2014年09月10日

『いなくなれ、群青』

失くしたものを見つけるまで出ることのできない、捨てられた人々の島。階段島の物語。
新レーベル「新潮文庫nex」から1冊は読もうと思い、河野裕 先生の本作を選びました。
(イラスト:越島はぐ 先生)

http://shinchobunko-nex.jp/books/180004.html


何に捨てられたのか、何を失くしたのかも分からず。自分の意思は踏みにじられつつも
それ以外は不自由なく階段島での日々を過ごす“七草”。見た事のない魔女が管理する
その島にかつての級友“真辺由宇”が訪れることで状況は少しずつ変化していく──。

序盤は階段島という場所の特異性を示しつつ、“真辺”という異端分子が紛れ込むことで
穏やかに過ごしてきた“七草”の心が少しずつざわついていく機微を描いていきます。
“七草”の本心は伏せたままですので中盤くらいでもフワッとしたままに話は進みます。

“相原大地”という最年少の来訪者が現れたことで決意の契機を得た“七草”が明らかに
する階段島の秘密、自分たちの存在意義、そして“七草”自身の想い。タイトルが示す
その意味を知り、少年少女の繊細さを知る物語だったのだと驚愕の念を覚えた次第です。

posted by 秋野ソラ at 00:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル