2025年04月30日

『終わらない冬、壊れた夢の国』

八目迷 先生が贈る「夏へのトンネル、さよならの出口」から続く〈時と四季〉シリーズ、
その最後を飾る「冬」の物語は遊園地でループ現象に囚われた少年少女の想いを描きます。
(イラスト:くっか 先生)

https://www.shogakukan.co.jp/books/09453228


人食い遊園地の都市伝説。そのモデルとなる場へ友人らと遊びに行く“カシオ”は園内で
出会った謎の少女“あせび”から「友人の“ネリコ”に殺される」と予告される。その夜
“ネリコ”に刺され、涙ながらにある願いを託された彼は朝の園内に逆戻りしていて──。

誰かを殺せばループを出られる。断固拒否し他の手段を求める“カシオ”が“あせび”の
ループ回数、試行結果、そして何より彼女が抜け出すつもりはないと意思表示することで
打ちひしがれる様子は絶望的な状況であることの証左。一縷の望みもないとはこのことか。

殺された人がループに陥る。“あせび”が殺された背景に“カシオ”の生き様、人生すら
つながっていく残酷な現実、彼女が現状を享受するに足る理由、複雑な想いを抱えながら
彼が彼女の助けになりたい一心でループをねじ伏せようとする姿に強い熱量を感じました。

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2025年04月29日

『変人のサラダボウル 8』

平坂読 先生が贈る変人たちの奇想天外おもしろ群像喜劇。第8巻は“リヴィア”が旅に
出たその後の話、“サラ”や鏑矢探偵事務所に訪れる新たな転機に関する顛末を描きます。
(イラスト:カントク 先生)

https://www.shogakukan.co.jp/books/09453239


“友奈”に構ってほしくて奇怪な行動に出る“アルバ”が見せる洞察力は、探偵事務所に
通い詰める“友奈”も唸らせる中々のもの。流れで図星を突かれた“友奈”が“アルバ”
との遊びに付き合わされそうなのは同情を禁じ得ないものの、その行方は興味深いところ。

“惣助”が“友奈”の思慕を意識せざるを得ない展開の中、どうすればいいか悩む相談先
として選ばれた“ブレンダ”が彼とイイ感じの雰囲気を作り出せているのは応援したい所。
誤解したままの“閨”を不憫に思いながらも、彼が気持ちの整理するか注視したいところ。

“リヴィア”が煩悩を捨てる旅で更に煩悩にまみれる展開はむしろ安心して見ていられる
言っても過言ではない・・・かもしれない。彼女の生き方に口を出す気はない“サラ”もまた
赴くまま芸能活動を進めていく中であの提案を受けることになるとは・・・次巻も楽しみです。

posted by 秋野ソラ at 23:55 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2025年04月28日

『魔術師クノンは見えている 7』

TVアニメ化が決定した、南野海風 先生が贈る盲目の天才による魔術探求ファンタジー。
第7巻は“クノン”が“ゼオンリー”と“ミリカ”に再会する短期間の顛末を描きます。
(イラスト:Laruha 先生)

https://kadokawabooks.jp/product/majutsushikunon/322411000861.html
https://ncode.syosetu.com/n1314hd/
https://kunonanime.jp/


“ゼオンリー”も目を見張る魔建具の顛末に、王宮魔術師たる彼の立場とそのしがらみを
感じずにはいられません。それを逆手に師弟の絆を確かめたり、昔話に花を咲かせたりと
抜け目なく時間を割くあたりは流石で。また“アイオン”との関係も謎が多くて要注視で。

“ミリカ”が婚約者の師弟関係を見て気後れする姿を不憫に思いつつ、例の手紙の内容に
やきもきしていた彼女がようやく事情を察するに至る一連の流れは心から安堵するばかり。
結婚に向けての障壁を“クノン”に伝えられたことで彼女の覚悟も強まったかと思います。

“クノン”が師と鏡眼の見解を共有したところで、念願の目を造るための鍵となりそうな
「造魔学」に手をつける過程も興味深い。アレの雛形がイスカン君なのも面白いズレ具合。
ズレている、と言えば“レイエス”の植物への傾注ぶりも気になりつつ、次巻も期待です。

posted by 秋野ソラ at 00:16 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2025年04月25日

『男女の友情は成立する?(いや、しないっ!!) Flag 11. じゃあ、アタシと一緒にいられなくなっても信じ続けてくれる?』

TVアニメ放映を迎え贈る 七菜なな 先生の青春〈友情〉ラブコメディ。シリーズ12冊目は
高校最後の夏休みに東京へ旅行する“悠宇”と、初仕事に臨む“日葵”の機微を描きます。
(イラスト:Parum 先生)

https://dengekibunko.jp/product/danjoru/322410000824.html
https://www.danjoru.com/


“日葵”と仲が良いのか悪いのか、そんな“ゆめ”の再来と“悠宇”への反応が興味深い。
彼の“ゆめ”への気遣いにも総ツッコミが入るあたり“凛音”の悩みの種は尽きない様で。
彼女たちが東京での観光を楽しんでいる初日の雰囲気がこれでもかとまず伝わってきます。

“ゆめ”の才能を思いがけない角度から見せつけられる“悠宇”が彼女を評価する場面に
彼女の抱える矛盾について、読み手としても悩ましく思わずにはいられない。その傍らで
“天馬”が“慎司”と一気に距離を詰めて意気投合している雰囲気が面白くて仕方がない。

“紅葉”に与えられた機会を前にして“日葵”が感じていたことを、言われずとも察する
“悠宇”との関係はやはり唯一無二なものだと印象づけられる今回の顛末。それを踏まえ
彼に仕向けられたあの「試験方法」がどんな波乱を呼ぶことになるのか注目したい所です。

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2025年04月24日

『新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙XII 羊たちの宴<上>』

支倉凍砂 先生が描く賢狼の娘と聖職者による旅路。第12巻は神の加護があると噂される
ほどに名声を集める“コル”の身の振り方に“ミューリ”が気を配り、頭を悩ませます。
(イラスト:文倉十 先生)

https://dengekibunko.jp/product/spice-and-wolf/322409000710.html


“ミューリ”が“コル”にあんな仕打ちをするなんて、と驚かされる冒頭も読み進めれば
実に納得。「妹の心兄知らず」と言うべきか、彼の間違った頑張り方を諫める最善の策が
アレというのも、彼女がお転婆な少女という殻から抜け出す成長ぶりが窺えるというもの。

“ミューリ”や“コル”が知る由もなく、2人が過ごした旅の濃密さと熱量にあてられて
凝り固まった心を動かされる者たちが現れるのが今巻の見どころ。“ハスキンズ”しかり
“クリーベント”しかり、2人の物語がなければ動き出さなかった物語もまた感慨深くて。

“ミューリ”と“コル”も推し量れない「公会議」の行方。“ディアナ”が語る教会の闇
も気掛かりですし、海千山千の“エーブ”が暗躍する姿も目が離せない中、2人の旅にも
一つの区切りが生まれそうな雰囲気に俄然、注目が集まります。下巻の刊行にも期待です。

posted by 秋野ソラ at 00:30 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル