2025年01月16日

『小柳さんと。』

反響体X先生の「第1回オトナの小説大賞・銀賞」受賞作。失恋してヤケ酒を飲んでいた
男女二人が偶然出会って意気投合し、体を重ねた一夜限りの恋だったはずの先を描きます。
(イラスト:pon 先生)

https://dash.shueisha.co.jp/release/#978-4-08-631582-1
https://novel18.syosetu.com/n7377em/


飲み明かすのは勘弁と同僚に断られた“大木”が飲み直そうと入ったバーで声を掛けられ
お互い失恋した者同士と楽しい酒を酌み交わした相手が大阪出身の“小柳”さん。終電を
逃した2人は彼の家に向かい、流れるまま行きずりの関係に身を任せることになるが──。

“小柳”と再会する機会を得た“大木”が逢瀬を、情事を重ねる度に恋が、愛が芽生える。
2人がオトナな関係を築いていく過程をするすると読める文体で描かれているのが好感触。
彼女の元彼氏、彼の元彼女、それぞれすったもんだの騒ぎに対応が求められるのも要注目。

いつしか結婚を意識するまでに絆を深める“大木”と“小柳”が直面することになる障害。
彼が覚悟を決めた、その心を試すかのような試練の果てに待つ結末をぜひ読んで確かめて
もらいたい。彼の元彼女が物語を結ぶ上で予想外の形で関わってくる場面もお見逃しなく。

posted by 秋野ソラ at 00:13 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2025年01月15日

『緋弾のアリアXLII ゼロの帰隊』

シリーズ累計900万部突破。赤松中学 先生が贈る大スケールアクション&ラブコメディー。
第42巻は正義のヒーロー組織「ジュスト」に招かれた“キンジ”が騒動に巻き込まれます。
(イラスト:こぶいち 先生)

https://www.kadokawa.co.jp/product/322408001602/


“キンジ”は大学受験を目指す苦学生。つい忘れそうになる現状と目まぐるしい展開から
勉強を邪魔されたくないからイタリアに飛ぶ、という彼の発想がカタギじゃない。現地で
良くも悪くも名が知れ渡ってタダ飯が食えてしまうあたりも一般人を逸脱していて苦笑い。

武偵免許を持ち、ヒーロー活動に勤しむNPO法人「ジュスト」で『最初のヒーロー』として
もてはやされる“キンジ”が、かの一員“アウグスタ”の見せる異常な正義感を皮切りに
疑心の渦巻く組織の暗部、そして窮地を目の当たりにする辺りはトラブルメーカーの如く。

思い思いの正義を振りかざす「ジュスト」メンバーに向けてヒーローとは何たるかを語る
“キンジ”のさりげない格好良さをちゃっかり甘ヒスする場面が相殺する点も相変わらず。
そんな彼のイタリアでの顛末が他の事件と関わってくるのか否か、興味深く見守ります。

posted by 秋野ソラ at 00:02 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2025年01月14日

『恋する少女にささやく愛は、みそひともじだけあればいい2』

畑野ライ麦が贈る、三十一文字に想いを綴る恋物語。第2巻は“救”の好敵手と自称する
少女の登場から思いがけず決闘騒動に巻き込まれる“三球”の立ち居振る舞いを描きます。
(イラスト:巻羊 先生)

https://ga.sbcr.jp/product/9784815626303/


歌集の発売、それを記念したサイン会の開催といよいよ表舞台に立つ“救”を前にアレな
議論を繰り広げる“三球”たちを見てまず苦笑い。そんな空気を一蹴する“求歌”の口上
からヒロインの如く彼が掻っ攫われる展開に“救”が涙目になるのも当然で実にお気の毒。

「異種歌合」として“求歌”が選ぶ『都々逸』とは何か。“三球”と一緒に教わりながら
短歌とは違ったその魅力ですとか“救”に敵愾心を示す理由など、彼が彼女の真意に触れ
彼女たちのためにどう動くべきかを模索する様子を見て「罪作りな男だなぁ」と思うなど。

“顕広”が“求歌”の望む決闘を認めたのは何故か。彼女の心のわだかまり、抱える矛盾、
そういったものを察してのものかと思うと「年の功とはこういうものか」と感じてみたり。
“三球”が真に不純異性交遊と糾弾されないことを祈りつつ、続く展開を待ちたい所です。

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2025年01月13日

『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 20 小冊子付き特装版』

大森藤ノ 先生が贈る、一端の冒険者である少年と矮小なる女神が織り成す眷族の物語。
学区とオラリオが引き起こす学生闘争の顛末を描く第20巻の小冊子付き特装版となります。
(イラスト:ヤスダスズヒト 先生)

https://ga.sbcr.jp/product/9784815630737/
https://danmachi.com/


学区とオラリオの衝突を前に「焦り」を抱く“レオン”。その心を推し量れない“ベル”。
そんな“ベル”に対して“レオン”が実体験を通じて「わからせる」のが容赦なくて驚嘆。
この世界の英雄像を合間に語り、いま求められる英雄を問い、答える一連の流れも印象的

【ヘスティア・ファミリア】にインターンしてきた“ニイナ”の絶大な「効果」に一同が
歓喜する中、彼女の手を借りて力を喚起してもなお“ベル”は届かないという現実に驚愕。
それすら糧により強くなると誓う意気揚々たる彼を、そしてオラリオを襲う報せが絶望的。

小冊子は、まず見せられるとつい胸が躍るキャラクターステイタスと、ゲストイラスト集。
福きつね 先生のイラストに目を奪われつつ、収録された書き下ろしSSを読むと感慨も一入。
新たな力関係でより騒がしい「豊穣の女主人」の雰囲気を堪能しつつ次巻刊行を待ちます。

posted by 秋野ソラ at 00:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル

2025年01月10日

『魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい? 19』

手島史詞 先生が贈る、不愛想魔王と箱入りエルフによるラブコメファンタジー。第19巻は
遂に〈魔王〉が集う終焉の地に辿り着いた“ザガン”たちに更なる陰謀が襲い掛かります。
(イラスト:COMTA 先生)

https://firecross.jp/hjbunko/product/1961
https://madome-anime.com/


“マルコシアス”の招集にやむを得ず遅刻する“ザガン”たちの微笑ましいやり取りが
あちこちで行われるのも大所帯になった証とも言えます。丸くなった“フェネクス”と
“アスモデウス”の会話も興味深いですし、ここで示される「お願い」も気になる布石で。

いざ魔王たちが勢ぞろいしてみれば、腹に一物ある“マルコシアス”が“ザガン”たちの
目の届かないところで色々やらかしてくれる訳で。《最長老》ではなく、あくまで個人の
願いを貫き通そうとする相手に“ザガン”も目にかける「あの人」が対応できるかが見所。

コミカルな場面でも、シリアスな展開でも“バルバロス”が良い仕事をするようになった
と今巻の内容からも改めて実感させられます。結局は戦わざるを得ない流れから、大きな
痛手を生じる結末に驚くのも束の間、さらなる戦いの予兆を見極める必要がありそうです。

posted by 秋野ソラ at 00:07 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル