2017年05月26日

『信長の妹が俺の嫁 3 戦国時代に芽吹く命と散る命』

井の中の井守 先生が贈る歴史ファンタジー。第3巻は織田信長の手で九死に一生を得る
“長政”が、その裏に込められた“半兵衛”の願いを知って、様々な考えを巡らせます。
(イラスト:山田の性活が第一 先生)

http://nox-novels.jp/bibliography/20170323-2/


窮地の連続で、選択を一つでも間違えれば死あるのみ。そんな極限下で生き延びた“長政”
がクズっぷりを見せつける“龍興”に「これでもか」と怒りをあらわにする場面が印象に
残りました。スカッとしましたし。それ故に“半兵衛”が想いをぶつけるのも頷けます。

死の淵を見た直後だからこそ、浅井と織田の両家に関わる吉祥も生まれる、というもので。
ご無沙汰だった“長政”と“市姫”が求めあう姿は、これまで以上に愛欲あふれるものが。
滾るものをどうしたらいいか悩む彼の姿勢に彼女を一途に愛する様が窺えて胸中複雑です。

処世術、といった打算ではなく“信長”に信と義を貫く“長政”の更なる躍進を期待する
流れの中、この世界が既知の戦国時代と異なることを見せつける新たな危機は物語をどう
動かすか気になります。あと巻末の書き下ろしが、もう初々しくて思わずニヨニヨします。

posted by 秋野ソラ at 00:12 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2017年05月25日

『カロリーは引いてください! 〜学食ガールと満腹男子〜』

日向夏 先生が贈る新作は、大学の人気者だが体重108kgの巨漢と、彼の食事を世話すること
となった幼馴染で学食勤めの女性が学内のお悩み解決に関わる満腹グルメストーリーです。
(イラスト:時々 先生)

http://www.kadokawa.co.jp/product/321701000517/


太っていることをポジティブに捉える“雪人”の食事に気を配って、あわよくば体重減量を
図るよう彼の母“響子”に依頼された“楓”は日々の献立に頭を悩ませる。そんな彼は大学
で悩み相談や揉め事をあっさりと解決したりする、謎多きハイスペックな巨漢なのだ──。

表紙絵ではチラッとSDキャラで登場していますが、作中では挿絵で描かれることはないので
「ハイスペックな巨漢」が変なイメージで固着されないのは大きな利点だとまず感じました。
隙あらば食べようとする“雪人”と、阻止しようとする“楓”とのやりとりが微笑ましい。

「お悩み」の内容も、人間関係や生活環境など、大学生活を続けていれば起こり得る内容な
だけに親近感が沸きます。ちょっと厄介な話でも解決に結びつけていく“雪人”の有能ぶり
と彼に振り回される“楓”の機微の描写をご堪能あれ。ぜひ続きが読みたい作品であります。

posted by 秋野ソラ at 00:16 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2017年05月24日

『悪逆騎士団II そのエルフ、凶暴につき』

水瀬葉月 先生が贈るダークファンタジー。第2巻は結晶総合業者・ジェヴォーダン一家が
蛮都にはびこるようになって変わっていく様子を前に“アリシア”たちが立ち向かいます。
(イラスト/ももこ 先生)

http://dengekibunko.jp/newreleases/978-4-04-892881-6/


蛮都で行われる会合に臆することなく乗り込み堂々と営業活動をしてのける“アレックス”。
結晶法使いの彼がもたらす結晶の商品によって街の住人があからさまに怪しい恩恵を多数
享受することになります。もちろん、後々で悪意に晒されますのでご期待いただきたい所。

そんな中、巨大な歯形で喰われる冒険者が続出する森の魔獣退治に臨む“アリシア”たち
が新たな出会いと暗躍する一家の側面を垣間見たことから、再び悪逆騎士団として敵認定
していくことになる訳ですが、相手も根回し十分で一筋縄ではいかない展開が楽しめます。

今回は出番が少ないな、と思っていた“ベルガラン”が意外な形で話の軸を担う話運びは
興味深く、“アリシア”が今回直面する最大の危機をどう回避したのか、そもそも彼女の
野心はどうなるのか、といった気になる要素も残しているため、続きに期待が高まります。

posted by 秋野ソラ at 00:40 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2017年05月23日

『ネット小説家になろうクロニクル 3』

津田彷徨 先生が贈る、ネット小説投稿サイトが舞台の青春サクセスストーリー。第3巻は
デビュー作に突き付けられた過酷な現実を経て“昴”が作家として更なる成長を遂げます。
(イラスト/フライ 先生)

http://seikaisha.co.jp/information/2017/04/21-post-netcro3.html


“昴”の刊行作が打ち切りとなった理由の分析に始まり、再びハングリー精神を取り戻す
過程で同業者と会話する様が 蝉川夏哉 先生のファンミーティングに参加した際の雰囲気
を彷彿とさせて思わずニヤリ。しかしそこから彼が義憤を見せる業界の闇を垣間見る形に。

その義憤は小説を公開できる「ベコノベ」への愛を裏打ちすると共に現実でも同じ想いを
抱いているであろう 津田 先生の情熱が伝わってくるかのようで。彼が打ち出す一手一手
に胸を熱くしながら“昴”が作家として成長し駆け上がっていく様子を見守り続けました。

作家としてだけではなく、書店側や読者の目線でも「ネット小説」の現状や問題点などを
提示し、指南書としてだけでなくサクセスストーリーとしても十分に纏まっていることに
感服しました。充足度の高い読了感をぜひ皆さんも味わってみてください。お薦めです。

posted by 秋野ソラ at 00:08 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2017年05月22日

『終わる世界の片隅で、また君に恋をする』

五十嵐雄策 先生が贈る新作は、世界から存在自体が忘れ去られる病気に罹患した患者が
望む、最後の願いを叶える部活を営む二人の男女高校生にまつわる恋愛ストーリーです。
(イラスト/ぶーた 先生)

http://dengekibunko.jp/newreleases/978-4-04-892903-5/


保健室登校を続ける“桜良”先輩との「ある約束」を起点に“アキ”が部長として始まる
「忘却病相談部」の活動は、学校内で「忘却病」患者向けの便利屋として知られていく。
満更でもない先輩の喜ぶ顔に隠された部活動の真意を、彼はまだ知る由もなかった──。

いつ起こり、どう蔓延したかも分からない「忘却病」の空恐ろしさを冒頭で見せつけつつ
デートをしてと願う“枝織”、家族として生活してほしい“千紗”、忘れられた親友を
思い出させてくれと頼む“莉奈”の依頼を経て、その悲しみを目の当たりにさせられます。

そして数々の依頼をこなしてきた“桜良”からの不意打ちとも言える宣告。「忘却病」に
ついて気付きを得た彼女からの「依頼」に“アキ”はどう応えるのか。冒頭のシーンと
タイトルがフラッシュバックする結末が胸に余韻を残す秀作でした。オススメの一冊です。

posted by 秋野ソラ at 00:02 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル