三上延 先生が贈るビブリオミステリ。第6巻はかつて“栞子”に怪我を負わせた“田中”
が再来、しかも別の『晩年』を探す依頼を提示してきて“大輔”共々困惑が隠せません。
(イラスト:越島はぐ 先生)
【 http://mwbunko.com/product/2014/12_01_isbn.html 】
「祖父が持っていた太宰治の『晩年』は“栞子”のものとは別。それを探し出してほしい」
という何とも図々しい“田中”からの依頼。仮に居たとしてその人に危害が加えられるかも
と心配する彼女はその依頼を受けることになります。遂に恋人となった“大輔”と共に。
外野からの追求に赤面する“栞子”の様子など、それはそれで見ものなのですが『晩年』の
持ち主へと近づいていくにつれて“栞子”や“大輔”の親、更にその親の代が思い掛けない
縁で繋がっていることが判明する、という大変ショッキングな展開を魅せてくれます。
「アンカット」という本があることも、本作を読まなければ知ることも無かったと思いつつ
稀覯本が人の生き様を狂わせる物悲しさを味わわせてもらいました。被害甚大な“大輔”の
もとを訪れた“智恵子”の意図に気づいた彼がどう立ち回ってくるか注目しておきます。