2017年01月17日

『猫と竜と冒険王子とぐうたら少女』

アマラ 先生が贈る竜と猫、そして人間が紡ぐファンタジー作品に続刊が登場。火吹き竜に
育てられた猫たちが巣立ち、出会った人たちと送る活き活きした日々の様子を描きます。
(イラスト:大熊まい 先生)

http://tkj.jp/book/?cd=02656401
http://ncode.syosetu.com/s5614b/


「猫と竜」「黒猫と王子」「白猫と少女」「母猫と少女」とプロローグで前巻の登場人物
を振り返ってくれる気配りが実にありがたい。すんなりと各短編へ入り込んでいくことが
できます。個性豊かなキャラクターたちを思い出すだけで微笑ましい感情が想起されます。

王子の世間知らずぶり、ぐうたら少女のゆるやかな成長ぶり、新米教師のヘタレぶり、と
連れ添う猫たちとのやりとりが楽しい各々の物語。それらが「魔法学園」キーワードで
繋がりそうな雰囲気に続刊への期待が高まる次第。宝島社さん、よろしくどうぞなのです。

もちろん、振り返った以外の猫たちも登場します。“ヤジュウロウ”の風来坊ぶりが好み。
そして母猫がついに動き出す。アークデーモンと「羽のおじちゃん」のリアクションが
同じなのに思わず笑みが。威厳もへったくりもない。母は強し、ですがこちらも如何に。

posted by 秋野ソラ at 00:54 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2017年01月16日

『転生太閤記〜現代知識で戦国の世を無双する〜』

津田彷徨 先生の「カクヨム」連載作品が満を持しての書籍化。大学受験を前に事故死した
不運な少年が気がつけば戦国時代の農民となって生まれ変わり、成り上がりを目指します。
(イラスト:獅子猿 先生)

http://kadokawabooks.jp/product/114/
https://kakuyomu.jp/works/4852201425154961853


「クソ、謀ったな目薬屋!」喧嘩を売ってきた山脇の三男坊“重信”に捨て台詞を言わせ
たやすく退ける少年“萬吉”。彼こそ後の“黒田官兵衛”として名を馳せる男、その傍ら
には天文二十四年、播州の地に転生し、彼と共に切磋琢磨する“秀一”の姿があった──。

奇しくも同じ名前の少年に生まれ変わった“秀一”が知識量豊富だからこそ人並み外れる
ことを嫌って慎重にその手札を切ろうとする言動が興味深い。故に時の傑物たちに興味を
持たれることになるワケで。話の折に挟まれる歴史の人物たちの紹介が何気に助かります。

そして、数々の日本刀に魅せられた先生のこだわりぶりが物語のそこかしこに出てくる点
にも、それを時に華麗に、時に荒々しく振るう男たちの活躍にも注目。幼き日に交わした
“萬吉”との約束を果たすべく「あの男」のもとに辿り着いた“秀一”の今後に期待です。

posted by 秋野ソラ at 00:23 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2017年01月13日

『僕の妹はバケモノです』

鹿角フェフ 先生の「第1回カクヨムWeb小説コンテスト・ホラー部門大賞」受賞作。既刊
『これが異世界のお約束です!』とは打って変わって、畳みかける恐怖が読者を襲います。
(イラスト:ヤタ 先生)

http://kadokawabooks.jp/product/109/
https://kakuyomu.jp/works/4852201425154929290


寝坊助な高校生の“暁人”を起こしてくれるのは妹の“夢衣”。だが違和感が付きまとう。
なぜなら彼女は一年前に交通事故で死んだはずだからだ。恐る恐る仏壇にある妹の写真を
彼が確かめたその時、仏壇の扉を勢いよく閉める無機質な妹の顔を目の当たりにする──。

死んだはずの妹が高校へ通うことに何ら違和感を抱かない周囲もさることながら、学校周辺
で1年前から奇妙な死体を生み出し続ける殺人鬼の存在に全く覚えのない“暁人”も異常。
何が起こっているのか、何が正しいのか、分からないまま進む物語に恐怖感を煽られます。

そして“暁人”へ突き付けられる信じたくない現実と選ばなくてはいけない選択肢に悲壮感
を滲ませる彼の機微に注目。妹という存在の喪失感を味わった彼だからこそたどり着いて
しまった結末はぜひ読んでご確認いただきたい。お薦めです。アンコールがまた怖いコレ。

posted by 秋野ソラ at 00:33 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2017年01月12日

『横浜駅SF』

柞刈湯葉 先生の「第1回カクヨムWeb小説コンテスト・SF部門大賞」受賞作。Twitterにて
「イスカリオテの湯葉」名義で呟かれた物語が満を持して書籍化され、発売を迎えました。
(イラスト:田中達之 先生)

http://kadokawabooks.jp/product/111/
https://web-ace.jp/youngaceup/contents/1000031/
https://kakuyomu.jp/works/4852201425154905871


人類を横浜駅の支配から解放するべく活動する「キセル同盟」に所属する“東山”は横浜駅
への反逆行為により追放された男。彼に「リーダーを救出してくれ」と18きっぷを渡された
“ヒロト”は九十九段下にあるエスカレーターから1415番口よりエキナカへと旅立つ──。

自己増殖を続ける横浜駅、という言葉だけで注目せざるを得ないこの物語。退廃した世界観、
エキナカという空間にはびこる独自のルール、活動し続ける機械のオーバーテクノロジー感、
横浜駅と戦うJR各社が見せる対応の違い等々、綴られていくドラマに惹き込まれていきます。

そしてドラマの主役は“ヒロト”だけではありません。思いがけない人々の繋がり、思惑が
今も増殖を続ける横浜駅の秘密に迫っていきます。彼は18きっぷの有効期限5日間の中で
何を為すのか、ぜひ読んで確かめてほしいです。外伝を収録する次巻の刊行にも期待です。


#◆横浜駅 SF - Togetterまとめ
#【 https://togetter.com/li/766019

#◆【横浜駅SFポスター企画】「エキナカ民の声を集めてポスターを作ろう」キャンペーン
#  ── 「yokohamaekisf」タグツイートまとめ - Togetterまとめ
#【 https://togetter.com/li/1050102

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2017年01月11日

『戦うパン屋と機械じかけの看板娘〈オートマタンウェイトレス〉6』

SOW 先生が贈る街角パン屋繁盛記。第6巻はとあるお願いを胸に聖誕祭へ臨む“ルート”、
士官学校へ再編入された“ヒルダ”、謎の一端を垣間見せる“ダイアン”の話を綴ります。
(イラスト/ザザ 先生)

http://www.hobbyjapan.co.jp/hjbunko/lineup/detail/699.html


ザザ 先生の告知漫画が指し示す、「聖女が現れたオーガンベルツ」に何が起こったのか。
切り取ったコマの一つ一つは嘘偽りないので相変わらず見せ方が上手いな、と思いつつ
街の人との関わり方が見えて良い挿話でした。波乱を予感させる引きも見せてきましたが。

https://twitter.com/zaza_xcan01/status/814473120618717184


通称「お嬢様予備校」で軍隊教育をやり直しさせられた“ヒルダ”。後指をさされる彼女
ですが友達も出来て何とか平穏な学校生活を送れるか・・・と思いきや見逃せない陰謀に対応
せざるを得なくなったり、更にはファーストキスも奪われて、と苦労が絶えないようです。

そして幕間などで細切れに見えてくる場面が最後になって結びついていく「魔導師の追憶」。
“ソフィア”も振り回される役回りが増えてきたと思いつつ天才にもそれなりの理由と背景
があると分かります。口絵の絶妙な仕掛けは読了後に確認を。こちらの引きも気になります。

posted by 秋野ソラ at 00:24 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル