2016年02月29日

『無法の弁護人 法廷のペテン師』

新レーベル「NOVEL 0」より 師走トオル 先生が贈るのは陰謀と策略だらけの究極の法廷劇。
新人弁護士が藁にも縋る思いで頼った「悪魔の弁護人」が法廷で無法と無双を尽くします。
(イラスト:toi8 先生)

http://novel-zero.com/issued/2016/02/02.html


車上荒らしの嫌疑で起訴され裁判員裁判を受ける女性“栗田”。彼女を擁護するのは新人
の弁護士“本多”。しかし状況証拠などから不利な局面を覆すのは難しく、頭を悩ませる
彼は事務所の所長からある人物、「悪魔の弁護人」の助力を請えと薦められるのだが──。

『タクティカル・ジャッジメント』を読んで育った身としてはまさに「待ってました!」
と言わんばかりのバディもの。嘘を見抜ける超能力がある、と自称する“阿武隈”の言動
によって翻弄される法廷の人々を見ると、当事者からすれば迷惑でしょうが安心します。

「冤罪の嫌疑を晴らしたい」その一心で自分の正義を貫こうとする“本多”が、法の穴を
すり抜けてでも貪欲に勝ちを掴みにいく“阿武隈”と組まざるを得ない場に臨むジレンマ
ですとか、負けて悔しがる“井上”検事などをもっと見たいので続きをよろしくなのです。

posted by 秋野ソラ at 00:14 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2016年02月26日

『はたらく魔王さま!15』

和ヶ原聡司 先生が贈る魔王と勇者の庶民派ファンタジー。第15巻は迫るクリスマスの直前、
気持ちが浮つく“千穂”たちを他所に“真奥”と“恵美”へ一つの現実が突きつけられます。
(イラスト/029 先生)

http://dengekibunko.jp/newreleases/978-4-04-865750-1/


“千穂”と“梨香”。“アラス・ラムス”も含めてと一緒にクリスマスを楽しみたいと願う
彼女たち。その一方で、いまの日本での生活がいつまで続けられるのだろう、という不安も
入り混じる気持ちが現実のものとなったとき、失意の底に陥る彼女らはどうするのか──。

ということで、そもそも何でそんなことになってしまったのかを遡って追っていく話運び。
“恵美”のことを思う気持ちもあるとは思いますが、すっかり日本での生活に馴染みまくる
“エメラダ”の言動が印象的。そんな微笑ましい様子の彼女にも驚きの真実が告げられます。

てっきり「冒頭だけ読んで16巻を読み進めても問題ないのか」と思っていたらそうは問屋が
卸さない“千穂”の行動力に、改めて彼女がこの物語を動かしていく鍵になる予兆を感じ
させてくれます。というかお気軽だなぁ、異世界。“真奥”の決意が叶うことを願います。

posted by 秋野ソラ at 00:42 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2016年02月25日

『俺を好きなのはお前だけかよ』

駱駝 先生の「第22回電撃小説大賞<金賞>」受賞作。恋を意識する高校男子がその相手
から親友への恋愛相談を持ちかけられ、更に望まない相手から求愛されるラブコメです。
(イラスト/ブリキ 先生)

http://dengekibunko.jp/newreleases/978-4-04-865747-1/


何事も中庸なジョーロこと“如月雨露”は、幼なじみのひまわりこと“日向葵”やコスモス
先輩こと“秋野桜”とあだ名で呼び合える仲。でも彼を好きなのは地味な少女パンジーこと
“三色院菫子”という因果な関係で報われない中、さらに泣きたくなる事実が判明し──。

“雨露”が“葵”や“桜”から同じような振りを繰り返し受ける、いわゆる天丼な状況が
苦笑いと哀愁を誘います。彼の親友、サンちゃんこと“大賀太陽”が迎えたあの夏の日。
彼ら彼女らがこの物語を形作るきっかけがそこにある、という仕掛けにまず驚かされます。

やがて話がとんでもない方向へ向かっていく所で、“雨露”をストーキングするほど好き
だという“菫子”が鍵を握りまくる話運びには脱帽せざるを得ません。彼女の「意地悪」
から逃れられない意味も納得。一筋縄ではいかない二人の関係がどう続くのか注目です。

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2016年02月24日

『ヴァルハラの晩ご飯 〜イノシシとドラゴンの串料理(ブロシェット)〜』

三鏡一敏 先生の「第22回電撃小説大賞<金賞>」受賞作。一日一回生き返る能力を持ち、
しゃべることのできるイノシシが神界の危機を救う「やわらか神話」ファンタジーです。
(イラスト/ファルまろ 先生)

http://dengekibunko.jp/newreleases/978-4-04-865752-5/


エインヘリヤル。死して英雄として神界に迎えられた者たちも20万人に迫ると問題となる
のが食糧。ヴァルハラキッチンに勤める煤け色のイノシシ“セイ”は、夜の間は中身が
減ることのない特別な鍋の食材となるため、体と命を投げ打つ日々を送るのですが──。

北欧神話で見かける名前がそこかしこに出てくる本作。他にも独自の能力を持つ“セイ”
が戦乙女たちや女神たちに気に入られていい思いをするなど、責任重大な彼の背景を払拭
するかのような楽しい日々の描写に和まされます。ファルまろ 先生の絵がまた可愛らしい。

やがて神界のナンバー2でもある“ロキ”ともイタズラ仲間とも言える懇意の仲になった
頃に直面する神界の危機に意外な形で関与することになる“セイ”の頑張りにぜひご注目
いただきたいところ。恋する女の子たちの今後も見ておきたいものですが、如何ですかね。

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2016年02月23日

『ただ、それだけでよかったんです』

松村涼哉 先生の「第22回電撃小説大賞<大賞>」受賞作。ある中学校で発生した男子生徒
の自殺を機に次々と明らかとなる特異な人間関係、そして予想外の真実を描いていきます。
(イラスト/竹岡美穂 先生)

http://dengekibunko.jp/newreleases/978-4-04-865762-4/


文武両道、容姿端麗の弟“昌也”が突然の自殺。級友の“拓”を悪魔だと言及した真意と
死の謎を確かめるべく独自調査を開始した“香苗”は胡散臭い人や事実に翻弄され、頭を
悩ませるばかり。そこで学校で行われている「人間力テスト」にまず着目するのだが──。

生徒同士で互いの性格を点数化するという「人間力テスト」。“昌也”はそのテストでも
優秀な成績を修める一方、“拓”は底辺に近い位置。その悪魔が“昌也”を含めた4人を
いじめていたという構図に疑問を抱いた“香苗”が明かす衝撃の真実に驚かされるばかり。

学校内だけでなく世間からも糾弾される“拓”がそれでもなお推し進める「革命」とは、
「ただ、それだけでよかった」と望んだものは何か。全てを打ち明け、流す涙を見て彼の
幸せを願わずにはいられません。ライトノベルの懐の深さを見せつけられた作品です。

posted by 秋野ソラ at 01:25 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル