2013年09月25日

『安達としまむら2』

入間人間 先生が贈る「ガール・ミーツ・ガール」ストーリー。第2巻はクリスマスを控え
いやが上にも気持ちの高まる“安達”とプレゼント選びに苦心する“しまむら”を描きます。
(イラスト/のん 先生)

http://dengekibunko.dengeki.com/newreleases/978-4-04-891960-9/


のん 先生のイラストも相まってソフトな百合小説として実に良い雰囲気を醸し出している
と思います。冬になって体育館の二階にいるのも厳しい寒さの中、二人きりの時間が少なく
なったと感じる“安達”の気持ちが空回り気味に高まっていくのが微笑ましいところで。

一方の“しまむら”といえば、そんな内心が前のめりな“安達”の様子をみていぶかしむ
くらいで。ただ、“安達”のことを一番に感じているのは確かなようです。互いがもつ
「一番」という認識の違いが今後、悪い方向へと繋がらないか気になるところです。

今回“安達”の母親が登場してきましたが、その中で“しまむら”が示した距離感の見解
が興味深いと感じると共に、“安達”の人格形成に大きく作用したんだろうなと思ったり。
あと、“ヤシロ”は物語にどう作用してくるんですかね、ということで次巻待ちです。

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2013年09月24日

『鮎原夜波はよく濡れる』

『C3 -シーキューブ-』を完結させた 水瀬葉月 先生が次に贈るのは濡れ透けアクション。
水に沈んだ世界に迷い込んだ少年と水精霊の戦士として戦う少女との関わりを描きます。
(イラスト/白井鋭利 先生)

http://dengekibunko.dengeki.com/newreleases/978-4-04-891915-9/


「タイトルが通らない可能性が・・・」とか編集部内で議論を呼ばせるあたりがまずステキ。
エログロ描写に特徴のある作者ですので、そこかしこに見られる濡れ透け表現の艶かしさ
については自信を持って「いいね!」とお伝えしたいところです。流石、の一言です。

「なぜ濡れ透けにならないといけないのか」については「ウンディーネの戦士」として水に
濡れれば濡れるほど力が得られるから、なワケですがそんな状態になっても頓着しないのが
“夜波”という少女。その頓着しない理由、というのが話を進めていく上で鍵となります。

《水の中のあの人》に助けられた“陽平”が、彼女の生き様を見て一念発起するあたりは
格好良いと思うと同時に自己犠牲が過ぎるコンビだな、と思ったりするのですが。彼の妹
という要素も絡んでくる辺りの引きが気を持たせる展開で続きが気になるというものです。

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2013年09月23日

『ロストウィッチ・ブライドマジカル』

「魔法の国」という異世界で起きた「女王のための統合戦争」に巻き込まれた少女たちが
魔女となって殺しあう。藤原祐 先生が贈る新作にして幻想夜話、読ませていただきました。
(原案協力・イラスト/椋本夏夜 先生)

http://dengekibunko.dengeki.com/newreleases/978-4-04-891943-2/


魔法少女とは何故こんなにも不遇なのか。何故に悲壮な運命を背負って臨まねばならない
のか。異世界の都合で代理戦争をする“水奈”たちの姿を見て、また昨今の魔法少女事情を
鑑みてつくづくそう思います。あんなほわほわした“水奈”が・・・と思うともうね。

魔女の中にも考え方は色々あって、また魔女になりかけの人にも考えはあって、互いの都合
と葛藤が演出の上で上手く盛り込まれているな、と感じられるのはこのコンビならでは、
という印象を受けました。コミカルな場面との対比がまた絶妙と言うしかありません。

人を殺めたか否か、という枠を飛び越える思いもよらぬ伏兵、“水奈”や“蓮”の因縁、
そして“人魚”という存在。「罪」と「奇跡」が織り成す物語とはよく言ったものです。
実に好調な滑り出しを見せる新シリーズの登場を喜ばしく思います。次巻も楽しみです。

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2013年09月22日

『クトゥルフ神話TRPGリプレイ るるいえとらべらーず』

内山靖二郎 先生/アーカム・メンバーズが贈るクトゥルフ神話TRPGリプレイ、第5巻は
邪神崇拝者の影を追って寝台特急の旅に出るキャンペーン。ドラマCDも付いています。
(イラスト:狐印 先生)

http://ebten.jp/eb-store/p/9784047289512/


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  KP:さて、ではDEX1の番だな。
  辰巳:ちょっと待て! まだ、天狗さらいは動いているのか!?
  KP:そりゃあ、そうでしょう。冷気と共に、雪にまみれた何者かがこちら側に現れた
     ・・・・・・その姿は間違いない。あの冷酷な殺人機械。再び門を越えて、恐怖は
     帰ってきたのだっ!
  全員:えぇ〜〜〜〜〜っ!?
  KP:そして、いままで天狗さらいに対して〈正気度〉ロールはしてこなかったけど、
     絶望がよみがえってきたことのショックで全員〈正気度〉ロールをしてくれっ!
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それはPL諸氏も睨みたくなるってもんですよ。鬼か! って思いましたもの、読んでいて。
“さやか”と“睦”の頑張りすらフイにするKPの非情さを見ました。あの窮地を打破できた
のもダイス目が良かったという運の賜物だけでバッドエンド直行も已む無い展開でした。

九死に一生を得た“さやか”たちではありましたが、第1話から「ルルイエ異本」の研究
に失敗し続けているという結果がキャンペーン失敗を予感せざるを得ない展開で、第3話
は全滅必至の可能性もあっただけにあの結末に辿り着けたのは奇跡と言う他にありません。

注目なのは愛すべき残念キャラ“月森”でしょうか。“佐々原”も入れ込んでいただけに
色々と思うところが出ていて好演だったと思います。それにして“蘭弗”叔父さんは何を
やらかそうとしていたのか。そろそろ探しに行くキャンペーンもアリかと思った次第です。



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  ドラマCD
  オリジナルエピソード「るるいえ・うぃっち・ぷろじぇくと」「るるいえ堂改造計画」

  〈キャスト〉
    樋口さやか : 福圓美里
    日野睦   : 高垣彩陽
    辰巳源吾郎 : 大林隆介
    佐々原環  : 江口拓也
    安針塚京  : 村川梨衣
    城ヶ崎武志 : 矢野正明

  〈スタッフ〉
    脚本    : 田沢大典
    音楽    : 三澤康広
    音響監督  : 郷 文裕貴
    録音    : 熊倉亨
    効果    : サウンドボックス
    音響制作  : グルーヴ
                                 ※敬称略
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「るるいえ・うぃっち・ぷろじぇくと」はキャンプ場で発生したショゴス細胞に関する
事件の再調査を“京”から依頼され、焼け野原となったかの地に再び足を踏み入れる、
というお話。宇宙的恐怖がもたらすパニックホラーが壮絶な結末へと誘ってくれます。

その雰囲気を払拭するかのように陽気でメタな発言も飛び出す「るるいえ堂改造計画」は
宇宙的恐怖を呼び込む「るるいえ堂」をイメージチェンジするために案を出し、実行する
までを描くコメディタッチのお話。結論は・・・推して知るべしと言いますか(苦笑)。

音響と効果が入ることでキャンプ場の恐怖感が一層際立ったとまず感じました。PCにも
声がつくとこんな感じなんだな、という雰囲気が伝わってきて流石だなと思いました。
“京”が実にいい雰囲気を出していました。声の力は偉大だとつくづく思います。

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2013年09月21日

『RPF レッドドラゴン V 第五夜 契りの城』

虚淵玄、奈須きのこ、紅玉いづき、しまどりる、成田良悟。五人のためのゲーム、六夜限り
の物語(フィクション)。その五夜を綴る 三田誠 先生の一冊、読ませていただきました。
(イラスト:しまどりる 先生)

http://sai-zen-sen.jp/publications/reddragon/
http://sai-zen-sen.jp/special/reddragon/


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  FM:で、四日目の残りですが──まず婁さんが進軍(地図上のサイコロを動かす)。
  婁:よろしくお願いします。
  忌ブキ:詳細が説明されないまま、ただすごいことになってることだけが伝わって
      くるんですけど(笑)。
  スアロー:早くワールド・ニル・カムイ・ニュースとか流してよ(笑)。
  忌ブキ:ニル・カムイ新聞を早く! 速報で!(笑)。
  FM:あれもシュカと一緒に編集部が滅びたんじゃないかなあ。ともあれ婁さんは
     移動だけならイベントはなく、革命軍に移ります。
  禍グラバ:静かなる異常・・・・・・!
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同じ卓に居るはずなのに、何か違うゲームが行われている。そんな雰囲気を醸し出す第五夜
の進行は“天凌府君”となった“婁震戒”が死者の王として「ニル・カムイ」を脅かす所
から始まります。後に焦り故の行動であることが分かって興味深いのが“婁”さんです。

もう一人、忘れてはいけないのが「黒りんご」もとい“エィハ”。“喰らい姫”の指摘と
後押しを経て知った「赤の竜」という存在の本質、そして彼女が選んだ「順番」。こちら
も他の面々とは違った視点で話を進めていくことになりましたが・・・黒い、黒いよ!(笑)

色々と尻拭いをさせられる“スアロー”も己の呪いというものが何なのかも見当がついた
ようですし、“忌ブキ”も自身の決意が示す意味を受け止めました。立場を変えた5人が
介する「契りの城」という場で何が起こるのか。第六夜も目が離せない展開です。

posted by 秋野ソラ at 01:39 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル