「FB Online」 にて先行されていた 森橋ビンゴ 先生の描く 「早熟な少年少女に贈る、
もどかしく苦いラブストーリー」 が一冊に纏まったということで読ませて頂きました。
(イラスト:Nardack 先生)
【 http://www.enterbrain.co.jp/fb/pc/08shinkan/08shinkan.html#_01 】
自身の兄 “景介” の恋人である “有美” への場違いな思慕が元で半ば女性不信に、
ひいては生きること倦み疲れたかのような言動を見せる “英太”。彼が同じ図書委員
である “侑子” とひょんなことから擬似恋愛関係になったことで話が動き出す。
曖昧な関係のまま “英太” は “侑子” のことが好きだ、ということに気が付く。
でも、何でもかんでも 「短編小説」 に繋げてしまう彼女は自分のことを同じように
想っているか分からない。疑心暗鬼なまま続く関係の中、誤解もするし暴走もする。
“英太” の視点でもどかしさを表現する中、対する “侑子” はどうだったのか
というと言動の端々であったり、間に差し込まれる「ロミエマリガナの開かれた世界」
という短編小説による暗喩から、より難しい心の距離感を持っていた事が推察できます。
“英太” と “侑子”、それぞれが持つ背景を活かし、かつ話運びにも取り入れた
ところがまさに冒頭の 「もどかしく苦いラブストーリー」 にふさわしい内容に
なっていると感じました。4年越しの「ファミ通文庫」の新作、良かったと思います。