2013年03月03日

『エーコと【トオル】と部活の時間。』

柳田狐狗狸 先生の「第19回電撃小説大賞・金賞」受賞作。半年前に起こした事件を契機に
孤立した少女が、学校内で発生した人体発火現象などの事件に挑む学園ミステリーです。
(イラスト/MACCO 先生)

http://dengekibunko.dengeki.com/new/bunko1302.php#new3


大人になる一歩手前のお年頃である少年少女が抱える闇の部分を、その闇を一身に受けて
根本から変わってしまった少女“エーコ”が時に冷静沈着に、時に皮肉屋とも言えるような
物言いで突いていく一人称のお話、というのがまず印象的に映ります。

その“エーコ”が見せる性格のひねくれ具合も特徴的ではありますが、問題解決に向けて
意外としたたかに、そして豪胆に突き進んでいくあたりも目を見張るものがあります。突然
声を掛けられた【トオル】にも物怖じしないところも現実主義なところが見受けられます。

次々と学校内で発生する死亡事故の影に少しずつ見えてくる黒い想い、そして犯人の姿。
壮絶な幕切れの後で分かってしまった一連の事件における本当の黒幕。その落としどころ
として選んだ選択肢もまた“エーコ”ならでは、ということで楽しませてもらった一冊です。

posted by 秋野ソラ at 00:03 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2013年03月02日

『明日、ボクは死ぬ。キミは生き返る。』

藤まる 先生の「第19回電撃小説大賞・金賞」受賞作。一人の不良少年が突如、少女の精神
と一日おきに人格が入れ替わる二心同体の生活を送る事になった日々を描く青春物語です。
(イラスト/H2SO4 先生)

http://dengekibunko.dengeki.com/new/bunko1302.php#new15


事態は割と深刻なハズなのですが、そんな状況も吹き飛ばすほど軽いノリで一気に読めて
しまったというのが読了後の第一印象。悩ましい日々を送る少年“秋月”の頭を悩ませる
少女“光”、彼女の交換ノートを通じて見せる開けっ広げな性格がそう思わせるのかも。

なぜ“光”は死んだのか、と理由を探り始める契機となる“風城”の言動が物語に少しずつ
緊張感を呼ぶ中でも“秋月”の妹“雪瑚”が特殊(性癖的な)能力を発揮する所がどこか
喜劇的な雰囲気を醸成しているかのようで面白いところではあります。

緊迫の度合いが最高潮を迎えたところで“光”がひた隠しにしていた自分の死の理由を打ち
明けた場面の裏切られ具合。あれが受け入れられなかったら評価も違ったものになるので
まさに紙一重な物語かと思います。大賞作品の中では一番良かったと言っておきます。

posted by 秋野ソラ at 00:47 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2013年03月01日

『ミニッツ4 〜スマイルリンクの歌姫〜』

乙野四方字 先生が贈る学園騙し合いラブストーリー、第4巻は生徒会長となった“遙”の
もとで行われる学園祭でクラス、個人共に1位を狙う“櫻”が壮大なトリックを仕掛けます。
(イラスト/ゆーげん 先生)

http://dengekibunko.dengeki.com/new/bunko1302.php#new12


「スマイルリンク」の元になっているという「Improv Everywhere」や「Just for Laughs」
を調べてみますと、最近で言うと「The No Pants Subway Ride」というイベントが目新しい
関連イベントかな、とか分かってなかなか興味深いものを感じたりする次第です。

今巻はゲームの要素を薄めて、“月緒”のミニッツにまつわる描写と、彼女の思わぬ能力を
活かして学園祭における全ての勝負に勝つため知恵を絞る“櫻”の奮闘ぶり、そして皆で
力を合わせて何かを成し遂げるということの楽しさ、素晴らしさを魅せる展開でありました。

作中、イガグリこと“今蓋清太”が作ったとされる曲『重ねてゆく音』は 乙野 先生の自作曲
ということで「ニコニコ動画」で公開されております。クライマックスに掛けてこの動画を
BGVにして読み進めてみると一味違った読了感が得られるかも知れません。オススメです。


◆重ねてゆく音
http://www.nicovideo.jp/watch/sm19995197

posted by 秋野ソラ at 01:34 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル