2011年07月15日

『残光の女神と1/2アンデッド』

佐々原史緒 先生の 「1/2アンデッド」 シリーズ第3巻にして最終巻。“那由子” という
少女の存在、そして “冬哉” の死について深く掘り下げていく中で衝撃の結末を迎えます。
(イラスト:kyo 先生)

http://www.enterbrain.co.jp/fb/pc/08shinkan/08shinkan.html#_04


いろんな要素がつつがなく繋がって、シリーズらしい結びへと綺麗に纏まったという印象を
読了後に抱きました。「半死人」 と 「渡し」、という二人の関係だからこそ辿り着いた
恋の結末ということで悲しくもあり、喜ばしくもあり、想い複雑なところでもありました。

「彼此見市」 全体に忍び寄る昏倒現象とその裏に潜むとある家族の悲痛なまでの願い。
さらにそのきっかけとなった一人の子供ととある家族との意外な接点。幕間に隠された
少女の名を埋めるのは彼女しかいない、と分かってから感情移入の深度が深まった感じで。

“那由子” の真意に気づいた “冬哉” も、すでに自分の死が何をもってもたらされたかを
知ってしまったからこそ潔く立ち回ることができていてスゲェな、というレベル。というかまぁ
口絵でその辺色々見せすぎてる気もしなくはない、と読み返してそう思った次第ですけど。


苦境の中、物語を完結させた 佐々原 先生には心より 「お疲れ様でした」 と申し上げますと
共に次回作にも期待を寄せたいと祈念するものであります。

posted by 秋野ソラ at 00:04 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2011年07月14日

『獅子は働かず 聖女は赤く あいつ、真昼間から寝ておる』

八薙玉造 先生の新作。稼ぎ頭の少女 “サロメ” と定職にも就かない少年 “ユリウス” の
何やらワケありな関係を描くファンタジー時々コメディ作品を読ませていただいております。
(イラスト/ぽんかんG 先生)

http://dash.shueisha.co.jp/new/1106.html#b06


コメディ要素がだいぶ強めに出ている気はしますが “アンナ” が受ける辛い仕打ちの数々、
拳で語るバトルなどを見ると 八薙 先生らしさもにじみ出ているかな、という感じがしました。
そのあたりは挿絵にも現れているかと思います。ぽんかんG 先生もいい仕事されてます。

“ユリウス” と “サロメ” のやりとり、とりわけ “サロメ” の頼り甲斐があるんだか
ないんだか掴みにくいリアクションが微笑ましいところ。“アンナ” は “アンナ” でまた
色んな意味で危なっかしいところもコメディさを助長する結果に繋がっているかと思います。

“ユリウス” が何の意味も無しにものぐさな態度をとっているワケじゃない、ということが
分かってから見えてくる 「禍竜戦争」 によって運命を変えられた人たちのそれぞれの立場。
今後どう絡んでくるか、八薙 先生の狙いを次巻以降で見極めさせてもらうことにします。

posted by 秋野ソラ at 00:33 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2011年07月13日

『ニーナとうさぎと魔法の戦車(3)』

兎月竜之介 先生の 「第9回SD小説新人賞」 大賞受賞作も3巻目に突入。“ニーナ” たち
「首なしラビッツ」 に同行する “アリス” との交流、彼女が抱える秘密に触れています。
(イラスト/BUNBUN 先生)

http://dash.shueisha.co.jp/_nina/#b03


常に一線引いて “ニーナ” たちと接する “アリス” と何とか仲良くなりたいと奮戦する
序盤のコミカルな進行から、今まで秘密にしてきた “アリス” の過去とそれが元に生じた
特殊な能力が判明するや否や物語は英雄を国賊にまで貶めるほどのシリアスな展開へ。

“アリス” に目をつけた 「フィクシオ共和国軍」 の中将 “ヴォルフ”。己が持つ絶対的な
正義感と立ち向かう、苦境に立たされた 「首なしラビッツ」 の活躍ぶりが何とも爽快で。
負い目を感じ続けていた “アリス” が一歩、また一歩と踏み出していく勇気も素晴らしい。

普及しなかった 「氷結弾」、というのはどこかで使ってくれるだろう思っていたら今回の
窮地に合わせてしっかり活躍してくれました。野良戦車から町を守る、何とも平穏な生活に
戻った彼女たちに次はどんな物語が生まれるのか、楽しみにしておこうと思います。

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2011年07月12日

『彼女を言い負かすのはたぶん無理』『彼女を言い負かすのはたぶん無理(2)』

説得力がものを言う 「ディベート」(討論) を題材にした うれま庄司 先生の青春小説。
「ディベート部」 なる部活に巻き込まれる少年 “祐也” が抱く想いの変化を描きます。
(イラスト:しらび 先生)

http://www.php.co.jp/comics/smash/


「スマッシュ文庫」なのに読みやすい、というのが何をおいても第一印象。失礼な発言で
大変恐縮ですが。1巻、2巻ともにするするっと読めてしまったので自分の中では驚きと
言うほかに無くて、まずそこは言っておかなければならないと強く思った次第です。

“祐也” の気持ちを知りながらも、それをもてあそぶかのように振り回す “愛良” が
何とも愛らしいんだか小憎たらしいんだか、という印象を受けました。が、そこは彼にも
意地があるということで 「ディベート」 で立ち向かう姿勢がいかにも青春してました。

そんな二人の仲もそれなりに近づいたと思われるところですが、個人的には頑張って一歩
踏み出した “詩織” にも存分に健闘してもらいたいな、と思ったりなんかするワケで。
次巻が出れば普通に手は伸ばすだろうと思います。ほのかに期待を寄せておきます。

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2011年07月11日

『図書館戦争』 『図書館内乱』 『図書館危機』 『図書館革命』

7/1から施行された改悪「東京都青少年の健全な育成に関する条例」のことを忘れない、
かつ戒めるためにも、文庫落ちした 有川浩 先生の代表作に触れておこうと思います。
(イラスト:徒花スクモ 先生)

http://www.kadokawa.co.jp/bunko/bk_detail.php?pcd=201011000088
http://www.kadokawa.co.jp/bunko/bk_detail.php?pcd=201011000089
http://www.kadokawa.co.jp/bunko/bk_detail.php?pcd=201011000090
http://www.kadokawa.co.jp/bunko/bk_detail.php?pcd=201011000092


兎にも角にも 「読んでおいて良かった」 と思える痛快さと恋愛模様の描き方が見どころ。
「文庫版あとがき」 においても 有川 先生が 「こんな世の中になったらイヤですね」 と
触れられているとおり、本作が娯楽として楽しめる社会であり続けることを切に願う次第。

フィクションの中においても妙に 「これはもしかしたらあり得るんじゃないか」 と強く
感じさせるリアリティがそこかしこに散りばめられている。それが 「図書館の自由を守る」
という世界観にどんどんハマっていける要因になっているんだろうな、と思います。

「原発テロ」 が図書館とどう繋がるんだろう? という戸惑いから一転して “郁” の
恋愛感情にもケリをつける、まさに手に汗握る緊張感を味わわせてくれた本編ラストが
強く印象に残ります。「禁止用語」 という概念にも考えさせられるところがありました。


残り別冊2巻の刊行が控えておりますので引き続き楽しみにしておこうと思います。

posted by 秋野ソラ at 00:11 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル