2018年09月26日

『GENESISシリーズ 境界線上のホライゾンXI<中>』

川上稔 先生が贈る戦国学園ファンタジー。11話中巻はヴェストファーレン会議に場を移し
三河争乱から今まで武蔵勢が何を受け止め、考え、行動してきたか。その全てを示します。
(イラスト:さとやす 先生(TENKY))

https://dengekibunko.jp/product/horizon/321804000339.html


舌戦に次ぐ舌戦。バトルなしでも十分熱い。会議に構える武蔵勢の穏やかな雰囲気が嵐の
前の静けさだったと今にして思います。ミュンスター講和条約の場では“ウィレム二世”
に対峙するあの代理交渉人が、情報とハッタリを武器に彼をやり込める展開にまず驚嘆。

オスナブリュック講和条約の場では敵と見ていた瑞典が色々な意味で鍵となる流れには
手に汗握る緊張感で魅せられましたし、ミュンスター講和会議の場では奮戦する“三成”
に無理難題を押し付ける“マティアス”を「彼女」が叩き潰してくれて気分爽快でした。

迎えるヴェストファーレン三河会議の場では“正純”と“教皇総長”の平行線な議論が
外界開拓、創世計画、大罪武装などありとあらゆる論点を昇華させあの結論へ辿り着く
過程には胸を熱くせずにはいられません。第二の月に向かう彼らの命運を見届けます。

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2018年09月25日

『七つの魔剣が支配する』

『ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン』の 宇野朴人 先生が贈る新作は魔法使いが剣を
帯びる世界で、それぞれの想いを胸に魔境のような魔法学校へ臨む新入生たちを描きます。
(イラスト:ミユキルリア 先生)

https://dengekibunko.jp/product/7-maken/321804000334.html


入学式で行われる魔法生物のパレード。それを見て彼らの人権について語る“カティ”に
突如列から離れたトロールへと足を運ばせる魔法が掛けられる。助けに入る“オリバー”
の目に飛び込んできたのは刀を振るうサムライの少女。魔法には縁が無さそうだが──。

学校長からの容赦ない言葉が示す通り、心技体揃った研鑽が必要なだけでなく上級生らの
言動や人権派などの派閥に翻弄されるなど、まさに混沌とした魔法学校でどう生き抜くか。
“カティ”が巻き込まれた事件を探る“オリバー”らを軸に進む話がページ数的にも重厚。

襲われたトロールを気に掛ける“カティ”の言動が意外な結末を呼び込む中で魅せたあの
“ナナオ”の強さ。彼女の気高さも相まってより惹かれるものが。それだけでは済まない
エピローグで見せたあの一面がまた重そうなテーマで、どう話を動かしていくか注目です。

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2018年09月24日

『はたらく魔王さま!19』

和ヶ原聡司 先生が贈る魔王と勇者の庶民派ファンタジー。第19巻はマグロナルドを離れ
受験勉強に専念するはずの“千穂”がエンテ・イスラの政情変化に巻き込まれていきます。
(イラスト:029 先生)

https://dengekibunko.jp/product/maousama/321805000012.html


制服も返して、いざ! という時に“鈴乃”に提示された辞令。“エメラダ”らの努力を
ふいにする情勢の動きを境に次々と“千穂”が仲介役を担わされるという不憫さには同情
せざるを得ません。ここに“アシエス”の異変が重なるというのだから泣きっ面に蜂で。

思わぬ重責を背負うことになり、見たくもなかった教会の真実を改めて目にした“鈴乃”。
懊悩する彼女の気持ちを救ったのが“真奥”なのは言うまでもないですが、性急に事が
動いた、という印象でした。挿絵から滲ませる表情がまた幸せそうで悩ましい展開です。

いつも通りの仕事しかしていない“真奥”を他所に“千穂”が新たな決意をもってあの
マグロナルド幡ヶ谷駅前店から動き始めていくその姿が凛々しい。それにしても今回は
色々な場面で連絡不備が続いて混迷しましたが、次巻以降でスッキリするか見ものです。

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2018年09月21日

『火焔の凶器 ─天久鷹央の事件カルテ─』

知念実希人 先生が贈る新感覚メディカル・ミステリー。長編シリーズ4冊目は陰陽師の
墓をあばいた研究者が次々と不審な死を遂げる呪いのような謎を“鷹央”が診断します。
(イラスト/いとうのいぢ 先生)

http://shinchobunko-nex.jp/books/180133.html


“室田”教授の話によると、陰陽師の歴史を紐解く上で重要とされる人物“蘆屋炎蔵”の
子孫を発見し、その墓に入った彼自身が体調を崩し残る2人も焼死したり、錯乱したりと
まるで呪いの仕業のよう。“炎蔵”に呪われたものは皆、焼死しているというのだが──。

“室田”と“碇”の容態が悪化した理由が“炎蔵”の墓にあるのは想像の範疇ではある
ものの、その後に起こる怪事件の数々、“内村”が焼死した理由がトンと見えてこない。
本当に最後の最後まで事件の真相、そして真犯人が分からなかったのはやきもきしました。

“小鳥遊”が研究メンバーの紅一点である“葵”との関係も上手く進められないあたりは
“鴻ノ池”の監視が厳しいだけではないような気もします。そんな彼が今回かなり窮地に
陥る破目になるので、それをどう回避するのか、といった点にも注目いただきたい所です。

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2018年09月20日

『聞こえない君の歌声を、僕だけが知っている。』

松山剛 が贈る新作は、動画投稿サイトに上げられた「歌声だけがない歌う少女」の動画を
見たある青年が突然、彼女の声を聴けるようになることから始まる、切ない愛の物語です。
(イラスト/さけハラス 先生)

http://mwbunko.com/978-4-04-912117-9/


“永瀬”が悪友から勧められた「無声少女」の動画にすっかり嵌まってしまったある日、
なぜか自分だけ動画から歌声が聴こえた。幻聴かと疑いつつも歌詞を書き出してみると
ある場所に近い情景が含まれていることに気付く。彼は「無声少女」に逢えるのか──。

講義もすっ飛ばして“永瀬”が辿り着いた場所にいたのは“サクヤ”という女の子。でも
話がちぐはぐで彼女は「無声少女」ではないらしい、という所からあれよあれよと2人の
未来に、更には人生観に迫っていく設定と展開が絶妙で結末からは切なさと愛が溢れます。

ロストナンバーで上げられた曲のタイトルが物語における色々な要素を含んでいたのだと
読み返してみて分かります。“永瀬”が、“サクヤ”が、そして「無声少女」がそれぞれ
想うこと、願うことの顛末をどうか見届けてあげてほしい。そう思えるお薦めの一作です。

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2018年09月19日

『キミの忘れかたを教えて』

あまさきみりと 先生が贈る新作は大人の青春物語。シンガーソングライターとして夢を
叶えた女と彼女に劣等感を抱いて自暴自棄になった男が再会することで話が動き出します。
(イラスト:フライ 先生)

https://sneakerbunko.jp/product/kimiwasu/321803000510.html


余命半年。大学も中退し、近所からは後ろ指を指されながらニートな日々を過ごす“修”。
ある日、悪友の“正清”に連れまわされて辿り着いた母校の中学校で、「彼女」のために
書いた歌を唄う声が聴こえる。あの日互いの道を分けたはずの“鞘音”の姿がそこに──。

今や現役大学生シンガーソングライターとして有名となった“鞘音”が5年前。唄う夢に
一緒になって付いてきてほしかった“正清”が気づけなかった「あの7秒」がもどかしい。
動かなくなった指をもう一度、動かせるようにしてまでやったことがムダに思えるくらい。

迫りくる命の期日。幼馴染としての“鞘音”と歌手としての“SAYANE”。“修”と一緒に
バカをやってくれる人たち。彼が引き止めたかったのはどっちの彼女なのか。すれ違う
感情の果てに2人は互いの道を、想いを寄せられるのか。ぜひ結末を確かめてみて下さい。

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2018年09月18日

『二十世紀電氣目録』

すでにアニメ化が進んでいる、結城弘 先生の第8回京都アニメーション大賞奨励賞受賞作。
明治時代に出会った、神仏を妄信する少女と電気が人々を救うと豪語する少年の恋物語です。
(イラスト:池田和美 先生 美術・背景:長谷百香 先生)

http://www.kyotoanimation.co.jp/books/lineup/?cd=978-4-907064-88-4
http://www.kyotoanimation.co.jp/books/20thdenmoku/


酒造りの家に生まれた“稲子”は信心深く、鈍くさいことで知られる少女。傾いた経営の
カタに酒問屋の“洋輔”に嫁入りが決まると意気消沈する。そんな彼女に偶然知り合った
“喜八”が救出に乗り出すが、彼が幼少の折に書いた「電氣目録」が欲しいと言われ──。

「二十世紀は電気の世紀」兄“清六”と共に行った博覧会で電気に魅了された“喜八”が
落書きのように書いた「電氣目録」が欲しい理由は何か。1冊の本を巡って描かれる壮大
かつ浪漫にあふれた冒険譚と恋愛模様にまず惹き込まれます。彼を応援したくなります。

“喜八”と“稲子”が結婚話をご破算にしようと四苦八苦する中で出会う人物たちが描く
思いがけない相関図が、2人が実は逢うべくして逢っていたのかもしれない、と思わせる
ほどに秀逸に出来ていて驚きました。信じる心が結ぶ話も清々しくて、実に良かったです。

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