2014年02月28日

『王手桂香取り!』

青葉優一 先生の「第20回電撃小説大賞・銀賞」受賞作。将棋クラブに所属する少年の前に
現れた美少女、将棋の駒の化身たちと憧れの主将のために頑張る将棋青春ストーリーです。
(イラスト/ヤス 先生)

http://dengekibunko.dengeki.com/newreleases/978-4-04-866317-5/
http://asciimw.jp/award/taisyo/20th/works/oute/index.html


最善手。どんな局面においてもその手を打ち続けていれば必ず勝てるというもの。将棋の
強さはまだまだな“あゆむ”が駒娘“香車”“桂馬”“歩”と出会い、鼻持ちならない
上段者を打ち負かす目的でそれを目の当たりにした所から物語は静かに動き始めます。

駒の姿に戻って駒娘から助言を得ながら指すこともできるが、そんなことは卑怯以外の
何物でもない。ということで実直に彼女たちから学んで強くなろうとする姿、将棋クラブ
の主将“桂香”のためにいい所を見せようとする気概が“あゆむ”の好感を呼びます。

脳内に将棋盤が描けるくらい通じていればまた違った楽しみ方ができるとは思いますが
そうでなくとも自己研鑽して強い敵と対峙していく真剣勝負は十分に伝わるものがある
かと思います。真の将棋神に悩まされそうな“あゆむ”に未来があるのか気になります。

posted by 秋野ソラ at 00:19 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2014年02月27日

『水木しげ子さんと結ばれました』

真坂マサル 先生の「第20回電撃小説大賞・20回記念特別賞」受賞作。ある事件を契機に
人と人とを結ぶ赤い糸が見えるようになった少年がその意味を辿っていく物語を拝読です。
(イラスト/生煮え 先生)

http://dengekibunko.dengeki.com/newreleases/978-4-04-866313-7/
http://asciimw.jp/award/taisyo/20th/works/shigeko/index.html


恋が生まれる赤い糸であればどんなに良かったか。〈見知らぬ人〉に注がれた血によって
“朝生”少年が見えるようになったそれはいずれ殺し合う運命を示す呪いが如きもの。
しかも自分の小指が繋がる先に居たのは美しくも「死」に囚われた感のある“しげ子”。

家の事情により人の悪意に幾度と無く晒されたことがある“朝生”でも、赤い糸が招く
残酷なまでの殺意には寒気を覚えることは避けられず。しかも“しげ子”が付いてくる。
更には姉“冬羽”が彼女のことをいぶかしむ言動を見せ、不安が募っていきます。

赤い糸とは何なのか、“しげ子”を殺すことになるのか、あるいはその逆か。謎と狂気に
向き合った“朝生”が数々の人の悪意に触れ、どんな結末を選び、あるいは選ばされて
いくのかを怖いもの見たさで読ませていく展開が見どころです。オススメしておきます。

posted by 秋野ソラ at 00:16 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2014年02月26日

『ゼロから始める魔法の書』

虎走かける 先生の「第20回電撃小説大賞・大賞」受賞作。世界を滅ぼしかねない魔法書
「ゼロの書」を探す魔女と巻き込まれた半獣半人の傭兵が織り成すファンタジー作品です。
(イラスト/しずまよしのり 先生)

http://dengekibunko.dengeki.com/newreleases/978-4-04-866312-0/
http://asciimw.jp/award/taisyo/20th/works/zero/index.html


本作を含め「電撃文庫」の「「第20回電撃小説大賞」受賞5作品を読ませて頂きました。
結果としてこの大賞受賞作が一番推せる内容だと思います。あとがきでも触れられている
王道展開を突っ走る剣と魔法のファンタジー、という展開が素直に頭の中に入ってきます。

人の世に触れることなく隠遁生活を送ってきた魔女“ゼロ”のどこかズレた感覚と、魔女
嫌いなのに何の因果か共に旅をすることになった“傭兵”が保とうとする彼女との間隔が
絶妙な雰囲気を醸し出しています。“ゼロ”の言い回しがまた味があって大変良いです。

盗まれたとされる魔法書を辿る鍵となる“十三番”なる人物がこれまた曲者で、二人とも
彼の手のひらで踊らされる形となりますが、世間を知らないだけで魔法に関しては引けを
とらない“ゼロ”が仕掛けた思わぬ秘策が伏線して効いてくる展開も見所かと思います。

posted by 秋野ソラ at 00:22 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2014年02月25日

『マグダラで眠れV』

支倉凍砂 先生のファンタジー小説。 第5巻は起死回生の一手でカザンの町を脱出し、
ニールベルクの港町へと落ち延びた“クースラ”たちが新たな難問を突きつけられます。
(イラスト/鍋島テツヒロ 先生)

http://dengekibunko.dengeki.com/newreleases/978-4-04-866309-0/


鐘を造る。職人ですら長年の経験をもってしても音と強度のバランスを取るのが難しい
とされるその行為。英雄のような期待にも後押しされ、敗残兵の士気を上げるためとは
言え、一歩間違えれば死は免れない厄介な立場へと白羽の矢が立った“クースラ”たち。

同じ錬金術師だから、ということもあるのでしょうけど“ウェランド”が“クースラ”の
ことをよく見ていることが言動の端々から感じられます。だからこそ、変化を察知して
それを告げた決定的なあの言葉が彼の心を揺さぶるのに十分なワケで。

錬金術師として生きてきた“クースラ”を受け止め、立ち直らせたのは“フェネシス”
のマグダラ。欲しいものには手を伸ばすしたたかさを得た彼女とは対象的に胸の奥底
ではすっかり懐柔された感のある彼。北の地を目指す新たな旅が気になるところです。

posted by 秋野ソラ at 00:14 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2014年02月24日

『アクセル・ワールド16 -白雪姫の微睡-』

川原礫 先生が贈る大人気シリーズ第16巻。ISSキット本体との激闘、《災禍の鎧》マークII
との死闘、そして「加速研究会」との対峙。問題山積の状況に一つの区切りが生まれます。
(イラスト/HIMA 先生)

http://dengekibunko.dengeki.com/newreleases/978-4-04-866320-5/


《災禍の鎧》はまだ引っ張りますねー。「加速研究会」の隠れ蓑が満を持しての登場との
ことで敵も増えますし。反則級の相手を前に善戦した“ハルユキ”を見て二代目・赤の王
としての立場を見直す契機を得た“ニコ”がどう成長するのか見ものです。

“ハルユキ”のことを「しもべ」だの「無礼者!!」だの叱責する“メタトロン”が時折り
見せる、彼を心許している雰囲気がたまりません。何この可愛いエネミー。《災禍の鎧》
マークII との戦いを経てからのラストの展開は彼と共に喜びを分かち合いたい程でした。

その“メタトロン”から語られた「ブレイン・バースト」とは異なるフィールドの存在、
「帝城」という存在の特異性とその先にあるもの。“ハルユキ”自身のみならず世界観
にも更なる広がりを見せる物語がどこまで発散していくか期待と不安で胸いっぱいです。

posted by 秋野ソラ at 00:31 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル