2016年12月30日

『GOSICK GREEN』

桜庭一樹 先生の名作『GOSICK』の続編。第4巻は探偵業を始めた“ヴィクトリカ”の前に
依頼人が次々登場。解決していく事件と“一弥”の記者としての仕事が交錯していきます。
(装画:カズモトトモミ 先生)

http://gosick.jp/green/


旅する紙幣に物語の一端を語ってもらう、という面白い導入から始まる“ヴィクトリカ”と
“一弥”の新生活。今は亡き偏屈な建築家の謎をあっさり解き明かす話で和やかな雰囲気を
醸し出しつつ、かつて暗躍した銀行強盗団の一員“KID”の脱獄が不穏さを呼び込みます。

建築家の仕掛けだけでなく、金融王の施策や“KID”の義賊ぶりなど一見関係の無さそうな
様々な要素を次々と繋げていき、最終的に「連邦準備銀行を再襲撃する」という“KID”の
悲願と対峙する“ヴィクトリカ”の「知恵の泉」が真実を導き出す展開はやはり楽しい。

珍しく気が合わない新米カメラマン“ニコ”と組んで記事を用意するべく奔走する“一弥”。
こちらも興味深いコンビになりそうな兆しを見せつつ、“ヴィクトリカ”のあしらいぶりで
相変わらず魅せてくれます。そしてあの引きとリアクション、次巻は一層期待が高まります。

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2016年12月29日

『我が驍勇にふるえよ天地3 〜アレクシス帝国興隆記〜』

あわむら赤光 先生が贈るファンタジー戦記。第3巻はディンクウッドを新たな拠点として
に構える“レオナート”たちを穏やかな冬の季節と思いがけない野心が忍び寄ってきます。
(イラスト:卵の黄身 先生)

http://www.sbcr.jp/products/4797389685.html


いきなり広い土地を手に入れたがゆえに顕在化する優秀な人手の不足具合。興味深い2人の
裁定や“レオナート”自身が選定する場面が彼の軍らしさを感じさせてくれます。その思想
を支える“ロザリア”の偉大さに敬服したくなるほど。着実に力をつけている様が窺えます。

訪れる冬に苦労して攻めてくる輩もいないだろうから備えを万全に、という“シェーラ”の
思惑を覆す、ある人物の焚きつけから始まる新たな戦いがこの世界における兵法を描き出し、
将とは何たるかを示してくれる。そこに群像が絡んでドラマが生まれる。魅せてくれます。

それでも苦戦を強いられる局面は迎えます。その中で注目を集めるのが“レオナート”に
縁の深い“エイナム”。彼がその生き様を潔さを貫き通したがゆえにあの結末は物悲しくも
映えるものがあります。心で献杯しつつ、新たな敵の前触れと戦いの予感に目が離せません。

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2016年12月28日

『ゼロから始める魔法の書VIII ―禁書館の司書―』

2017年春のTVアニメ放映に向けて準備が進む、虎走かける 先生の大人気ファンタジー作品。
第8巻は世界を救うべく北の地にある祭壇を目指す“ゼロ”たちが壮絶な光景を目にします。
(イラスト/しずまよしのり 先生)

http://dengekibunko.jp/newreleases/978-4-04-892539-6/


魔女の力を借りてでも任務を全うしたい教会騎士団の隊長“バルセル”と生粋の教会信者
で副隊長の“レイラント”。そりの合わない二人を“ジェマ”が取り持ちつつ悪魔の領地
へと踏み入れてからの不協和音ぶりに苦笑い。“傭兵”と“ジェマ”の気苦労は尽きず。

“ゼロ”の助言に従う者、従わない者の分かりやすい末路を経て辿り着いた領主、禁書を
収集する図書館の“館長”が示す異常なまでの執着に慄きます。“司書”から語られる
事情からすべてを見抜いた“ゼロ”の容赦ない鉄槌に“傭兵”が怖がるのも分かります。

“傭兵”と過去につながりのある“ジェマ”のエピソードと、彼が示した“バルセル”に
対する感情も見所の一つと言えます。幕間で語られる“神父”と“リーリ”の微笑ましい
やり取りに安堵しつつ、そちら側も動きがありそうですので合わせて続きが楽しみです。

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2016年12月27日

『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア7 小冊子付き限定版』

大森藤ノ 先生の大人気シリーズ「ダンまち」のスピンオフ作品。第7巻はダイタロス通り
の調査に乗り出した“ロキ”たちが想定外の局面を迎える、本編7巻の裏側を描きます。
(イラスト:はいむらきよたか 先生)

http://www.sbcr.jp/products/4797389357.html


あからさまな隠し扉の発見から始まる新たな迷宮探索。明らかに罠があると分かりつつも
進まざるを得ない「ロキ・ファミリア」の面々が、“フィン”の重傷を始めとして次々と
窮地に陥っていく、かつてない緊迫感あふれる展開に読み手にも焦りと不安が募ります。

人の手によって作られた執念の塊のような迷宮に込められた想い、それを取り巻く関係が
見えてくると共に、わずかなチャンスを拾い上げて状況を覆そうとしていく展開が熱い。
この話運びがほぼ即興で生み出されてきた、というのですから 大森 先生、凄すぎます。

“イシュタル”の野望成就、その切り札がまさかあんな結果をもたらすとは。まさに絶句。
殺伐とした雰囲気は小冊子に収録された 依河和希 先生のゲストイラストや 矢樹貴 先生
の漫画、書き下ろし短編小説の微笑ましさで払拭できたと思います。続きが楽しみです。

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2016年12月26日

『アクセル・ワールド21 -雪の妖精-』

川原礫 先生が贈る大人気シリーズ第21巻。《白のレギオン》との領土戦ステージで相手の
真意攻撃により窮地に立たされる《黒のレギオン》勢がどう立ち回るか、選択を問われます。
(イラスト/HIMA 先生)

http://dengekibunko.jp/newreleases/978-4-04-892390-3/


無制限中立フィールド化、など予測もつかない真意攻撃により無限EKの舞台へ誘いこまれた
“クロウ”たち。唯一飛べる彼が“ベル”を伴って逃れた直後にあっさりと全損させられた
展開に《白のレギオン》が一枚も二枚も上手で、抱く「大義」の強さを印象づけてきます。

何とか挽回する策を模索する“クロウ”を何やかや言いながらも支える“メタトロン”の
存在が今回はかなり大きい。見せ場がそこかしこにあります。そして戦友として彼を支援
してくれる“リード”のここぞという場面での登場が光ります。あれは実に格好良いです。

仲間の窮地に急遽駆けつける“黒雪姫”が見せる覚悟、その裏側で“クロウ”が出会った
彼女の親友“若宮恵”のアバターが語る「裏切り」の真実に唖然とさせられます。執拗に
狡猾な《白のレギオン》に対抗できるきっかけを活かせるか、続く次巻の動向に注目です。

posted by 秋野ソラ at 00:46 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル