2017年02月24日

『トラックに轢かれたのに異世界転生できないと言われたから、美少女と働くことにした。』

日富美信吾 先生が「講談社ラノベ文庫」から贈る新作は異世界転生をテーマにした物語。
異世界転生できる、と思った少年が味わう挫折と思わぬ方向に這い上がる顛末を描きます。
(イラスト:こもわた遙華 先生)

http://lanove.kodansha.co.jp/books/2017/2/#bk9784063815795


ラノベやネット小説がとても好きな少年“志郎”が突然の死から目覚めて出会った美少女は
第1転生課の職員“フィリア”。思い描いた場面に直面し夢が叶ったと浮かれる彼に彼女は
告げる「あなたは確かに転生できるわ。でもね、転生できないの」ってどうゆうこと──?

理想の転生を叶えるための条件を前にこれまでの生き様を問われた“志郎”が、悔いのない
転生ライフを支援する“フィリア”の熱意に刺激され第1転生課の臨時職員として働く様子
が次第に周囲の好感を集めていく話運びが軽妙。こもわた 先生が描く挿絵も可愛らしい。

“フィリア”をライバル視する“ウィルゴ”が第2転生課を立ち上げて、課の存続の危機に
立たされる彼女を見て“志郎”がどう動くのか、それまでの成果の集大成をぜひご覧あれ。
思わせぶりな引きを見せてくるあたりシリーズ化は狙っていると思うので続刊に期待です。

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2017年02月23日

『公爵令嬢は騎士団長(62)の幼妻 3』

筧千里 先生が「小説家になろう」にて発表していた、歳の差ラブロマンス作品の書籍化。
第3巻は決闘騒ぎからいよいよ嫁宣言をもらう“キャロル”に過酷な試練が待ち受けます。
(イラスト:ひだかなみ 先生)

http://kadokawabooks.jp/product/124/
http://ncode.syosetu.com/n4472cw/


“アンドリュー”からの度重なるアプローチにも動じず、壁ドンされても「騎士の誓い」
を盾に“ヴィルヘルム”への愛を貫く“キャロル”。ついに決闘を申し込まれた騎士団長
が照れを隠しながら彼女のことを婚約者と口にする様子、挿絵と共に微笑ましいものです。

いよいよ初デート、と“キャロル”が浮かれる様子を様子を描く流れでお国の事情が垣間
見えるあたりの流れも素直。だからこそ愛しの人が傍にいないことへ気丈に構える様子も
違和感なく受け入れられます。そんな彼女に仕向けられる追い打ちも実に分かりやすい。

医学知識があるだけに分かってしまう、“ヴィルヘルム”の置かれている状況。ここまで
耐えた“キャロル”でも流してしまう涙が、ひだかなみ 先生の挿絵と共に印象に残ります。
二人に幸あらんことを、ということで彼女の健気さが素敵な恋愛作品、堪能いたしました。

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2017年02月22日

『おめでとう、俺は美少女に進化した。』

和久井透夏 先生の第1回カクヨムWeb小説コンテスト(恋愛・ラブコメ部門)特別賞作品。
女装趣味が高じて有名女性コスプレイヤーとなった男性大学生の秘密多き人生を描きます。
(イラスト:みわべさくら 先生)

http://kadokawabooks.jp/product/120/
http://ncode.syosetu.com/n2452df/
https://kakuyomu.jp/works/4852201425154910711


詐欺写真のつもりで上げた女装写真が思いのほか好評で女性コスプレイヤーとして活動を
始めた“将晴”。両親の再婚で出来た双子の妹弟にも内緒で続ける女装姿を見せつけた
友人の“稲葉”から彼女のふりをしてくれ、と懇願される所から物語は動き始めた──。

妹“優奈”と弟“優司”との繋がりが、“将晴”の場合と女装姿“朝倉すばる”としての
場合で異なることに“将晴”が苦悩する・・・どころの騒ぎじゃないくらい振り回されていく
彼というか彼女というか、の人生に思わず合掌。ですが、身から出た錆なので仕方がない。

“将晴”に関わっていく人たちの性的嗜好が幅広いところも本作のポイント。男女問わず
言い寄られ、やっかみを受ける彼はどこへ向かうのか。引き際を失うほどに高まっていく
“すばる”としての有名度と共に深刻化するバレた際の危険度と合わせて注目したいです。

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2017年02月21日

『蜘蛛ですが、なにか? 5』

馬場翁 先生が「小説家になろう」で公開していた迷宮サバイバル・ストーリーの書籍版。
第5巻は地上で過ごす“蜘蛛子”が人や転生者との関わり合いで世界に影響を及ぼします。
(イラスト:輝竜司 先生)

http://kadokawabooks.jp/product/125/
http://ncode.syosetu.com/n7975cr/
http://comic-walker.com/contents/detail/KDCW_KS11000007010000_68/


“蜘蛛子”が助けた赤子が“ソフィア”こと“根岸彰子”、すなわち自分と同じ転生者で
あり、しかも吸血鬼だということで羨みつつも守護する形に。それも街ごと。やがて神と
崇められ国同士の戦争にも介入する始末。故に魔王“アリエル”にも目を付けられる訳で。

一方、勇者サイドもエルフの里を部隊に因縁の対決が勃発。エルフや“岡”先生に対する
不信感もその根幹がようやく見えてきました。“ユーゴー”も強烈な強さで圧倒するかと
思えば上には上がいることも分かりました。管理者側も同様。混迷としてまいりました。

魂すら消滅させる深淵魔法にも対抗策を見せた“蜘蛛子”の何でもアリ感に驚かされつつ
ついに彼女の本名と級友たちとの関係も判明。いよいよ物語が交差してきて物語が動く先
もさらに読みきれない所から彼女の並列意志が想定外の行動に。引き続き目が離せません。

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2017年02月20日

『86―エイティシックス―』

安里アサト 先生の「第23回電撃小説大賞・大賞」受賞作。帝国の無人兵器に苦しめられる
共和国が対抗策として開発した同型兵器に隠された偽りに翻弄される少年少女を描きます。
(イラスト/しらび 先生 メカニックデザイン/I-IV 先生)

http://dengekibunko.jp/newreleases/978-4-04-892666-9/


高性能無人機を戦場へ送り出すことで戦死者ゼロの国防を実現した、と喧伝する共和国。
実状は銀髪銀瞳の先住民が暮らす85ある行政区の外に追いやられ劣等生物と侮蔑される
有色種「エイティシックス」と呼ばれる人たちが無人機に乗り兵役に就いていた──。

無人機部隊を指揮する“レーナ”が共和国の「怠慢」を何とかしようと血気盛んになるが
精鋭部隊を率いる“シン”たちとの交流から認識の甘さを痛感させられ、ある契機を元に
仲間になれるかと思えば彼らに課せられた「期待」に絶望する。その過程が壮絶なドラマ。

パーソナルネームの付け方、帝国の無人機「レギオン」との因縁、“シン”たちがたどり
着いた先。見届けるしかなかった“レーナ”にかけられた最後の一言。すべてが繋がった
あの瞬間に圧倒される読了感は皆さんにも体験してほしい。映画化にも耐え得る作品です。

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2017年02月17日

『追伸 ソラゴトに微笑んだ君へ』

田辺屋敷 先生の「第29回ファンタジア大賞・金賞&特別賞」受賞作。野球部を退部して
無気力な少年だけが知らない少女の登場に戸惑い、振り回されるSF青春ストーリーです。
(イラスト:美和野らぐ 先生)

http://www.fujimishobo.co.jp/bk_detail.php?pcd=321610000800


疎遠にしていた祖母からの手紙を受け取った“マサキ”。幼馴染の“ユミ”の言葉もあり
野球を辞めてからの次の目標、彼女を作ることを添えて手紙で返事を書くことに。夏休み
が明けると、クラスに面識のない少女“ハルカ”が級友と仲良くしていて困惑するが──。

“ハルカ”の意外な一面を目の当たりにし、険悪な関係を残しつつ交際する羽目になった
“マサキ”が時折目にする彼女の突然の変化。きっかけへの気づきと彼女の変化の秘密を
思いも寄らぬ局面で知ることになった彼がどういう選択肢を選ぶのか、が最大のポイント。

オカルト趣味の“ユミ”が伝える伝承や、祖母に出した手紙に返信してきた“アキ”なる
人物がここまで絶妙に絡み合って“マサキ”と“ハルカ”を繋ぎ止めたのか、と分かると
あの見開きイラストも印象的に映ります。少し不思議な物語、堪能させていただきました。

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2017年02月16日

『異端の神言遣い 俺たちはパワーワードで異世界を革命する』

『世界の危機はめくるめく!』や『うさぎロボ』の 佐藤了 先生が贈る久々の新作は異世界
召喚ファンタジー。祈りの言葉で魔法が使える世界で革命を起こす少年少女たちの物語です。
(イラスト:武藤此史 先生)

http://ebcomic.com/clear/fcc/viewer/viewer.html?id=1567


気さくな剣道少女“菜々子”、大人しい読書家“萌絵”、気の強い美少女“清花”。3人
から異性の好みを尋ねられた“駿介”が突然、異世界へと召喚される。そこで異世界の人
よりも強力な神言魔法を使うことが出来ると判明し、恐れと奇異な目に晒されるが──。

文字数の違いで魔法の強さに違いが出る神言魔法を人並みレベルで扱わなければいけない
ということで文字数制限と効果に紐づくワードをいかに上手く盛り込むか考えて使用する
“菜々子”たちの工夫が焦点の一つ。そこから彼女たちの意外な一面が見れるのも同様。

“駿介”と級友たちに意外な縁があることが分かり、絆が深まっていくところで助けて
くれた自由剣士“マリカ”が抱える秘密を知り、窮地に手を貸す所で培われる仲間意識が
とても素敵。彼がひた隠しにしていたアレも最後にちゃんと見せてくれるので注目です。

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2017年02月15日

『女神の勇者を倒すゲスな方法 「おお勇者よ! 死なないとは鬱陶しい」』

『戴天高校勝利部』でデビューし『あやかしマニアックス!』等を上梓した 夏希のたね 先生
が 笹木さくま 先生と改名して「第18回えんため大賞・特別賞」を受賞した作品の登場です。
(イラスト:遠坂あさぎ 先生)

http://ebcomic.com/clear/fcc/viewer/viewer.html?id=1566


人界の料理がおいしいと知り、魔界の料理に辟易した“リノ”。娘の想いに応えるべく人の
いない人界の僻地に居を構えた“蒼の魔王”だが何度倒しても復活する勇者に手を焼く始末。
そこへ召喚された“真一”に助けを求めた訳だが、彼が選んだ策略がまた容赦なくて──。

RPGで言うところの主人公を倒せないならどうするか。では心を折るしかない、という感じで
次々とゲスな策を実行していく“真一”をひたすら蔑む“セレス”とのやりとりが面白い。
負けじと司教“ヒューブ”が送り出す切り札“アリアン”の登場でその流れが変化します。

勇者という存在につけこんだ司教の野望に、そして“アリアン”の秘密に気づいた“真一”
が色仕掛けで彼女を落とす方針を少し変える、ゲスですが優しいところに魅せられました。
総じて 遠坂 先生のキャッチーな絵とコミカルな展開で楽しく読みやすい話だと思います。

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2017年02月14日

『ようこそ実力至上主義の教室へ 5』

衣笠彰梧 先生が贈る新たな学園黙示録。第5巻は夏休み明けに行われる体育祭に向けて
Aクラスと協力、B・Cクラスと勝負することになったDクラスの紆余曲折を描きます。
(イラスト:トモセシュンサク 先生)

http://www.mediafactory.co.jp/bunkoj/book_detail/1499


無人島や船上の特別試験とは違い、あくまで「体育祭」だと位置付ける“綾小路”の真意
を図りかねる“堀北”は苛立ちを隠せず、また体力自慢の“須藤”がクラス勝利に向けて
乗り出す動きに辟易するわ、で次第にDクラスの中で浮き始めます。いつもの話ですが。

一方“綾小路”は、いよいよ頭角を見せてきた“龍園”や“葛城”を抑えAクラスで台頭
する“坂柳”の存在に注目しつつ、来たるべき“堀北”の失敗に備えて最低限のフォロー
をします。これがまた的確で小憎らしいですが、今回は度が過ぎたようでそこが面白い。

今回は個人の力にしか頼らない“堀北”を徹底的に貶めて改心させるお話、ということで
裏切り者の件も含めて彼女の様子はみていてつらいですが、“須藤”と境遇を重ねて遂に
折れる場面には将来性を感じました。後は“綾小路”がピンチな感じなのが気になります。

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2017年02月13日

『魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい? 1』

数々のレーベルで作品を上梓してきた 手島史詞 先生が「HJ文庫」に初参戦。悪の存在と
畏怖される若き魔術師が、髪も肌も白い美少女エルフと出会ったことから始まる物語です。
(イラスト/COMTA 先生)

http://hobbyjapan.co.jp/hjbunko/lineup/detail/709.html


魔術を極めた者の証「魔王」を目指す魔術師“ザガン”は魔術の研究に勤しむ日々を送る。
ある日、闇オークションで見初めて自分のものとした奴隷エルフ“ネフィ”を城に招くも
「自分はどう殺されるのか?」と聞かれる始末。異性との付き合い方など知らぬ彼は──。

魔術バカの“ザガン”が誤解されているだけで実は助けられている人たちが少なからずいる
と気づいてから見せる“ネフィ”の所作がいじらしい。キレると怖いところとか彼への厚意
に応えようとするあたりでニヨニヨしていたら突然、彼から解放されるという想定外の流れ。

魔術師による連続少女誘拐事件の犯人として“ザガン”を仕立て上げた人物が明らかになる
と共に見せつけられる彼の力とその秘密がまさに見どころ。“シャスティル”の葛藤とか
“マニュエラ”の気軽さも物語に上手く絡んできて実に読みやすく、楽しめるシリーズです。

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2017年02月10日

『スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました』

森田季節 先生の「小説家になろう」投稿作が書籍化。過労死した女性会社員が慈悲により
異世界で不老不死の魔女としてスローライフな日々を送るはず・・・だった物語が綴られます。
(イラスト:紅緒 先生)

http://www.sbcr.jp/products/4797390445.html
http://ncode.syosetu.com/n4483dj/


高原の空き家を運良く入手、村の往来でスでイムを倒して入手した魔法石をギルドで換金、
作成した薬草を安価で村人に譲渡・・・といつしか高原の魔女様と呼ばれ敬われる“アズサ”。
300年が経過したある日、ギルドでレベルを測定したことから彼女の思惑が崩れ始めて──。

あくまで悠々自適の生活を望む“アズサ”が力試しに来る訪問者をあしらう過程で想定外の
人間(?)関係を築いていく過程が面白い。転生後も社畜精神を持ち合わせていることから
時折、胸を打つ言動が見受けられるところも印象的です。こんな生活を送ってみたいもので。

過去、森田 先生の著作をいくつか拝読している中で、話運びや 紅緒 先生によるイラスト
など様々な要素からして群を抜いてキャッチーな作品に仕上がっているかと。百合な要素も
活かしておりますし、最速重版もうなずけます。次巻以降にも期待が持てるシリーズです。

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2017年02月09日

『逆転召喚3 〜裏設定まで知り尽くした異世界に学校ごと召喚されて〜』

三河ごーすと 先生が贈る、異世界召喚がもたらす人生逆転物語。第3巻は“栞里”の兄
“伊織”に従う生徒会の面々が彼女に目を付けたことで情勢がさらに動くこととなります。
(イラスト:シロタカ 先生)

http://dash.shueisha.co.jp/bookDetail/index/978-4-08-631168-7
http://ncode.syosetu.com/n8321cz/


“伊織”との会話から“栞里”を試すと飛び出した“阿南”、それを追いかける“琴葉”。
そこへ悪魔の国の守護神“黒死龍”が外に出ていた“麻梨果”と対峙して泣きっ面に蜂か、
と思ったら想像していたものとは違う話運びを見せてくれて、これが今巻のまず面白い点。

“阿南”と“琴葉”の力の差を見せつけられたことで“ララノア”の力を借りての強化を
図った“湊”たち。各々が新たに得た力の使い方で魅せてくれるのですが、中でも“エマ”
のアレがいぶし銀のように上手いな、と感じました。“麻梨果”の無双ぶりも圧巻です。

思わぬところから見えてきた「彩東」という家、血筋の業の深さ。それゆえに暗い過去を
背負ってきた“栞里”がついにその弱さをさらけ出し“湊”がそれを受け止めたからこそ
築かれた絆が見所、というか彼のラッキースケベ遭遇率が高くてうらやまけしからんです。

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2017年02月08日

『英雄エルフちゃんが二人の弟子を育てます! 崖っぷちから始める世界寿命の延ばし方 Step2』

秋月煌介 先生が贈る、儚く切ない英雄継承譚。第2巻はあの激戦から5年後、“ヒューイ”
から受け継いだ英雄の力を“フィオ”はどう使い、伝えるのか。その後の顛末を描きます。
(イラスト:水鏡まみず 先生)

http://www.mediafactory.co.jp/bunkoj/book_detail/1501


天才肌で気分屋の“キリエ”と努力家で神経質な“ウェズリー”。黙示録の獣を討伐しつつ
2人を弟子として、継承候補として旅を続ける“フィオ”の相変わらずな立ち居振る舞いに
まず安堵を覚えます。けれど世界の終わりが迫る危機感は増しており緊迫の度は増すばかり。

“フィオ”の何気ない一言を裏読みしてしまったり、どこか物知り顔な“ザック”の助言に
突っかかってみたり、と自身の存在意義を確保しようと必死な“ウェズリー”が実に不憫。
その彼が現英雄の抱える最大の秘密に気づいた際の様子は憐憫の情を禁じ得ませんでした。

“ソーニャ”たちの協力を得ながらも一歩及ばずな“フィオ”も報われませんでしたし、
振り返れば“ウェズリー”の物語でもあった、と感じさせる話運び。未曽有の危機を前に
「英雄」の存在を糧として人々は立ち向かうことが出来るのか。次巻の動向に要注視です。

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2017年02月07日

『通常攻撃が全体攻撃で二回攻撃のお母さんは好きですか?』

井中だちま 先生の「第29回ファンタジア大賞・大賞」受賞作。子を思う母親と、母親を
煩わしいと思う子、二人の関係をMMORPGで問いかける新感覚母親同伴冒険コメディです。
(イラスト:飯田ぽち。先生)

http://www.mediafactory.co.jp/bunkoj/book_detail/1504


「母親と一緒に冒険の旅に出たら仲良くなれますか?」なれるんじゃねーの? 知らんけど
と回答した“真人”に訪れた政府主導の「MMMMMORPG」への参加資格。ゲーム好きの彼は
早速冒険の旅に出ることを選ぶワケですが、振り返ればそこに母“真々子”の姿も──?

ライトノベルにおいて「親」という存在はとかくなおざりにされがち。そこを逆手に取る
かのように母親を前面に押し出し、安易に主人公TUEEEとさせずに面白さへと繋げていく、
MMORPGモノとしても一線を画す楽しさがあります。母親がゲームに詳しくないのもミソ。

パーティー候補を面接するくだり、補助スキル「母の牙」誕生の顛末など母の愛に溢れる
話とは対極に位置するもう一つの親子の物語が交錯するとき、子供たちはそれぞれどんな
想いを母親に示すのか。“真人”の回答結果、その興味深い行く末をぜひご覧ください。

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2017年02月06日

『リンドウにさよならを』

三田千恵 先生の「第18回えんため大賞・優秀賞」受賞作。好きな女の子の飛び降り自殺を
食い止められず地縛霊として目覚めた少年といじめられっ子との奇妙な繋がりを描きます。
(イラスト:DANGMILL 先生)

http://ebcomic.com/clear/fcc/viewer/viewer.html?id=1565


級友から陰湿な嫌がらせを受けている女の子、“穂積”。その様子を霊としてもどかしく
眺めていた“神田”はある日、彼女から声を掛けられる。何故ここにいるのか。好きな娘に
境遇が似ている彼女を何とかしようとすることで自身の存在意義を見出そうとするが──。

“神田”の助言を得て少しずつ変わろうとする“穂積”の努力。それを認めない“松下”の
グループ。かばってくれる“高木”や彼の後輩“結城”の存在が突破口となって、少しずつ
明るい表情を取り戻す“穂積”の成長が話の主軸か、と思っていると物語は思わぬ方向へ。

地縛霊となった“神田”を取り巻く人間関係が明らかとなったとき、「リンドウ」の花に
込められた想いが、そしてタイトルの意味が分かった瞬間の感動は言葉で表すのが難しい。
ファミ通文庫が素晴らしい学園青春ストーリーを提供できるレーベルだと再確認できました。

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2017年02月03日

『世界の終わりの世界録<アンコール>9 絶望の始祖』

細音啓 先生が贈る王道ファンタジー。第9巻は“レン”一行が残る“フィア”との合流を
目指すため砂漠地帯にある監獄へ、そして精霊の女王解放に向けて神性都市を目指します。
(イラスト:ふゆの春秋 先生)

http://www.mediafactory.co.jp/bunkoj/book_detail/1504


“フィア”と合流するまでの流れは平穏というか、どこかコミカルな感じ。強くてそして
抜け目のない彼女の存在もまた大きいと改めて実感させてくれます。“ナスターシャ”が
いつも通りポンコツで使えないのがもどかしい。“レン”もあきらめてる感はありますが。

旅を続けるうちに“レン”の胸中に浮かんだ「世界録が創られた本当の目的」という疑問が
“エリエス”と“シオン”が言及する精霊の怯えに、そして終焉の島へと結びついたとき、
世界の厳しい現状がより鮮明になります。絶望的な状況でも彼らの心は折れないのが凄い。

暗躍を続ける沈黙機関。忍び寄る“ゼルブライト”の影。それらに考えを巡らせる余裕を
与えない絶望の化身、“レン”が自身の唯一を信じて対峙する勇ましさ、偽英勇としての
矜持が熱い展開を呼びます。終焉に抗う力を見せつけてくれると期待し、次巻を待ちます。

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2017年02月02日

『ワールドエネミー 不死者の少女と不死殺しの王』

『世界の終わりの世界録』の 細音啓 先生、ふゆの春秋 先生のコンビがノベルゼロから
贈る新作。史上最凶の吸血鬼と史上最強の怪異ハンターが世界の敵に立ち向かう物語です。
(イラスト:ふゆの春秋 先生)

http://novel-zero.com/special/world_enemy/


五百年前に突如現れた怪異たちの脅威に晒される世界。代行者(ハンター)たちによって
何とか抗い続ける中で史上最強と認められた“ノア”が、教会に身を置く“シルヴィ”の
元を訪れ、問いかける。街一つ滅ぼすのも容易い大敵(アークエネミー)の存在を──。

自身も大敵である“エルザ”がなぜ大敵を滅ぼす“ノア”と同道するか。“シルヴィ”に
降りかかる惨事を経て二人の因果関係を早々に明らかとすることで世界観に惹き込ませる
あたりは流石と言うしかありません。所々で隙を見せる“エルザ”の言動が一々可愛い。

大敵の一体“ゼルネッツァA”の足取りを掴んだ“ノア”。“エルザ”に鍛え上げられた
彼の強さと大敵の狡猾なしたたかさ。どちらが上を行くのかを描く顛末と激戦はまさに
見所と言っていいでしょう。“シルヴィ”を通じて語られる二人の行く末に注目です。

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2017年02月01日

『リトルアーモリー だから、少女は撃鉄を起こす』

未知の敵「XX=イクシス」が各地で出現し平和が脅かされる世界。「指定防衛高等学校」に
通い脅威と戦う力を養う少女たちの青春と活躍を描く物語を おかざき登 先生が綴ります。
(イラスト:ふゆの春秋 先生 原作:株式会社トミーテック)

http://www.j-n.co.jp/books/?goods_code=978-4-408-41451-5
http://www.littlearmory.jp/


私立古流学校。そこは武器や弾薬を身に着け演習を、時には平和を守るための実戦に臨む
ことも要求される学生が通う指定防衛校。その一人“未世”も敵や銃器の対応方法を学ぶ
が、彼女は過去に遭遇した仔犬型の敵が見せた様子からある違和感を拭えずにいた──。

勉強、部活と学生生活を謳歌する少女たちが武装するその姿を時に可愛く、時に格好良く
描く ふゆの 先生のイラスト。彼女たちが学生として、兵士としてどんな日々を過ごして
いるのか、兵装の知識が無くても魅せてくれる おかざき 先生の文章に惹き込まれます。

共同演習を通じて他校との生徒とも交流を深め、一時は悔しさを味わいつつも“未世”が
抱える違和感を捨てず頑張る姿が印象的。特に“六花”たちとやりあう場面は情景が頭に
浮かぶかのようでした。その陰で進行する謎の計画とその思惑、続きが気になる所です。

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