古宮九時 先生が贈る、言語と人間を描くファンタジー。第2巻は魔法大国ファルサスに
辿り着いた“雫”が思わぬ仕打ちを受け“エリク”とも距離を置かれる局面を迎えます。
(イラスト/森沢晴行 先生)
【 http://dengekibunko.jp/newreleases/978-4-04-892497-9/ 】
王族に伝わる口伝「世界外から来たものを、排除しろ」。国王“ラルス”は頑なに信じて
正体を表せと“雫”にあれこれ肉体的、精神的負荷をかける一方、王妹“レウティシア”
は彼女に同情の念を寄せ、多少は融通を利かせてくれる。わずかに救いのある展開です。
“エリク”もいたファルサスで日々を過ごすうちに彼の過去や禁呪の話を耳にする“雫”。
彼女があれこれ思索している中で、動く死体の騒動が国を揺るがす事態へと発展。そして
彼の過去が襲いかかる結果に。それでも毅然とした対応を見せる彼らにすごさを感じます。
ただ、数々の騒動を描く過程すら霞むような子供の流行り病、言語障害が出るという症状
の真相に至るラスト数十ページの“雫”と“エリク”のやり取り。あまりの認識の違いに
驚かされつつ、このままうやむやにするのは惜しいので続きが出てほしいと願う次第です。
2016年11月30日
2016年11月29日
『29とJK2 〜大人はモテてもヒマがない〜』
裕時悠示 先生が贈る禁断の年の差ラブコメ。第2巻は顧客情報漏洩疑惑の内部調査を目的
として新センター長が八王子に赴任する所から“鋭二”の新たな苦難の戦いが幕を開けます。
(イラスト:Yan-Yam 先生)
【 http://www.sbcr.jp/products/4797388336.html 】
中途半端な才能を嫌う社長の厳命で今度は“花恋”の一次選考通過を早期に実現する必要
が求められる“鋭二”。かと思えば新しい上司の“百目鬼”には顧客情報漏洩の濡れ衣を
着せられて崖っぷちに立たされるし、で憤慨を禁じ得ない。この会社、内憂を抱えすぎ。
現場も外野の人間に荒らされ、あげく“綾”からはセクハラの報告が挙がり、“花恋”も
投稿作品に酷評をつけられ気落ちする一方。打つ手なし、かと思える状況を耐え忍んで
時に自分で、時に仲間の力を借りて巻き返していく“鋭二”の姿に熱いものを感じました。
作家になれなかった夢を“花恋”に託す“鋭二”が彼女に「呪い」を示す場面で、逆に
自身の胸の内へ置き去りにしてきた気持ちに気づかされた後の選択肢が潔い。挿絵も完璧。
新たな呪いとしての「29とJK」、爽快な読了感を450ページ超の一気読みで堪能しました。
として新センター長が八王子に赴任する所から“鋭二”の新たな苦難の戦いが幕を開けます。
(イラスト:Yan-Yam 先生)
【 http://www.sbcr.jp/products/4797388336.html 】
中途半端な才能を嫌う社長の厳命で今度は“花恋”の一次選考通過を早期に実現する必要
が求められる“鋭二”。かと思えば新しい上司の“百目鬼”には顧客情報漏洩の濡れ衣を
着せられて崖っぷちに立たされるし、で憤慨を禁じ得ない。この会社、内憂を抱えすぎ。
現場も外野の人間に荒らされ、あげく“綾”からはセクハラの報告が挙がり、“花恋”も
投稿作品に酷評をつけられ気落ちする一方。打つ手なし、かと思える状況を耐え忍んで
時に自分で、時に仲間の力を借りて巻き返していく“鋭二”の姿に熱いものを感じました。
作家になれなかった夢を“花恋”に託す“鋭二”が彼女に「呪い」を示す場面で、逆に
自身の胸の内へ置き去りにしてきた気持ちに気づかされた後の選択肢が潔い。挿絵も完璧。
新たな呪いとしての「29とJK」、爽快な読了感を450ページ超の一気読みで堪能しました。
2016年11月28日
『ソードアート・オンライン オルタナティブ クローバーズ・リグレット』
『パラサイトムーン』などで知られる 渡瀬草一郎 先生が「SAO」のスピンオフ作品を担当。
SAO事件中に開始した和風VRMMOを舞台に、謎解きクエストへ挑む少女2人の物語を描きます。
(イラスト/ぎん太 先生 原案・監修/川原礫 先生)
【 http://dengekibunko.jp/newreleases/978-4-04-892487-0/ 】
《アスカ・エンパイア》のイベント「百八の怪異」、その内の1つを1週間以内にクリア
してほしい、とゲーム内で探偵業を営む“クレーヴェル”に依頼する初心者の“ヤナギ”。
彼に付き添った“コヨミ”と“ナユタ”、2人の少女も手を貸すことになるのだが──。
別作品のスピンオフではありますが久々に 渡瀬 先生のテキストを読ませていただきました。
「SAO」としても全く違和感がなく、和風ファンタジーとしても楽しめる作品でアッという
間に読了しました。ぎん太 先生の描く“ナユタ”がまた印象深いビジュアルでやられます。
“ヤナギ”の孫が作ったクエストに込められた想い。それを感じ取った“ナユタ”に訪れる
心境の変化、クエストが繋ぐ“クレーヴェル”との思わぬ縁。どこか人情味あふれるのは
和風ならではの世界観ゆえか。マイペースで芯が強い彼女の魅力にぜひ触れてみてください。
SAO事件中に開始した和風VRMMOを舞台に、謎解きクエストへ挑む少女2人の物語を描きます。
(イラスト/ぎん太 先生 原案・監修/川原礫 先生)
【 http://dengekibunko.jp/newreleases/978-4-04-892487-0/ 】
《アスカ・エンパイア》のイベント「百八の怪異」、その内の1つを1週間以内にクリア
してほしい、とゲーム内で探偵業を営む“クレーヴェル”に依頼する初心者の“ヤナギ”。
彼に付き添った“コヨミ”と“ナユタ”、2人の少女も手を貸すことになるのだが──。
別作品のスピンオフではありますが久々に 渡瀬 先生のテキストを読ませていただきました。
「SAO」としても全く違和感がなく、和風ファンタジーとしても楽しめる作品でアッという
間に読了しました。ぎん太 先生の描く“ナユタ”がまた印象深いビジュアルでやられます。
“ヤナギ”の孫が作ったクエストに込められた想い。それを感じ取った“ナユタ”に訪れる
心境の変化、クエストが繋ぐ“クレーヴェル”との思わぬ縁。どこか人情味あふれるのは
和風ならではの世界観ゆえか。マイペースで芯が強い彼女の魅力にぜひ触れてみてください。
2016年11月25日
『真夜中の本屋戦争』
「HJ文庫」など作品を上梓してきた 藤春都 先生が「ホワイトブックス」より贈る新作は
美人書店員がいる本屋でバイトする大学生が直面する、本同士の平台争奪戦を描きます。
(イラスト:フカヒレ 先生)
【 http://blog.hakkoushuppan.co.jp/article/177341051.html 】
“渉”のバイト先「エキナカ書店」で時折見かける小さな黒い影。それは本に込められた
想いが具現化したゴーストの姿。戦国武将やビジネスリーダー、歌人、名探偵などなど、
自分が書かれた本を平台に置いてもらうべく、夜な夜な勝負を繰り広げるのだった──。
本好きが高じて書店員となった“紫野”にほのかな想いを抱く“渉”。面接を経て彼の
ことを同士と誤解した彼女が少しずつ打ち解けていく様子が何とも愛らしい。そんな彼も
平台争奪戦を仕切るくらい場慣れしていくのだから図太いというか順応性が高いというか。
好きな本のために何かしたい、という想いが人を、自分自身をも変えていく挿話の数々が
心に温かいものを与えてくれます。“渉”が熱く語るあの場面はまさに見どころ。そして
“紫野”が抱える問題に対して示した想いの強さと挿絵のインパクトには心奪われました。
美人書店員がいる本屋でバイトする大学生が直面する、本同士の平台争奪戦を描きます。
(イラスト:フカヒレ 先生)
【 http://blog.hakkoushuppan.co.jp/article/177341051.html 】
“渉”のバイト先「エキナカ書店」で時折見かける小さな黒い影。それは本に込められた
想いが具現化したゴーストの姿。戦国武将やビジネスリーダー、歌人、名探偵などなど、
自分が書かれた本を平台に置いてもらうべく、夜な夜な勝負を繰り広げるのだった──。
本好きが高じて書店員となった“紫野”にほのかな想いを抱く“渉”。面接を経て彼の
ことを同士と誤解した彼女が少しずつ打ち解けていく様子が何とも愛らしい。そんな彼も
平台争奪戦を仕切るくらい場慣れしていくのだから図太いというか順応性が高いというか。
好きな本のために何かしたい、という想いが人を、自分自身をも変えていく挿話の数々が
心に温かいものを与えてくれます。“渉”が熱く語るあの場面はまさに見どころ。そして
“紫野”が抱える問題に対して示した想いの強さと挿絵のインパクトには心奪われました。
2016年11月24日
『幸せ二世帯同居計画 〜妖精さんのお話〜』
五十嵐雄策 先生が贈る新作は家族がテーマのハートフル・ストーリー。家を失った兄妹が
忍び込んだ空き家・・・のはずの家に住んでいた同級生と築かれていく奇妙な縁を描きます。
(イラスト/フライ 先生)
【 http://dengekibunko.jp/newreleases/978-4-04-892469-6/ 】
「幸せ二世帯同居計画」それは“瀬尾小春”の兄が思いついた迷案。知らずに住み込んだ
同級生“成瀬莉緒”の家で、彼女に知られず三人の同居生活を続けるという案。バレそう
になっても彼女は「妖精さん」の仕業と判断するし、このまま上手くいくと思ったが──。
クラスでは人を寄せ付けない雰囲気を漂わせる美少女“莉緒”が一人で住むには広い家。
その状況に置かれた彼女の現状、それに紐づく過去が実に重い。それを「妖精さん」が
思いも寄らず救うことになる顛末に心がほっこりしますし、読み手も救われる思いです。
そこに「+1」が加わることになり、それぞれの視点で「家族」というものが何なのかを
考え、定義し直していく話運びには考えさせられるものがあります。“莉緒”が少しずつ
明るく、前向きに変化していく描写が挿絵と共に眩しく映ります。お薦めできる一冊です。
忍び込んだ空き家・・・のはずの家に住んでいた同級生と築かれていく奇妙な縁を描きます。
(イラスト/フライ 先生)
【 http://dengekibunko.jp/newreleases/978-4-04-892469-6/ 】
「幸せ二世帯同居計画」それは“瀬尾小春”の兄が思いついた迷案。知らずに住み込んだ
同級生“成瀬莉緒”の家で、彼女に知られず三人の同居生活を続けるという案。バレそう
になっても彼女は「妖精さん」の仕業と判断するし、このまま上手くいくと思ったが──。
クラスでは人を寄せ付けない雰囲気を漂わせる美少女“莉緒”が一人で住むには広い家。
その状況に置かれた彼女の現状、それに紐づく過去が実に重い。それを「妖精さん」が
思いも寄らず救うことになる顛末に心がほっこりしますし、読み手も救われる思いです。
そこに「+1」が加わることになり、それぞれの視点で「家族」というものが何なのかを
考え、定義し直していく話運びには考えさせられるものがあります。“莉緒”が少しずつ
明るく、前向きに変化していく描写が挿絵と共に眩しく映ります。お薦めできる一冊です。