涼暮皐 先生が贈る新作は、魔族との決戦に敗れた英雄の一人が過去に遡り、教師として
英雄となるかつての仲間を負けないよう育てる顛末を描く教育バトルファンタジーです。
(イラスト/桑島黎音 先生)
【 https://hobbyjapan.co.jp/hjbunko/lineup/detail/745.html 】
かつて「救世衆」が封印した魔神の復活に備え、その力を継ぎ世界を救うために戦う者達を
集めた魔術学院の救世科。跳ねっ返り者ばかりのクラスに本来いないはずの担任“アキ”は
頭を悩ませつつも生徒たちの育成に力を注ぐ。二度と同じ結末を迎えさせないために──。
“アキ”の振り回されっぷりやその言動の数々から、涼暮皐 先生のキャラクターらしさを
感じて思わず苦笑い。“ソニカ”たちが彼を頼りないと感じる初見から、自分たちが力を
使いこなせていないと痛感させられて、認識を改めていく過程は見ていて楽しいものです。
生徒たちが繰り広げる騒動の裏で、着々と仕込まれていた学院内の罠。課せられた様々な
枷を踏まえ、救世科の生徒たちも巻き込みながら迎える救世の前哨戦をどう乗り切るのか、
“アキ”たちの活躍にご注目。謎が回収できていないので、次巻以降で見てみたい所です。
2017年09月22日
2017年09月21日
『響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏学部、波乱の第二楽章 前編』
2017年9月30日に劇場版アニメが公開となる 武田綾乃 先生の青春エンタメ小説。新年度を
迎えた北宇治高校吹奏楽部の新入部員たちと進級した“久美子”らとの交流を描く新章です。
(イラスト:アサダニッキ 先生)
【 http://tkj.jp/book/?cd=72748901 】
総勢89人となった北宇治高校吹奏楽部。“久美子”たちの低音パートにも無事に新入生が
配属となり一安心といった所。一年生の“梨々花”が抱える悩みの相談を受け付けてから
「黄前相談所」として下級生の信頼を集めるあたり、変わらぬ人柄が見受けられて楽しい。
そんな“久美子”に信頼を置きつつもどこか距離感のある“奏”。彼女が同級生“美玲”
や三年の“夏紀”に見せる態度に潜む心情を折に触れ厳しくも優しく指摘する“久美子”
には脱帽の域に達するものを感じました。隠し事をしていた“友恵”に怒るところもね。
“緑”の忠犬みたいに振舞う“求”など、新入生たちも個性的な面々で物語をどう動かして
いくのか楽しみです。目下、名前だけ出てくる「龍聖学園」のダークホース感が気になる所。
所々に見られる女の子同士の友情に心癒されながら京都大会を目指す後編の刊行を待ちます。
迎えた北宇治高校吹奏楽部の新入部員たちと進級した“久美子”らとの交流を描く新章です。
(イラスト:アサダニッキ 先生)
【 http://tkj.jp/book/?cd=72748901 】
総勢89人となった北宇治高校吹奏楽部。“久美子”たちの低音パートにも無事に新入生が
配属となり一安心といった所。一年生の“梨々花”が抱える悩みの相談を受け付けてから
「黄前相談所」として下級生の信頼を集めるあたり、変わらぬ人柄が見受けられて楽しい。
そんな“久美子”に信頼を置きつつもどこか距離感のある“奏”。彼女が同級生“美玲”
や三年の“夏紀”に見せる態度に潜む心情を折に触れ厳しくも優しく指摘する“久美子”
には脱帽の域に達するものを感じました。隠し事をしていた“友恵”に怒るところもね。
“緑”の忠犬みたいに振舞う“求”など、新入生たちも個性的な面々で物語をどう動かして
いくのか楽しみです。目下、名前だけ出てくる「龍聖学園」のダークホース感が気になる所。
所々に見られる女の子同士の友情に心癒されながら京都大会を目指す後編の刊行を待ちます。
2017年09月20日
『夢幻戦舞曲』
『星刻の竜騎士』の 瑞智士記 先生が贈る新作は、オリンピック目前となる東京の統治権を
賭けた大戦に日本代表として送り込まれる、人工吸血鬼にされた少年の運命を描く物語です。
(イラスト:むつみまさと 先生)
【 http://www.mediafactory.co.jp/bunkoj/book_detail/1567 】
侵攻してきた大英帝国に不平等条約を結ばされた人外種。土地を追われた彼らに五輪開催国
で種族代表戦を勝ち抜いた一種族にその地の所有権を与える、と話が持ち掛けられ論争の後
「幻神大戦」の開催が決まる。蚊帳の外な日本政府は慌てて自前の人外種を用意するが──。
遺体を引き取り、15歳にして天才科学者の“黒羽”に人工吸血鬼とさせられた“大雅”の話
から始まり、出場者たちの紹介を進む話に絡めながら順次行っていく構成が実に自然で絶妙。
素性も様々で、繋がりの有無ですとか、隠し事があったり、と今後を想像するのも楽しい。
人外種の強さを計るかの如く開会式に合わせて仕向けられたアメリカ合衆国の軍隊がまさに
当て馬。その力を思う存分、振るってくれます。爽快です。単に戦うだけが大戦ではない
ようですし、“黒羽”や“大雅”にも思うところありそう。これは次巻の刊行が楽しみです。
賭けた大戦に日本代表として送り込まれる、人工吸血鬼にされた少年の運命を描く物語です。
(イラスト:むつみまさと 先生)
【 http://www.mediafactory.co.jp/bunkoj/book_detail/1567 】
侵攻してきた大英帝国に不平等条約を結ばされた人外種。土地を追われた彼らに五輪開催国
で種族代表戦を勝ち抜いた一種族にその地の所有権を与える、と話が持ち掛けられ論争の後
「幻神大戦」の開催が決まる。蚊帳の外な日本政府は慌てて自前の人外種を用意するが──。
遺体を引き取り、15歳にして天才科学者の“黒羽”に人工吸血鬼とさせられた“大雅”の話
から始まり、出場者たちの紹介を進む話に絡めながら順次行っていく構成が実に自然で絶妙。
素性も様々で、繋がりの有無ですとか、隠し事があったり、と今後を想像するのも楽しい。
人外種の強さを計るかの如く開会式に合わせて仕向けられたアメリカ合衆国の軍隊がまさに
当て馬。その力を思う存分、振るってくれます。爽快です。単に戦うだけが大戦ではない
ようですし、“黒羽”や“大雅”にも思うところありそう。これは次巻の刊行が楽しみです。
2017年09月19日
『ウォーター&ビスケットのテーマ1 コンビニを巡る戦争』
河野裕 先生と 河端ジュン一 先生が贈る新作は、8月をループする戦場の街にて臆病者の
少年と幼馴染の少女が与えられた異能力を活かし、生き残りを図る青春ファンタジーです。
(イラスト:椎名優 先生)
【 http://sneakerbunko.jp/bookdetails/?pcd=321705000094 】
失敗作と評されるTVアニメ『ウォーター&ビスケットの冒険』。その主人公“ウォーター”
が繰り返し告げる「生きろ」というメッセージを胸に生き抜くことを決めた少年“香屋”。
アニメを通じて繋がった“秋穂”と“トーマ”との幸せな日常は突然終わりを告げる──。
悪事を監視する都市伝説のような組織「世界平和創世部」を管理する“香屋”と“秋穂”が
「架見崎」という異世界に招待され、全土を支配すれば欲しいものを何でも一つ用意すると
する運営の言葉に乗ってその地をどう見定め二人で生き残る策を見い出していくのかが見所。
臆病者であるが故に時に繊細で、時に大胆な行動を見せる“香屋”。「架見崎」で各人が
得られるという異能力の選び具合も想像の埒外で、彼には何度も驚かされます。異能バトル
でもしっかり魅せてくれますし、人間関係の描写や戦略の読み合いも面白い。お薦めです。
少年と幼馴染の少女が与えられた異能力を活かし、生き残りを図る青春ファンタジーです。
(イラスト:椎名優 先生)
【 http://sneakerbunko.jp/bookdetails/?pcd=321705000094 】
失敗作と評されるTVアニメ『ウォーター&ビスケットの冒険』。その主人公“ウォーター”
が繰り返し告げる「生きろ」というメッセージを胸に生き抜くことを決めた少年“香屋”。
アニメを通じて繋がった“秋穂”と“トーマ”との幸せな日常は突然終わりを告げる──。
悪事を監視する都市伝説のような組織「世界平和創世部」を管理する“香屋”と“秋穂”が
「架見崎」という異世界に招待され、全土を支配すれば欲しいものを何でも一つ用意すると
する運営の言葉に乗ってその地をどう見定め二人で生き残る策を見い出していくのかが見所。
臆病者であるが故に時に繊細で、時に大胆な行動を見せる“香屋”。「架見崎」で各人が
得られるという異能力の選び具合も想像の埒外で、彼には何度も驚かされます。異能バトル
でもしっかり魅せてくれますし、人間関係の描写や戦略の読み合いも面白い。お薦めです。
2017年09月18日
『キミは一人じゃないじゃん、と僕の中の一人が言った』
比嘉智康 先生が贈る久々の新作は、3人の人格を共有する少年が「多重人格ごっこ」なる
遊びを持ち掛けた少女と高校で再開するところから始まる純度100%の恋愛ストーリーです。
(イラスト:はっとりみつる 先生)
【 http://amzn.to/2xW5Vw4 】
“囚慈”“θ郎(しーたろう)”“キイロ”。“市川櫻介”の体には3人の人間が住んで
いる。小学校時代、人気者だった彼らはいじめられている“華の実”を救い、忘れられない
思い出を共有するが彼女は突然転校する。空虚な思いを胸に高校生活を始めるのだが──。
表層と観覧席の入れ替わり方やその表現など工夫されていて、キャラクターの差異が明確に
なっていることもあり多重人格であることに混乱することもなく自然に読めるのがまず凄い。
“市川櫻介”の中だけでもやりとりは見ていて面白く、反応する“華の実”の様子も楽しい。
“囚慈”たちと高校で再会した“華の実”が、なぜ「多重人格ごっこ」をもう一度やろうと
持ち掛けたのか。その理由が明らかとなっていくと共に訪れる彼女の変化を“囚慈”たちが
どう受け止めるのか。その描写は切なく、そして心温まる良質な恋愛モノでした。流石です。
遊びを持ち掛けた少女と高校で再開するところから始まる純度100%の恋愛ストーリーです。
(イラスト:はっとりみつる 先生)
【 http://amzn.to/2xW5Vw4 】
“囚慈”“θ郎(しーたろう)”“キイロ”。“市川櫻介”の体には3人の人間が住んで
いる。小学校時代、人気者だった彼らはいじめられている“華の実”を救い、忘れられない
思い出を共有するが彼女は突然転校する。空虚な思いを胸に高校生活を始めるのだが──。
表層と観覧席の入れ替わり方やその表現など工夫されていて、キャラクターの差異が明確に
なっていることもあり多重人格であることに混乱することもなく自然に読めるのがまず凄い。
“市川櫻介”の中だけでもやりとりは見ていて面白く、反応する“華の実”の様子も楽しい。
“囚慈”たちと高校で再会した“華の実”が、なぜ「多重人格ごっこ」をもう一度やろうと
持ち掛けたのか。その理由が明らかとなっていくと共に訪れる彼女の変化を“囚慈”たちが
どう受け止めるのか。その描写は切なく、そして心温まる良質な恋愛モノでした。流石です。