2016年12月23日

『エイルン・ラストコード 〜架空世界より戦場へ〜 5』

東龍乃助 先生が綴る新世代ロボットライトノベル。第5巻は氷室義塾の反攻の狼煙となる
「明星奪取計画」の発動に沸く“夏樹”たちを、予想外の過酷な運命が翻弄していきます。
(イラスト:みことあけみ 先生、汐山このむ 先生、貞松龍壱 先生)

http://www.mediafactory.co.jp/bunkoj/book_detail/1480


米国政府の確約を取り付け・・・のくだりから怪しいなぁ、と思っていたら案の定の展開で
ある意味、安心というか。総理のほうが一枚上手、という展開に“氷室夏樹”ではなく
“エイルン=バザット”として仲間となった皆を助ける道を選んだ彼の言動がまずアツい。

絶対的に信じる者、疑念を持つ者、敵対する者、日和見な態度をとる者。“エイルン”の
導き出した結論に対し、氷室義塾の面々がとった行動のそれぞれがこれまで蓄積してきた
あるいは培ってきたものを感じさせてくれて人物像としても層が厚くなったと感じます。

そしてあの人から告げられたヘキサとネイバーの秘められた関係。それにも“エイルン”
は動じず為すべきことを為した言動は惚れ惚れするほど。“エルフィーナ”もボロボロに
なる激闘の末に構えていた更なる一大事に物語はどう動くのか。第二部が待ち遠しいです。

posted by 秋野ソラ at 00:18 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2016年12月22日

『黒騎士さんは働きたくない』

雨木シュウスケ 先生が贈るダッシュエックス文庫の新作はスローライフ・ファンタジー。
新王国に追われた帝国の姫と黒騎士が落ち延びた先の飲食店で第二の人生を歩む物語です。
(イラスト:伍長 先生)

http://dash.shueisha.co.jp/bookDetail/index/978-4-08-631158-8


大森林の傍らにある獣人街、そこにある犬鳴亭は今とても繁盛している。その理由は居候
している働き者で器量好しの看板娘“レイニア”。もう一人の居候“クロウ”はヒモ同然
で役立たず、のはずだが魔物を従え王国を倒した帝国一の将だと公然の秘密と囁かれ──。

かつての姫“レイニア”に養われながら“ジェダ”にどやされ、“ミアル”には幻滅され、
とダメダメぶりを発揮する“クロウ”ですが、その経緯は明確で思わず「分かる」と同情
したくなります。ちゃんとやる時はやってくれます・・・でも働けよ、とは思いますけど。

“クロウ”を追って“アシュリー”や“パスティア”がやってくる話は微笑ましい感じ
ですが“レイニア”の侍女だった“ルーミィ”が来てからが雲行きが怪しくなります。
そこでどう対応するか、に二人らしさを感じられて実に良かった。続きが楽しみです。

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2016年12月21日

『この旅の果ては、約束と救済と嘘の場所』

『災厄戦線のオーバーロード』の 日暮晶 先生が贈る新作はファンタジー。世界の理が突然
狂わされた世界で旅を続ける元盗賊の青年と記憶喪失の少女が世界を救っていく物語です。
(イラスト:赤井てら 先生)

http://www.fujimishobo.co.jp/bk_detail.php?pcd=321607000647


光の柱が立ち昇った夜、それまで当然であった法則を覆す事象「逆理」が世界各地で発生。
“ミステル”の故郷を探し二人旅を続ける“グレイヴ”は、逆理とある関係をもつと嘯く
魔術師“ディア”と出会い、世界を救うためにその蒐集を手伝うよう依頼されるが──。

逆理発生と共に発生した「魔力の反転現象」により魔術の行使が困難になった“ディア”
の苦悩と、逆に使えるようになったことで生活が様変わりした“アイロス”の心境がこの
世界の歪さ、ジレンマのようなものを端的に表していて、物語に惹き込ませてくれます。

ある場所から“ミステル”を救出した“グレイヴ”は中々の強者で女の扱いも慣れたもの。
バランスの悪い三人組において前衛としてバリバリ活躍する姿は格好良いですがこれまた
トンデモない事情を背負ってます。旅の終わりをどう結ぶのか想像するのが楽しみです。

posted by 秋野ソラ at 00:04 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2016年12月20日

『終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか?#03』

枯野瑛 先生が贈る、終末の世界を描くファンタジー作品。「すかすか」に続くシリーズ
第3巻は目覚めぬ“ラキシュ”を前に、“フェオドール”がある計画を実行に移します。
(イラスト:ue 先生)

http://sneakerbunko.jp/bookdetails/?pcd=321604000296


“リンゴ”の件、そして“ラキシュ”の件。「妖精」について“アイセア”から改めて
説明を受けた“フェオドール”が想いと決意を再認識する場面が物語を動かし始めます。
“アイセア”が実に良い立ち位置にいるし、振る舞いを魅せてくれます。悲しいほどに。

そんな中、眠ったままのはずの“ラキシュ”が脱走したという話を聞き、捜索の命令を
受ける“フェオドール”が、話に聞いた「妖精」の真髄を目の当たりにするワケです。
そして投獄される流れ。“ティアット”たちが動揺するのも無理はないと言えましょう。

“フェオドール”を「理解」した“ティアット”が彼の前に立ちはだかり、投げつける
あのセリフに彼女の成長と、世代の移り変わりを実感させられます。容赦なく酷な運命
を与えてくる 枯野 先生が鬼のよう。彼の戦いは意味を為すのか否か、目が離せません。

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2016年12月19日

『友達いらない同盟』

園生凪 先生の「第5回講談社ラノベチャレンジカップ・佳作」受賞作。こだわりゆえに
一人ぼっちな少年と友達がほしくない少女が組む「同盟」が思春期の難しさを描きます。
(イラスト:天三月 先生)

http://lanove.kodansha.co.jp/books/2016/12/#bk9784063815719


「友達とは何か?」を自分なりに突き詰めたがゆえにクラスで嫌われ者となった“新藤”。
級友の少女“澄田”から、不測の事態に備えて同盟を組みたいと言われ、それを了承する。
「わたしさあ、友達いらないんだよね」そう嘯く彼女に、彼は疑問を感じるのだが──。

“新藤”が「友達」を定義した経緯も凄まじいですが、“澄田”が「友達をいらない」と
いう境地に至った理由も重めです。その過去を背負ってしまったことで、あれやこれやな
言動に至るのも分かる。けど自分がそうなるかは全く想像がつかない。それくらい突飛。

引きこもりの“悠希”や同盟に加わることになる“城ケ崎”との繋がりが“澄田”にある
決定的な「似て非なる者」という認識を持たせてしまった時の解決策がコレしなかない感
は印象に残りました。“スベテ”すげぇな! 多感な時期にこそ触れてほしい作品かと。

posted by 秋野ソラ at 00:05 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル