2018年06月18日

『静かの海 その切ない恋心を、月だけが見ていた 上・下』

筏田かつら 先生が贈る新作は「小説家になろう」投稿作の単行本を加筆修正して文庫化。
就活に失敗した大学生とボーイッシュな少女の出会いから始まる年の差恋愛を描きます。
(イラスト:LAL!ROLE 先生)

http://tkj.jp/book/?cd=TD285003
http://tkj.jp/book/?cd=TD285027


せっかくの採用内定を取り消された“行成”が気を腐らせていると、飼い犬に逃げられた
小学生の“マサキ”に助けを求められる。別の日に雨宿りする“マサキ”と偶然再会した
“行成”はその、どこか憂いげな様子を気遣って自宅へ来ることを提案してみると──。

引越しをして新しい学校に馴染めない“マサキ”にとって、気さくに話せる“行成”との
やりとりは心の支えになっていくものの、それは彼がボーイッシュな“マサキ”を男子と
信じて疑わないからこそ。微笑ましくも綱渡りのような危うさは緊張の糸が張るかのよう。

やがて仄かな想いへと変わる“マサキ”の気持ちも知らぬまま、関西にある会社への就職
を決め、彼女も作る“行成”。内心ではショックな彼女にも、彼女が好きだという男子が
現れたり、いじめが発生したりでどうなっちゃうの〜? というところまでが上巻の展開。


下巻では家族のこと、進路のことで悩む“マサキ”へ追い打ちをかけるように“行成”が
助けに入り、彼女の想いもより深くなっていきます。彼女もまた好意を寄せている男子の
気持ちも知らないで、という似た者同士な様子を見せるのが面白くて、そして切なくて。

やがて来る決定的な瞬間を前に不安や不満など気持ちが押さえられなくなった“マサキ”。
受験を乗り越え、卒業式を間近にした彼女が意外な形で様々な人たちの感情に触れていく
場面の一つ一つが胸に刻まれていくかのようでした。その間に彼がいないだけ、余計に。

亡き父が残した月の石、そして「静かの海」というキーワード。時間や距離という概念を
超えて結びつく「誓い・約束」は必ずしも果たされるとは言えませんが、2人の出会いが
この先「人を好きになる」ことへの可能性を感じる一助になることを願って止みません。

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2018年06月15日

『魔王を倒した俺に待っていたのは、世話好きなヨメとのイチャイチャ錬金生活だった。』

かじいたかし 先生が贈る新作は、倒した魔王の力を受け継がされたことで世を追われた
勇者が身を隠して出会った錬金術師の少女によって生活を一変させていく顛末を描きます。
(イラスト/ふーみ 先生)

http://hobbyjapan.co.jp/hjbunko/lineup/detail/789.html


錬金術師“ヨメ”は森の中でモンスターに襲われている所を通りがかった青年“イザヤ”
に助けられる。近くに隠棲するという彼に接触したことで魔力が増大したことに気付いた
彼女が問いただすと彼は驚くべき事実を明かす。興味が沸いた彼女はある提案をする──。

魔王に押し付けられた魔力が活用できる、と気付かせてくれた“ヨメ”と持ちつ持たれつ
の関係を結んだ“イザヤ”。彼を甲斐甲斐しく世話する彼女の言動はまさに嫁のようで、
これが実に可愛い。仕事上のパートナーという割には姉に嫉妬してみたり、とかもうね。

共同生活を営む“ヨメ”へのやっかみから勝負を挑んでくる同業の“マリーゴールド”。
彼女の登場を機に、ひとりじゃないということは素敵なことだということを印象づけて
くる話運びに心が温まります。“ヨメ”が酒で次々に失敗してくれることを期待します。

posted by 秋野ソラ at 00:25 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2018年06月14日

『魔術破りのリベンジ・マギア 4.絶唱の歌姫と魔女たちの祭宴』

子子子子子子子 先生が贈るハイエンド魔術バトルアクション。第3巻は魔女学園に戻った
“晴栄”たちが季節の祭典でエキシビションマッチに臨むなど、お祭り騒ぎを楽しみます。
(イラスト/伊吹のつ 先生)

http://hobbyjapan.co.jp/hjbunko/lineup/detail/787.html


「バーチャルのじゃロリ狐娘Youtuberおじさん」こと ねこます 氏とも本編でコラボする
あたりは時代というか、界隈の勢いを感じます。まぁ、“狐狼丸”カワイイですからね。
冒頭で“晴栄”に釘を刺した監査官“ヴェロニカ”からの忠告も吹き飛ぶというものです。

“鴨女”の攻勢、“フラン”との再会、“露花”の転入と“晴栄”を囲む女性陣に羨望の
眼差しを向けたくなる中で、新たに「七虹の魔女」の一人“シナトラ”に目をつけられる
訳ですが……大丈夫かこの学園、という一面をも見せつけてきます。考えた先生すごいわ。

共感覚に関する相談に乗ってもらう“シナトラ”からの願いで特別実演をすることになる
“晴栄”が、その意外な戦い方に対してお祭りらしいスタイルで応じる場面が盛り上がり
を魅せます。それぞれの奏でる音色が楽しい青春の色に染まることを願って止みません。

posted by 秋野ソラ at 00:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2018年06月13日

『戦うパン屋と機械じかけの看板娘〈オートマタンウェイトレス〉 8』

SOW 先生が贈る街角パン屋繁盛記。第8巻はワイルティア国内に混乱の火種がくすぶる中、
“ルート”の店に“スヴェン”の父親だと主張する謎の人物が現れ周囲が騒然となります。
(イラスト/ザザ 先生)

http://hobbyjapan.co.jp/hjbunko/lineup/detail/785.html


冒頭の意味深長な場面挿入が“ルート”たちや“ダイアン”らにどう直撃するか。続々と
降りかかる事件の先に見える「悪魔」や「聖女」といった存在が物語をどうかき回すのか
注目が集まります。今のところ、巻き込まれる方はたまったものではない感じはしますが。

“ルート”も知らないパン作りの知識も活かして彼の店に厄介となる“マイッツァー”が
これまた“スヴェン”も手を焼く曲者で。興味津々な二人のやり取りを注意深く見守る中、
“レベッカ”が思いがけず役得に恵まれるシーンに今巻では一番救われる思いがしました。

思わせぶりな“マイッツァー”が、“ルート”と“スヴェン”に見て見ぬふりをしていた
事実と向き合うきっかけを与え、そして二人がそれを再認識する……余裕もなく騒々しい
3日間の終わりと、未曽有の経験をもたらす9日間の始まりを告げる引きが気になります。

posted by 秋野ソラ at 01:07 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2018年06月12日

-インフィニット・デンドログラム- 7.奇跡の盾』

海道左近 先生が贈る絶好調VRMMOファンタジー。第7巻は“ネメシス”の第三形態が未知数
という点に困惑を隠せない“レイ”の前に、これまた相性の悪い古代伝説級の敵が現れます。
(イラスト/タイキ 先生)

http://hobbyjapan.co.jp/hjbunko/lineup/detail/786.html


スキルを解析する手伝い、と称していきなり投擲されるとは。“ネメシス”も不憫な娘で。
そんなのほほんとした情景から一転して「コクテン様」なる圧倒的な悪意にも不屈を貫く
彼が“ネメシス”の第三形態でどう立ち回るのか。繰り広げられるバトルが今巻も熱い。

戦いの舞台となるトルネ村で“レイ”を狙うPK騒動が発生するも“ビースリー”が制裁に
乗り出す場面が容赦なくて実に爽快。見せ場の一つです。“リューイ”のエピソードでは
思わせぶりな話をこれでもかと盛り込んで最後に引っくり返してくるあたり、素敵です。

巻末に入れこまれる外伝で描かれるのは“シュウ”の冤罪投獄騒動。裏で“ルーク”が
捜査に乗り出してあっさり見つける「正体不明」な真犯人の珍妙な行動にどう対処するか。
エピローグに至る過程を楽しむと共に、地獄の特訓の成果が活かされるか注目したいです。

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2018年06月11日

『好きって言えない彼女じゃダメですか? 帆影さんはライトノベルを合理的に読みすぎる』

玩具堂 先生が贈る新作は、ライトノベルをもとに不可思議な理論を展開する少女とその
彼氏のはずの少年、彼女の言動に振り回される彼の妹、3人を軸に描かれるラブコメです。
(イラスト:イセ川ヤスタカ 先生)

https://sneakerbunko.jp/product/hokagesan/321803000497.html


ある事情から毛嫌いするラノベのことをこれまた嫌いな兄に教えを乞うことになる“映”。
“天太”は漫研の“伊井坂”を紹介するが早速、女性キャラが胸を強調する絵に噛みつく。
そこへ文芸部員の“帆影”が、それは「人類の本質に関わる話」だと持論を展開する──。

胸にコンプレックスを抱く“映”に対して殊更「おっぱい」を連呼したり、壮大な話へと
繋げたり、奇矯な女の子という印象を受ける“帆影”。彼氏であるはずの『天太』が首を
傾げたくなるのも納得で。それにしても『子ひつじは迷わない』の使い方は絶妙でした。

“映”がラノベのことを知ろうとした契機にも関与してくる“帆影”の誤解を招く発言の
数々を訝しむのも無理はなく。“帆影”も自覚していますが最後まで読めばその不信感は
払拭され、謎多き彼女が可愛いと目に映ること間違いなし。推していきたいラブコメです。

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2018年06月08日

『笑う書店員の多忙な日々』

石黒敦久 先生が贈る新作は、とある駅前にある本屋を舞台に業界の苦境やお客様トラブル
にもめげることなく笑みを浮かべながら本を売る、そんな書店員さんらの日常を描きます。
(イラスト/uki 先生)

http://mwbunko.com/978-4-04-893880-8/


本屋に憧れを抱き、お嬢様として育てられた親元を離れ、東京の小さな書店でアルバイト
を始めた“紗和”。「一週間もつかどうか」ベテラン勢からすれば憧れだけで勤めるのは
難しいと揶揄する中、教育係として“奈津”は彼女の働きぶりを注視していくのだが──。

年に8万もの書籍が刊行される中で本屋が置けるものは一握り。好きな本ではなく売れる
本を並べるのが本屋だということを、“紗和”の視点から痛烈に感じ取ることができます。
本来なら知り得ない書店員によくある話題を垣間見れる背徳感に似た面白さが味わい深い。

だからこそ「八万分の一の一」で“奈津”が“紗和”と組んで、売れるかどうか未知数の
新人作品を売りたいと色々なものに抗おうと奮闘する様子が熱く胸に響くものがあります。
期待の本を売る顛末を経て彼女らは笑うことが出来るのか、ぜひ読んでお確かめください。

posted by 秋野ソラ at 01:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル