2020年10月23日

『本好きの下剋上〜司書になるためには手段を選んでいられません〜第五部「女神の化身3」』

香月美夜 先生が贈る大人気ビブリア・ファンタジー。 第五部最3巻は領地対抗戦に臨む
“ローゼマイン”の下で一晩世話になる“フェルディナンド”が様々な思いを明かします。
(イラスト:椎名優 先生)

https://tobooks.shop-pro.jp/?pid=150976495


件のディッターで「ダンケルフェルガー」が「エーレンフェスト」に対し誤解を抱いてた
ことへようやく釈明の場を設けられた・・・と思ったら価値観の隔たりに頭が痛くなる思い。
記憶の混濁、幻覚を見せる植物「トルーク」も使われていたことも後々に響きそうで怖い。

それにしても“ローゼマイン”の婚約者であるはずの“ヴィルフリート”が彼女のことを
気遣えていない点には読者としても不信感が募ります。“フェルディナンド”と彼女との
やりとりを見て対比する周囲の反応も得心がいくというもの。こちらも不安要素でしょう。

“フェルディナンド”が“ローゼマイン”に小言を並べる様を見るのはやはり安心します。
そんな彼も傍若無人な婚約者に不遇な扱いを受ける身。しかしラストで一矢報いたあの顔、
根本的な解決にはならないものの胸がすく思いです。事態の好転を祈り、次巻を待ちます。

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2020年10月22日

『死体埋め部の回想と再興』

斜線堂有紀 先生が異色の青春ミステリー。「死体埋め部」“織賀”と“祝部”の2人が
青春の一幕と、分岐した未来をそれぞれ描いた二つの小編も収録した青春の補遺集です。
(イラスト:とろっち 先生)

http://www.shinkigensha.co.jp/book/978-4-7753-1858-4/


“祝部”が死体の謎を推理して“織賀”が承認する。今や「死体埋め部」過ごす日常に、
それは旅行中という非日常においても変わらない。けれどそれは“織賀”との関係から
“祝部”が逃れられないことの裏返しなのかも知れない、と本作では痛感させられます。

「追想リコレクション」で、不本意ながら“織賀”のジャガーを譲り受けた“祝部”が
一人でバイトを続け、一人で死体に推理を巡らせ、一人で身も心も崩して生きていく。
痛々しいその姿は人を殺めた、足を踏み外した人間であることを見せつけてきて切ない。

読み終えて出これが分岐した未来の一つであることが救いなのかも知れないと思いつつ
もう1つの小編「再興と展開」ではどうにかいつも通りの2人の様子を見届けられて
思わず安堵。終わることなく続く2人の関係をつい期待したくなる1冊だと感じました。

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2020年10月21日

『呪剣の姫のオーバーキル〜とっくにライフは零なのに〜』

川岸殴魚 先生が贈る新作は、周囲が気分を悪くするほどモンスターを惨殺する女剣士に
目をつけられた儀仗鍛冶師を夢見る少年が彼女の旅に同行し、その一部始終を見届けます。
(イラスト:so品 先生)

http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784094518696


家を再興するため儀仗鍛冶師を目指す“テア”。ミスリルを求め辺境へ向かう旅中、突如
オークの集団に襲撃されてしまう。あわや命を落とす窮地を異形の女剣士に助けられるが
その首を落とすだけで飽き足らずひたすら惨殺する。なぜ彼女は凶行に及ぶのだろう──。

凄腕の討伐者“シェイ”が扱う武器を急造できる“テア”にとってはミスリルを入手する
機会を得るためとはいえ殺戮の現場に何度も巻き込まれるのはいい迷惑・・・のはずが次第に
彼女の真意に触れていくにつれ、満更でもなくなっていく関係の変化が興味深く、面白い。

所々で笑いを取りにいく姿勢や、その内容は 川岸殴魚 先生らしさを感じさせてくれます。
“シェイ”の生き様に共感した“テア”が見せる究極の選択、それに応える彼女の誠意に
心温まるものがありました。スプラッタな描写に耐性がある方へオススメしておきます。

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2020年10月20日

『くちぶえカルテット』

Vtuber小説家 モノカキ・アエル 先生のデビュー作。声にコンプレックスを持つ少女が
吹奏楽部でも挫折を味わい、「口笛」で自分らしい音を表現するまでの道のりを描きます。
(イラスト:みよしの 先生)

https://www.j-n.co.jp/books/?goods_code=978-4-408-55625-3


親友の“星良”から同じく所属する吹奏楽部を辞めたいと悩みを打ち明けられた“柚葉”。
一旦席を外した間、彼女が口ずさんだ口笛の上手さに心奪われ、自分も始める決意をする。
部活の練習中にも口笛を吹く熱の入れ様に“柚葉”は部員から見咎められてしまうが──。

音楽を楽しんでいた少女たちが、いつしか音に悩まされる姿は実に切なくてもどかしくて。
その活路を口笛に見い出したはずが、口さがないことを言われたりするのがまた苦しくて。
まるで「コンクール至上主義派」に抗戦するかのような暗喩を匂わせる構図が興味深くて。

“真子”や“絵留”と口笛を通じて友だちとなって、ピンチをチャンスにつなげるラスト
には安堵にしましたし、“柚葉”が一縷の望みを掴んだ一面は努力が報われそうで好感触。
“星良”の決心に、そして モノカキ・アエル 先生の門出を心より祝いたいと思います。

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2020年10月19日

『失恋後、険悪だった幼なじみが砂糖菓子みたいに甘い 〜ビターのちシュガー〜』

七烏未奏 先生の「小説家になろう」投稿作が書籍化。失恋に心を痛める少年と、その彼に
好きと言えずもどかしい思いをした幼なじみの少女が繰り広げる甘くて切ない恋物語です。
(イラスト:うなさか 先生)

https://kc.kodansha.co.jp/product?item=0000345465
https://ncode.syosetu.com/n1045gd/


初恋に夢中だった“悠”が直面する突然の失恋。学校を休むほど気落ちする彼を気遣って
見舞いに来たのは、理由も分からず長いこと険悪な関係になっていた幼なじみの“心愛”。
体調が回復してからも何かと世話を焼いてくれる彼女に、彼は心の傷も癒されていく──。

ふとした仕草や言葉の端々から、“悠”と疎遠になる前のエピソードを思い出す“心愛”。
憎からず彼のことを想っていた彼女と、そんな気も知らずに意中の先輩と交際していた彼。
期せずして距離を縮めていく彼女のやりとりが面映ゆくて、描かれる機微も微笑ましくて。

なぜ“悠”は失恋したのか。その訳の重さも踏まえ、だからこそ彼と共にいる道を選んだ
“心愛”の芯の強さには驚かされます。例え想いが予想外の契機で彼に伝わったとしても。
後はその熱を受け止める側に委ねられた、ということで彼の動向に注視したいと思います。

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2020年10月16日

『御執事様の仰せのままに』

真楠ヨウ 先生が「メディアワークス文庫」から贈る新作は上流階級デビュッタント物語。
突如、名家の名代となった庶民な青年と、その家に仕える完璧執事の主従関係を描きます。
(イラスト:おかざきおか 先生)

https://mwbunko.com/product/322005000015.html


大学生の“新”は不運を告げるTVの占いを体現するかのように一日で家まで失ってしまう。
大家からは「親戚の方が迎えにくる」と言われるが、身内のいない彼にそんな覚えはない。
程なく美貌の青年“進藤”が現れ「織原家の血を継ぐ正統な後継者だ」と言われるが──。

いきなりお屋敷での生活が始まり、執事である“進藤”から色々と教わる身となる“新”。
その新しい主人の庶民的な言動に思う所がある“進藤”の機微が、主従として過ごす内に
悪化するかと思いきや良い変化を見せていく展開は思わず胸がキュンキュンさせられます。

その流れを導く役を担うメイド“音”の名助演ぶりが光るので要注目。社交界デビューを
果たす“新”に下心ありまくりな上流階級の面識が増えていくのも先々、効いてきそうで
注視が必要かと。飯テロ要素もあり、中々に油断のならない本作。オススメしておきます。

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2020年10月15日

『魔王学園の反逆者4 〜人類初の魔王候補、眷属少女と王座を目指して成り上がる〜』

久慈マサムネ 先生が贈るちょっぴりHな学園魔術ファンタジー。第4巻は“ユート”に
仲間意識を見せる“ロスト”の暗躍に対抗すべく“リゼル”が夏合宿で強化を図ります。
(イラスト:kakao 先生)

https://sneakerbunko.jp/product/322007000025.html


“ユート”に攻撃魔法がない。その弱点を補うための試練を楽しみながら、味わいながら
しっかりこなしていくあたり、相変わらず羨ましい。それでもあと一歩足りないところを
「彼女」が補うあたり、彼が魔王として描く世界観に共感したからと考えると感慨深い。

山王の双子姉妹“力丸”と“正義”。挿絵がなければ男性と見間違うほどの荒々しさと
仲の悪さを見せる魔王候補の意外に狡猾な戦略に驚かされつつ、“岩洞”校長が示唆する
『恋人』の秘められた能力がそれを蹂躙していく展開は実に圧巻であり、残酷でもあり。

魔王学園を壊すだけでなく世界全てを殺す。そう豪語する“ロスト”が示す底知れない
恐ろしさ。まさに絶体絶命、その瞬間で今巻“ユート”の遭遇した出会いが自信満々な
彼の顔を崩すことになるとは。また興味津々な展開を魅せてきました。次巻も楽しみです。

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2020年10月14日

『それでも、好きだと言えない』

2016年、左和ゆうすけ 名義で『最強秘匿の英雄教師』を上梓した 赤月カケヤ 先生が贈る
「講談社ラノベ文庫」2作目は、ほろ苦くて、ちょっぴり泣ける青春ラブストーリーです。
(イラスト:へちま 先生)

http://lanove.kodansha.co.jp/books/2020/10/#bk9784065211786


学校随一の美少女“美波”に淡い想いを抱く“悠人”。見知らぬ男と談笑する彼女を見て
呆然自失となりトラックに轢かれかける。謎の少女に救われたが実は彼女は幽霊で、彼に
憑りついて地縛霊から浮遊霊になった上に記憶喪失らしく何とか成仏する術を探るが──。

“レイナ”と名付けた“悠人”は天真爛漫で、彼女の手助けで“美波”と仲良くなったり
する微笑ましいが続く一方、彼には“レイナ”と切っても切れない縁があり、しかも彼の
行動原理にも影響していると分かってからの、三者三様の機微の変遷がこれまた興味深い。

“レイナ”はなぜ幽霊になったのか。その原因となる「誤解」に迫り、解消を図るうちに
自身の気持ちに気付いた“悠人”が『それでも、好きだと言えない』と独白するその意味。
まさかのダブルミーニングに驚かされ、読了後に残る余韻は切なく、印象深い内容でした。

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2020年10月13日

『お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件3』

佐伯さん 先生が贈る甘く焦れったい恋の物語。第3巻は“真昼”と同じクラスになった
“周”が、未だに彼女と距離を置こうとする原因となる心の傷について触れていきます。
(イラスト:はねこと 先生)

http://www.sbcr.jp/products/4815607418.html


新学年を迎え、封印していた過去の記憶が甦り気が滅入る“周”と、彼を気遣う“真昼”。
そこでアレをされる彼も大概ですが、実行に移す彼女も前のめりな印象が強まっています。
“優太”との距離をどう感じるか。そこに今巻の鍵となる“周”の本質が見え隠れします。

学校内では“真昼”と仲良くしないと宣言する“周”。彼女のことを考えているふりして
その気持ちを置いてけぼりにしている感が強く、彼に対してなりふり構わずグイグイいく
変化が彼女に表れるのも無理ないです。だからこそ彼の心の傷に触れられたのかもですが。

母“志保子”の策が見事に嵌まり、心の傷が癒えていくのを感じる“周”が見せる優しさ。
互いに「ずるさ」を利用して面映ゆい関係にとどめる2人は一線を超えないだけですでに
通じるものはあるはず。そこで投下された爆弾発言はどんな変化をもたらすか要注目です。

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2020年10月12日

『放課後の図書室でお淑やかな彼女の譲れないラブコメ』

『佐伯さんと、ひとつ屋根の下』の 九曜 先生、フライ 先生のコンビで贈るラブコメ新作。
母子家庭の少年が母を失い、引き取られた先の家族と悩ましい生活を送る顛末を描きます。
(イラスト:フライ 先生)

https://famitsubunko.jp/product/321909000137.html


交通事故で亡くなった母の葬儀も終わり、途方に暮れる“静流”。彼のもとを訪ねてきた
母と同じ病院に務める男性医師から実の父親だと告げられる。うちに来ないかという彼に
まず1ヶ月世話になると決めた“静流”は、ある有名な先輩と姉弟関係になるのだが──。

“静流”へ粉をかける“紫苑”も、彼に気を許せない“泪華”も、彼と揺るぎない関係に
ある“奏多”も、そして彼自身も、何らかの「欠落」を抱えて今を生きる印象が窺えます。
先輩たちとの興味深いドラマが始終展開されており、中々に良い滑り出しかと感じました。

“泪華”の心にあるわだかまりを解くことで彼女の家で世話になる期間を見直す“静流”。
2人の機微の変化を味わい、“泪華”の焦燥する気持ちを見極めながら、目下気にすべき
要素は“奏多”と“静流”のつながり。「番外編」の使い方も上手くて続きが楽しみです。

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