2016年10月10日

『銃魔大戦 怠謀連理』

カルロ・ゼン 先生が原作・シナリオ執筆を担当されるフリーゲームをセルフ・ノベライズ。
腐敗した貴族社会の国が陥る窮地に暗躍する男と矢面に立たされる少女の生き様を描きます。
(イラスト:村 先生)

https://www.enterbrain.co.jp/product/mook/mook_bungei/213_other/15247801.html
https://gamemaga.denfaminicogamer.jp/ganma/


コモンウェルスの隣、ユニマール朝で発生した武装蜂起。貧富の差が原動力となる革命の
意志の強さを見誤った国王は落命。責任転嫁しあう貴族に業を煮やす姫“ヤーナ”が強権
を発動。その彼女に辺境伯“モーリス”は不気味に平静を装いながら接触を図るが──。

“モーリス”が食えない男と知りつつも国の窮状ゆえに登用せざるを得ない“ヤーナ”が
将としての力を発揮して場を次々とひっくり返していく気っ風のよさと、戦局を見極め
ながらゲームを楽しむかのように振舞う彼の狡猾さ。2人が魅せる駆け引きが楽しい。

各章の導入として図説を用いた戦況の要約があるため、話の流れが追いやすく読み返して
振り返りながら読むのも一興かと思います。“モーリス”の掌で踊らされる“ヤーナ”が
一矢報いるラストのやりとりがまた爽快です。共犯者となった2人の活躍をぜひご覧あれ。

posted by 秋野ソラ at 00:24 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2016年10月07日

『ネット小説家になろうクロニクル 1 立志編』

『やる気なし英雄譚』の 津田彷徨 先生が「小説家になろう」に発表していた作品の書籍化。
怪我によりサッカーへの夢破れた少年がWeb小説と出会い、小説家を目指す過程を描きます。
(イラスト/フライ 先生)

http://seikaisha.co.jp/information/2016/09/09-post-net1.html


“優弥”に薦められた小説にハマり、まだ刊行されていない続きを「Become the Novelist」
通称「ベコノベ」なる小説投稿サイトで読めることを知った“昴”はやがて自分でも小説家
を目指すように。最初から上手くいく訳もなく何度も挫折を味わう中、思わぬ手助けが──。

大阪芸術大学文芸学科第二回「ラノベ祭り」に登壇した 津田 先生による、データ解析を
重視したネット小説家になるために有用なノウハウが詰め込まれております。津田 先生、
もとい“津瀬”先生の助言を得て学業と執筆を両立していく“昴”の躍進にまずご注目。

一時は世捨て人のような顔をした“昴”が“優弥”や“由那”と協力関係を築き、プロを
目指す夢を抱いて活き活きと変化していく青春ぶりにも目が離せません。フライ 先生の
イラストもその演出に花を添えます。指南本としても有用でありながら楽しめる作品です。

posted by 秋野ソラ at 00:52 | Comment(1) | TrackBack(0) | ライトノベル

2016年10月06日

『世界の終わりの世界録<アンコール>8 慟哭の神霊』

細音啓 先生が贈る王道ファンタジー。コミックス2巻と同時刊行となる第8巻は、仲間の
行方を追う“レン”が“エリエス”と再会し、更なる世界の混乱を目の当たりにします。
(イラスト:ふゆの春秋 先生)

http://www.mediafactory.co.jp/bunkoj/book_detail/1466


極寒の冷気に晒され、人の出入りもままならない聖地カナン。精霊の声に導かれて“レン”
たちが訪れてみれば“エリエス”の傍には“ルル”や五大災が不在の今イキイキとしている
“魔王”が肩を並べるという珍しい顔合わせ。というかホントに楽しんでるよな“魔王”。

深海にある神殿に向かったという“エリーゼ”を探しに向かった“レン”たちが目にした
神性都市の記録。そこに記された精霊信仰から三種族信仰に移った、更にその先の動向を
示唆する記述が新たな謎と、“ルル”たちでも苦戦する敵との遭遇へと導いていきます。

あまりの激戦ゆえに崩落を余儀なくされる神殿から審門を使って脱出してみれば、そこは
降りしきる灰におおわれた町。灰の意味と精霊の真価を目の当たりにした“レン”が遂に
見つけた英勇の旅の先、彼独自の戦いは物語に熱量を帯びさせます。続きも楽しみです。

posted by 秋野ソラ at 00:04 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2016年10月05日

『逆転召喚2 〜裏設定まで知り尽くした異世界に学校ごと召喚されて〜』

三河ごーすと 先生が贈る、異世界召喚がもたらす人生逆転物語。第2巻は精霊の国に足を
伸ばした“湊”たちが学生らにより不穏な空気をもたらすかの国に対処する顛末を描きます。
(イラスト:シロタカ 先生)

http://dash.shueisha.co.jp/bookDetail/index/978-4-08-631144-1


“麻梨果”が吐露した心情を補うべく向かった《ガーデン》は精霊王を差し置いて“エマ”
のクラスメイトが奴隷制度を敷く国へと変貌を遂げており、またその現状を見た“エマ”も
態度によそよそしさが見られ、“湊”も問題解決に乗り出さざるを得ない状況に陥ります。

《ガーデン》を治めるはずの“精霊王”は洗脳されているワケでもなく、では誰が現状を
作り上げたのかを突き詰めるうちにあらわとなる、ある人物の闇のような感情。その感情に
よって苦しめられたことを明らかにした“エマ”の気持ちに胸が締め付けられる思いです。

参加者の意思統一が鍵を握るアンティゲーム「民主主義戦争ゲーム」でクラスメイトらと
対決する“エマ”を後押しし、黒幕となる人物を完膚なきまでに叩き潰す“湊”の容赦の
無さに爽快感を覚えました。見返した口絵が魅せる“エマ”の笑顔が実に素敵に映りました。

posted by 秋野ソラ at 00:03 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2016年10月04日

『弱キャラ友崎くん Lv.2』

屋久ユウキ 先生が贈る人生攻略ラブコメ。第2巻は生徒会選挙で“葵”に挑む“みなみ”
を支援することになった“文也”が指導を受けながら2人の過去と人生観に触れていきます。
(イラスト:フライ 先生)

http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784094516319


妹や“水沢”から「脱オタ目指して頑張ってるの?」と指摘を受ける中、“葵”との会議
で徐々にハードルが上がっていく課題に挑む“文也”。いつの間にか訪れていた自身の
変化に気づいた時の達成感。それをふとした情景に込めて描くあたりが等身大で実に良い。

下馬評では“葵”の信任投票に近いとされる生徒会選挙。そこに立候補した“みなみ”が
示した「葵に勝ちたい」という思い。万年2位の立場でもがく彼女に共感した“文也”が
人生というゲームでも“葵”に勝ちたいとあれこれ仕掛ける、彼らしい姿勢が見どころ。

「集団にいる中で自分の提案をとおす」という課題が要所で活きて、道に迷う“みなみ”
を結果的に軌道修正できたあのシーン、一番になれない彼女を励ますあの一言が友情の力
を実感させてくれます。フライ 先生の挿絵も良かった。次巻のレベルアップも期待です。

posted by 秋野ソラ at 00:53 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル