2017年02月28日

『たとえばラストダンジョン前の村の少年が序盤の街で暮らすような物語』

サトウとシオ 先生の「第8回GA文庫大賞・優秀賞」受賞作。とある村で一番弱いとされる
少年が軍人を目指し暮らす都で、その「村」の特異性を図らずも発揮する顛末を描きます。
(イラスト:和狸ナオ 先生)

http://www.sbcr.jp/products/4797390292.html


最果ての村「コンロン」で荒事よりも炊事洗濯が得意な“ロイド”は村一番のか弱い男。
しかしその村は英雄の子孫が暮らす場所で、都に住む人たちとは潜在能力がまるで違う。
そんな勘違いを承知の上で村長“アルカ”はある目的のために彼を都へと送り出す──。

「ロリババアの溺愛ここに極まれり」な“アルカ”の所業に振り回される魔女“マリー”
を筆頭に“ロイド”の勘違いが起こすあれこれに驚かされる面々とのやりとりが面白い。
彼に思わぬ形で助けられた“セレン”の言動の変わり具合、突き抜け方が特に好きです。

師匠である“アルカ”から「人間同士の争いにコンロン村を関わらせない」という誓約を
受けている“マリー”だからこそ、自身のある事情に“ロイド”を巻き込ませまいとする
気苦労が取り越し苦労になる顛末や彼が軍人となる試験の行方にご注目。オススメです。

posted by 秋野ソラ at 00:07 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2017年02月27日

『りゅうおうのおしごと!5 小冊子付き限定版』

「第28回将棋ペンクラブ大賞・優秀賞」「このラノ2017・文庫部門ランキング1位」を獲得
した、白鳥士郎 先生が贈る熱血将棋コメディ。第5巻は名人と対峙する苦しさを描きます。
(イラスト:しらび 先生)

http://www.sbcr.jp/products/4797390100.html


名人との対局で負けが込み、“あい”や“銀子”の心遣いにも八つ当たりで返してしまう
ほどに打ちひしがれた“八一”を、言葉ではなく自身の対局で伝えた“桂香”に思わず涙。
神を前にしても勝ちを諦めない心を取り戻した彼の鬼気迫る想いが挿絵と共に伝わります。

熱い展開だけでなく、喜劇的な描写にも磨きが。“ひな”への償いとして見せつけられる
イチャイチャぶりは事案モノですし、女将の過剰な対応も思わず笑みがこみ上がります。
“八一”の家族のゲスっぷりもね。そんな中にも家族愛を感じる名場面があるのでご注目。

小冊子に さがら総 先生が書き下ろした短編がまた秀逸。今巻の「勝ち」にこだわる想い
を永遠のライバルに対して叩きつける“銀子”の心情を描く物語は一読の価値ありです。
本編で悔しい思いをした分、報われても良いかと。ゲストイラストも目の保養になります。

posted by 秋野ソラ at 00:13 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2017年02月24日

『トラックに轢かれたのに異世界転生できないと言われたから、美少女と働くことにした。』

日富美信吾 先生が「講談社ラノベ文庫」から贈る新作は異世界転生をテーマにした物語。
異世界転生できる、と思った少年が味わう挫折と思わぬ方向に這い上がる顛末を描きます。
(イラスト:こもわた遙華 先生)

http://lanove.kodansha.co.jp/books/2017/2/#bk9784063815795


ラノベやネット小説がとても好きな少年“志郎”が突然の死から目覚めて出会った美少女は
第1転生課の職員“フィリア”。思い描いた場面に直面し夢が叶ったと浮かれる彼に彼女は
告げる「あなたは確かに転生できるわ。でもね、転生できないの」ってどうゆうこと──?

理想の転生を叶えるための条件を前にこれまでの生き様を問われた“志郎”が、悔いのない
転生ライフを支援する“フィリア”の熱意に刺激され第1転生課の臨時職員として働く様子
が次第に周囲の好感を集めていく話運びが軽妙。こもわた 先生が描く挿絵も可愛らしい。

“フィリア”をライバル視する“ウィルゴ”が第2転生課を立ち上げて、課の存続の危機に
立たされる彼女を見て“志郎”がどう動くのか、それまでの成果の集大成をぜひご覧あれ。
思わせぶりな引きを見せてくるあたりシリーズ化は狙っていると思うので続刊に期待です。

posted by 秋野ソラ at 00:55 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2017年02月23日

『公爵令嬢は騎士団長(62)の幼妻 3』

筧千里 先生が「小説家になろう」にて発表していた、歳の差ラブロマンス作品の書籍化。
第3巻は決闘騒ぎからいよいよ嫁宣言をもらう“キャロル”に過酷な試練が待ち受けます。
(イラスト:ひだかなみ 先生)

http://kadokawabooks.jp/product/124/
http://ncode.syosetu.com/n4472cw/


“アンドリュー”からの度重なるアプローチにも動じず、壁ドンされても「騎士の誓い」
を盾に“ヴィルヘルム”への愛を貫く“キャロル”。ついに決闘を申し込まれた騎士団長
が照れを隠しながら彼女のことを婚約者と口にする様子、挿絵と共に微笑ましいものです。

いよいよ初デート、と“キャロル”が浮かれる様子を様子を描く流れでお国の事情が垣間
見えるあたりの流れも素直。だからこそ愛しの人が傍にいないことへ気丈に構える様子も
違和感なく受け入れられます。そんな彼女に仕向けられる追い打ちも実に分かりやすい。

医学知識があるだけに分かってしまう、“ヴィルヘルム”の置かれている状況。ここまで
耐えた“キャロル”でも流してしまう涙が、ひだかなみ 先生の挿絵と共に印象に残ります。
二人に幸あらんことを、ということで彼女の健気さが素敵な恋愛作品、堪能いたしました。

posted by 秋野ソラ at 00:20 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2017年02月22日

『おめでとう、俺は美少女に進化した。』

和久井透夏 先生の第1回カクヨムWeb小説コンテスト(恋愛・ラブコメ部門)特別賞作品。
女装趣味が高じて有名女性コスプレイヤーとなった男性大学生の秘密多き人生を描きます。
(イラスト:みわべさくら 先生)

http://kadokawabooks.jp/product/120/
http://ncode.syosetu.com/n2452df/
https://kakuyomu.jp/works/4852201425154910711


詐欺写真のつもりで上げた女装写真が思いのほか好評で女性コスプレイヤーとして活動を
始めた“将晴”。両親の再婚で出来た双子の妹弟にも内緒で続ける女装姿を見せつけた
友人の“稲葉”から彼女のふりをしてくれ、と懇願される所から物語は動き始めた──。

妹“優奈”と弟“優司”との繋がりが、“将晴”の場合と女装姿“朝倉すばる”としての
場合で異なることに“将晴”が苦悩する・・・どころの騒ぎじゃないくらい振り回されていく
彼というか彼女というか、の人生に思わず合掌。ですが、身から出た錆なので仕方がない。

“将晴”に関わっていく人たちの性的嗜好が幅広いところも本作のポイント。男女問わず
言い寄られ、やっかみを受ける彼はどこへ向かうのか。引き際を失うほどに高まっていく
“すばる”としての有名度と共に深刻化するバレた際の危険度と合わせて注目したいです。

posted by 秋野ソラ at 00:19 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル