらび 先生の美麗なイラストも数多く使われていて贅沢な一冊だと思います。