『カレントテイル』から久しぶりの上梓となる 弥生志郎 先生の新作は、一人の体に複数の
人格が生まれる現代病をテーマに、とある兄と妹たちの繊細な機微を描く青春群像劇です。
(イラスト:高野音彦 先生)
【 http://www.mediafactory.co.jp/bunkoj/book_detail/1352 】
家庭的で控えめな“藍里”、走ることが好きで活発な“茜”、孤独にロックを愛する“蘭香”。
〈シノニム〉により3人の人格をもつ妹たちと、時折「誰か」を当てる「かごめゲーム」に
興じる“統哉”が突如、妹からキスをされる。想いを告げたのが「誰か」も分からずに──。
主人格が心の傷を癒すために別人格を用意するのが〈シノニム〉なら別人格を必要としない
くらい主人格の心の傷が癒えたらどうなるか。個性的な人格の妹たちが、自分たちのしたい
こと、何よりも主人格のことを想って精一杯臨んでいく様子がとてもまぶしくて、切なくて。
「プロローグ」から「エピローグ」へ向かうまでの間に意外性十分な話の切り返しもあり、
読了後も実に良い余韻が残るだと感じました。久しぶりに拝見した 高野 先生のイラストも
作品の雰囲気に合っていて申し分ないと思います。新作の中でもオススメできる一冊かと。
2015年08月31日
2015年08月30日
『掟上今日子の挑戦状』
10月より連続TVドラマ化が決定している、西尾維新 先生が贈るタイムリミットミステリー。
第3巻は2014年、2015年の雑誌「メフィスト」に掲載された小編3編を収録しております。
(イラスト:VOFAN 先生)
【 http://kodansha-box.jp/topics/nishio/okitegami/ 】
「〜アリバイ証言」は疎遠な友人の感電死を最初に目撃した“鯨井”がアリバイを作るため
“今日子”をダシにした、といういかにも第一発見者が怪しい状況を彼女がどう見るのか。
興味深いオチを魅せてくれたと共に“肘折”警部にはご苦労さまと思わずにはいられない。
「〜密室談義」はアパレルショップ内の試着室にて発生した密室殺人の話。事件を担当する
“遠浅”警部を“今日子”が捜査協力する、というのがポイント。お金に関してはシビアな
彼女に頼らざるを得ない警部の苦労に思わず哀愁が・・・って、ウチそれしか言ってないな。
「〜暗号表」は人脈開発会社の社長“結納坂”が副社長の不正行為を見逃せず殺害に及ぶ話。
副社長が残したダイイング・メッセージの意図を汲み取り、「いただけない話」と判断した
“今日子”の筋を通す名推理ぶりが光ります。切なさあふれる友情の顛末でもありました。
第3巻は2014年、2015年の雑誌「メフィスト」に掲載された小編3編を収録しております。
(イラスト:VOFAN 先生)
【 http://kodansha-box.jp/topics/nishio/okitegami/ 】
「〜アリバイ証言」は疎遠な友人の感電死を最初に目撃した“鯨井”がアリバイを作るため
“今日子”をダシにした、といういかにも第一発見者が怪しい状況を彼女がどう見るのか。
興味深いオチを魅せてくれたと共に“肘折”警部にはご苦労さまと思わずにはいられない。
「〜密室談義」はアパレルショップ内の試着室にて発生した密室殺人の話。事件を担当する
“遠浅”警部を“今日子”が捜査協力する、というのがポイント。お金に関してはシビアな
彼女に頼らざるを得ない警部の苦労に思わず哀愁が・・・って、ウチそれしか言ってないな。
「〜暗号表」は人脈開発会社の社長“結納坂”が副社長の不正行為を見逃せず殺害に及ぶ話。
副社長が残したダイイング・メッセージの意図を汲み取り、「いただけない話」と判断した
“今日子”の筋を通す名推理ぶりが光ります。切なさあふれる友情の顛末でもありました。
2015年08月29日
『七星のスバル』
田尾典丈 先生が贈る新作は、ある事件を境に縁を断ったMMORPGの伝説のパーティメンバー
が、現実とMMORPGの世界で奇しくも再会していく革新的青春オンライン・ストーリーです。
(イラスト:ぶーた 先生)
【 http://sol-comics.shogakukan.co.jp/solc_dtl?isbn=9784094515664 】
闘・魔・心・変・夢・天。最初に割り振られるセンスをそれぞれ極めたMMORPGのプレイヤー
6人が最強の敵に挑みゲーム内と現実で死者を出した事件を機にゲームを止めた“陽翔”。
6年が経過したMMORPGの世界で、死んだはずの“旭姫”と出会う所から物語は始まる──。
元々は《ユニオン》という名のMMORPGが検証の末《リユニオン》と改めて再出発を図る間、
小学生の頃に極めたセンスは衰え、培った絆も変わってしまって・・・と葛藤とやるせなさが
心中渦巻く中で、何一つ変化のない“旭姫”の言動に“陽翔”が戸惑わないワケがない。
“陽翔”が「約束」を思い出すまでのもどかしさ、“咲月”が恋敵の再来を素直に喜べない
心境、そして何より“旭姫”が持つ能力や存在自体の謎など興味を惹く要素を読みやすく
繋げた構成が素晴らしい。彼らは再び伝説となれるか、先が楽しみなシリーズの登場です。
が、現実とMMORPGの世界で奇しくも再会していく革新的青春オンライン・ストーリーです。
(イラスト:ぶーた 先生)
【 http://sol-comics.shogakukan.co.jp/solc_dtl?isbn=9784094515664 】
闘・魔・心・変・夢・天。最初に割り振られるセンスをそれぞれ極めたMMORPGのプレイヤー
6人が最強の敵に挑みゲーム内と現実で死者を出した事件を機にゲームを止めた“陽翔”。
6年が経過したMMORPGの世界で、死んだはずの“旭姫”と出会う所から物語は始まる──。
元々は《ユニオン》という名のMMORPGが検証の末《リユニオン》と改めて再出発を図る間、
小学生の頃に極めたセンスは衰え、培った絆も変わってしまって・・・と葛藤とやるせなさが
心中渦巻く中で、何一つ変化のない“旭姫”の言動に“陽翔”が戸惑わないワケがない。
“陽翔”が「約束」を思い出すまでのもどかしさ、“咲月”が恋敵の再来を素直に喜べない
心境、そして何より“旭姫”が持つ能力や存在自体の謎など興味を惹く要素を読みやすく
繋げた構成が素晴らしい。彼らは再び伝説となれるか、先が楽しみなシリーズの登場です。
2015年08月28日
『聖剣士VSブラック企業 〜ラノベ作家、社畜エルフを救う!?〜』
弘前龍 先生が贈る新作は社畜系ブラックコメディファンタジー。温厚で勤勉なエルフの国
で問題視されている「ブラック企業」の存在を駆逐し続ける謎の聖剣士の活躍を描きます。
(イラスト/100円ロッカー 先生)
【 http://dengekibunko.dengeki.com/newreleases/978-4-04-865312-1/ 】
本作は異世界ラノベレーベル「雷撃文庫」の編集部も巻き込んでの物語、となりますが
あとがきの「ある一節」がとても強烈な印象を残してきます。担当編集さんの大変さを
垣間見ることがあとがきだけで出来ます。・・・ホントにお疲れさまです、ということで。
本作は営業目標達成を強いられる“カレナ”が布団の押し売りに行った先で、今の生活を
続けることを問題視する指摘を受けて少しずつ変わっていく様子と、その契機を与えた
“マゴル”が「ブラック企業」を許さない姿勢を貫いていく様子がポイントとなります。
作中にも出てくるような理不尽すぎる事例が現代日本にはまだまだ数多くあると思います。
その中で悲しき企業戦士は今日も社畜として朝早くから夜遅くまで仕事に従事しています。
ブラックな状況を問答無用で打破してくれる聖剣士の登場が羨ましくて仕方がありません。
で問題視されている「ブラック企業」の存在を駆逐し続ける謎の聖剣士の活躍を描きます。
(イラスト/100円ロッカー 先生)
【 http://dengekibunko.dengeki.com/newreleases/978-4-04-865312-1/ 】
本作は異世界ラノベレーベル「雷撃文庫」の編集部も巻き込んでの物語、となりますが
あとがきの「ある一節」がとても強烈な印象を残してきます。担当編集さんの大変さを
垣間見ることがあとがきだけで出来ます。・・・ホントにお疲れさまです、ということで。
本作は営業目標達成を強いられる“カレナ”が布団の押し売りに行った先で、今の生活を
続けることを問題視する指摘を受けて少しずつ変わっていく様子と、その契機を与えた
“マゴル”が「ブラック企業」を許さない姿勢を貫いていく様子がポイントとなります。
作中にも出てくるような理不尽すぎる事例が現代日本にはまだまだ数多くあると思います。
その中で悲しき企業戦士は今日も社畜として朝早くから夜遅くまで仕事に従事しています。
ブラックな状況を問答無用で打破してくれる聖剣士の登場が羨ましくて仕方がありません。
2015年08月27日
『美少女とは、斬る事と見つけたり』
入間人間 先生が贈る新作は本格異能バトル。人を殺したいと願う美少女が「ある事件」を
契機に両腕が使えなくなる反面「あること」が出来ると知り、夜ごとに刀を振るいます。
(イラスト/珈琲貴族 先生)
【 http://dengekibunko.dengeki.com/newreleases/978-4-04-865264-3/ 】
日常生活において健常者であれば手で行う全てを足でこなす“透”。想像し難い振舞いを
見せる彼女は傷つけた物は透明になるという利点を活かし口に加えた刀で凶行に及びます。
その姿は不可解でもあり神秘的でもあり、珈琲貴族 先生の挿絵がそれを強く印象づけます。
超能力を持つ姉の“陽”のことばかり考える“明”はそれをおくびにも出さず、通う学校で
生徒会長を務める優等生。その姉へ向けられた“透”の刀を受けたことで透明人間となって
しまったところから彼の、そして彼女の奇妙な縁がつながり、話が動き出していきます。
街に居座り狼藉をはたらく「超能力者」たちを斬る、それを邪魔する者をも斬る“透”に
復讐の刃を向けるかも知れない“明”の存在がどんな刺激を与えるのか。そんな二人の
思惑を遥かに上回る、置かれた現状のイカレた様子が物語にどう影響するのか注目です。
契機に両腕が使えなくなる反面「あること」が出来ると知り、夜ごとに刀を振るいます。
(イラスト/珈琲貴族 先生)
【 http://dengekibunko.dengeki.com/newreleases/978-4-04-865264-3/ 】
日常生活において健常者であれば手で行う全てを足でこなす“透”。想像し難い振舞いを
見せる彼女は傷つけた物は透明になるという利点を活かし口に加えた刀で凶行に及びます。
その姿は不可解でもあり神秘的でもあり、珈琲貴族 先生の挿絵がそれを強く印象づけます。
超能力を持つ姉の“陽”のことばかり考える“明”はそれをおくびにも出さず、通う学校で
生徒会長を務める優等生。その姉へ向けられた“透”の刀を受けたことで透明人間となって
しまったところから彼の、そして彼女の奇妙な縁がつながり、話が動き出していきます。
街に居座り狼藉をはたらく「超能力者」たちを斬る、それを邪魔する者をも斬る“透”に
復讐の刃を向けるかも知れない“明”の存在がどんな刺激を与えるのか。そんな二人の
思惑を遥かに上回る、置かれた現状のイカレた様子が物語にどう影響するのか注目です。