2013年08月31日

『NR3』

仁木英之、秋月耕太、箕崎准、円居挽、前野ひろみち、ふみふみこ、寒河狷介、以上敬称略
で贈る奈良愛溢れる小説同人誌第三弾。初のリレー小説も交えた渾身の一冊を拝読です。
(装画:ふみふみこ 先生)

http://naralove.web.fc2.com/nr3.html


話の筋をある程度コントロールしないと迷走しがちな「リレー小説」。読み終えてみると
一番読みやすかった印象が残ります。馬鹿をやった若い日の無茶ぶりや、その因縁が大人
になって思わぬ無茶振りとして帰ってくる。ちょっとした人情モノみたいで良かったです。

「万葉戦隊ヤマトファイブ」はレッドの立ち位置である“光太郎”が実に残念でグダグタ
なノリが楽しめる短編。「宇宙戦艦ヤマト川」は宇宙規模での生命の摂理に巻き込まれる
奈良県民が奈良っぽい謎の技術で対応するという奇想天外な物語で思わず苦笑します。

「ボンクラたちの夏」は思わぬ騒動の果てに振舞いを見つめ直すきっかけを得る人たちの
話でちょっとイイ話風。「HGNR」は友達が少ない少年少女がささやかな謎を契機に縁を
繋げる、なるほどミステリ的なお話。「ひみこ!」は盆地が暑い点に痛く共感しました。

posted by 秋野ソラ at 01:15 | Comment(0) | TrackBack(0) | 同人誌

2013年08月30日

『桃音しおんのラノベ日記1 11歳の創作活動』

『まよチキ!』などの作品で知られる あさのハジメ 先生が「講談社ラノベ文庫」に参戦。
ラノベ業界の裏側に迫る(?)青春ラブコメ、ということで読ませていただきました。
(イラスト:たにはらなつき 先生)

http://kc.kodansha.co.jp/magazine/index.php/90008?id=9818/25832#26041
http://lanove.kodansha.co.jp/9906/25728.html


「風祭病」って凄いですね。匂いだけで年齢まで当てるとか人の道を外しすぎてますけど
“風祭”は“歩”の良き理解者として立場を示せているのでそこは評価して良いと思います。
顔を合わせる側の“ナツメ”としては気苦労が絶えないのでしょうけどね。

才能あふれる“汐音”を見て“歩”がどう思うか。先にデビューした“歩”を見て“ナツメ”
がどう思うか。羨ましく思い、妬ましく感じる中で作家であることの意味を見失いかける
構図からどう抜け出すのかが焦点となる物語です。“汐音”も例外ではありません。

編集ss氏とタッグを組むこともあって「MF文庫J」のノリが強い印象。その分、読みやすさ
にかけては折紙つきと言っていいでしょう。聞いたことのある業界ネタに笑みがこぼれる
場面もありましたがネタが尽きないことを祈りつつ、次巻の様子を見させてもらいます。

posted by 秋野ソラ at 01:26 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2013年08月29日

『フェアリィフィールド2 妖精触媒』

榊一郎 先生が贈る美少女バイオロボットバトル物語。第2巻は「フェアリィ」という存在
について、とある女性がどんな感情を抱くかに焦点を当てつつ話が進んでいきます。
(イラスト/BLADE 先生)

http://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=15201


「フェアリィ」が人間に、それも女性の姿に似せて作られている理由。“コトコ”も作中
にて言及しておりますが確かに性的な狙いが無いワケでもないでしょう。それに憑依できる
という可能性を見い出したからこそ今巻における騒動が発生したと言えるのですから。

そんな狂気の雰囲気を BLADE 先生の提案をもとにTS的要素を入れたり特殊な性的嗜好を
盛り込むことでコメディに昇華するあたりは流石です。“コトコ”のお家事情を交えた
ちょっとイイ話を織り込んでくるあたりも良かったと思います。

「プロデューサー」的な話や「ニンジャが出て殺す」的な話が入ってくるあたりは時節柄
といったお遊び要素も感じられて別の面白さを感じたりする訳ですが、よく考えてみると
“タツキ”がいちゃいちゃ弄られてて話が進んでませんね、ということで次巻に注目です。

posted by 秋野ソラ at 01:54 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2013年08月28日

『フルスケール・サマー』

永島裕士 先生の「第19回電撃大賞」四次選考作品が度重なる改稿を経て日の目を見る。
廃部寸前の部が原寸模型部として起死回生を狙う夏を描く青春エンタメ小説を拝読です。
(イラスト/紅緒 先生)

http://dengekibunko.dengeki.com/newreleases/978-4-04-891818-3/


確かに、場所をとる模型を数多く校内に置かれたとあっては他の部活動に支障をきたすのも
当たり前。その処分を押しつけられた模型部の“鮎美”と関わっていく中でかつての自分を
重ねた“慶介”が厭々ながらも権謀術数を巡らして彼女を擁護する側に回るまでが序盤。

未完の原寸模型「ボナパルト」を思わぬ助力を得て完成にこぎつけ、部を存続させるための
実績作りとして競技会へ参加するまでが中盤。いつしか原寸模型部での活動に熱の入った
“慶介”が皆と力をあわせて一つの結果を残すまでが終盤、という流れでございました。

若い時分にしか出来ない部活動という中に垣間見える、えも言われぬ熱量ですとか原寸模型
「ボナパルト」の活躍、まつわるエピソードといったところが琴線に触れる展開であったと
思います。生徒会長が存外、話の分かる人物であるところも興味深いと感じました。

posted by 秋野ソラ at 01:33 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2013年08月27日

『エーコと【トオル】と真夜中の落雷少女(ラッキーガール)。』

柳田狐狗狸 先生が贈るシニカルな学園ミステリー、第2巻はとある事案のあらぬ嫌疑を
掛けられた“エーコ”がその疑いを晴らす中で新たな事件に巻き込まれる顛末を描きます。
(イラスト/MACCO 先生)

http://dengekibunko.dengeki.com/newreleases/978-4-04-891868-8/


本当に救いようの無い結末でした。思春期真っ只中、感情むき出しで人と向き合う少女たち
の魂の叫びを目の当たりにしたかのようでした。それにしても“エーコ”自身もそうですが
周辺も殺伐としすぎていて不安になる今日この頃です。

その“エーコ”ですが相変わらず独創的なモノの見方、行動のとり方で“トオル”を始めと
した周囲を呆れさせるほど圧倒してきます。一人で生きていく覚悟を決めつつも他人と関係
することを忌避しきれないもどかしさのような、矛盾を抱えたような印象も受けました。

そんな彼女たちと何とか向き合おうとする“雪村”先生の胸の内ですとか、事件を解決する
ために動く傍らで先生との繋がりを構築しようと節操無く動く“軽部”刑事の損な役回り
ですとか、振り回される大人たちの気苦労も目を惹きました。何とも不思議な物語でした。

posted by 秋野ソラ at 01:56 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル